来週8日の告示を前に、多くの派閥から支持を集める菅義偉官房長官の“圧勝ムード”が漂う自民党総裁選。
「安倍総理の後継に誰がふさわしいか」と尋ねた朝日新聞の世論調査でも、菅氏はこれまでトップを走ってきた石破元幹事長を逆転。安倍総理が“禅譲”すると見られてきた岸田政調会長をも引き離している。
・【映像】圧倒的な劣勢でも戦う意義は?石破・岸田両陣営に聞く
それでも石破氏と岸田氏が諦めないのはなぜなのか、自民党総裁選の意義とは?そこで4日の『ABEMA Prime』では、石破派(水月会)の平将明・内閣府副大臣と岸田派(宏池会)の小林史明・自民党青年局長を招き、話を聞いた。
「私は2005年に国会議員に初当選したが、昔の自民党に戻ってしまうのは嫌だ」(平氏)、「まさにこれから政策議論が始まる。自民党総裁選は無記名投票なので、誰が誰に投票したかは分からない。勝負はこれからだ」(小林氏)と話す両氏の思いとは…?
■石破氏の“推しポイント”は「正直、公正」だ(平氏)
石破派(水月会)が立ち上げられたのは今からちょうど5年前の9月。平氏はその中心人物の一人だ。「権力は腐っていく。安倍さんの政策にはいいところもあるが悪いところもある。それでも申し訳ないが、今の野党に任せるわけにはいかない。だからこそ安倍さん一強の中、党内で忖度せずに言いたいことを言えるグループが必要だという石破さん訴えた。そこで安倍さんの2期目が確定し、これから3年間は続くというのが判明したその日に石破派を立ち上げた。派閥の談合のような今の政局を見ていると、石破派を作っておいて本当に良かったなと思う」と話す。
「政治が“パワー・オリエンテッド”になってしまっているのを“ルール・ベースド”に戻し、国民の皆さんとの信頼関係を組み直さなければ、このコロナ禍を乗り越えることはできないと思うし、それは安倍総理をディフェンスしてきた菅さんには難しい。“正直、公正”は石破さんが前回の総裁選に出馬した時のキャッチフレーズでもあるが、本当に真面目で嘘のない人だ。特に人事は公正で、私は石破さんが政調会長だった時代、ほとんど話をしたこともない2期生だったのに経産部会長に抜擢してくれた」。
紗倉まなが「“ポスト安倍”についての世論調査で石破さんが1位という状態が続いてきたと思う。それなのに議員の間で人気がないのはなぜなのか」と尋ねると、平氏は「やはりうまくいって政策もあれば、そろそろリセットした方がいいという政策もある。河井夫妻の問題などについても、執行部はけじめを付けていかなければならない。しかし皆で安倍政権を支え、一致団結している中では言いにくい。そこを我々は言うので、嫌われる」と答えた。
オンラインサロン『田端大学』主宰の田端信太郎氏は「負け続けているのに自民党を割って出て行かない石破さんは立派だと思う。党としても、議論はするが、決着した後は首班指名でも皆が安倍さんの名前を書いたわけだ。この点は割れたりくっついたりを繰り返している野党は見習った方がいいと思う」と話した。
■岸田氏の“推しポイント”は「多様な意見を聞いて、決断・実行する」(小林氏)
小林氏は「安倍政権というのは、平成の政治のリーダーシップが極まった姿だと思う。つまり“官邸によるトップダウン”によって、漁業法を70年ぶりに改正したり、モバイル市場に新規参入をしやすくしたりと、規制をどんどん突破していった。確かにそれはすごいパワーだったが、時間が経つにつれ、限られた人数が限られた情報の中で意思決定をするようになってきた。これは多様化した社会にはそぐわないと思う」と指摘する。
「その点、岸田さんは私のような“暴れん坊”の若手・中堅議員のことも受け止め、いい案はきちんと実行してくれる。今回の総裁選では、自民党の名簿管理がアナログだったために党員投票はできないという結論になってしまったが、我々が訴えてきた自民党のデジタル化について最初に動いてくれたのは岸田さんだった。その結果、党内の会議はほとんどがタブレットになり、ペーパーレスになった。岸田さんは、社会が多様化していること、格差の是正ということにポイントを置いているが、コロナ禍の様々な問題を乗り越えるためにも、岸田さんのリーダーシップが必要不可欠だ」。
この“多様性”に関連して、岸田氏はTwitterにアップした食事の写真が一部非難を浴びた。田端氏が「総理を目指している方やその陣営として、海外からはどう見えるのかといった点についてもイマジネーションを働かせるべきだった」と指摘すると、小林氏は「岸田さんが3日の会見で“テレビの収録が入った時に、帰宅してご飯を食べようというところをパッと撮っていただいたものだ”と説明した。“普段は一緒に食べているし、私が妻よりも強い立場にあるということはない。家事も日頃から分担しているし、この間も風呂掃除したと”話していた」とコメント。「そもそもアップすべきものだったかどうかというのは判断が色々あると思うし、改めてサポート体制を作っているところだ。国民の皆さん、あるいは世界からどう受け止められるかということも含め、しっかりお伝えできるようにやっていきたい」とした。
また、平石直之アナウンサーの「石破派は分かりやすく“党内野党”のような形だが、岸田派は安倍政権を支える主流派で、岸田さんはその後を継ぐと見られてきたが、ここに来て反主流派のような立ち位置になってしまっているようにも思える」との質問には、「岸田さんは義理堅い人なので、同期でもある安倍さんが総理として頑張っている間は支え続けたいということだったと聞いている。もちろん自分が総裁選に出る時には応援してくれたらという思いもあっただろうが、そこはやはり状況によって変わるのが政治の世界。石破さんは何度も総裁選に出ているので、地方からも一定の評価が得られている一方、岸田さんは初めて。むしろここから伸び代があるとも言えるので、自分たちの力で政策を訴え、議論し、国民の皆さんと党員の皆さんの理解を得る努力を続けていくことが重要だと思う。ここはやるしかない」と話した。
■菅官房長官が優勢の中、それでもあえて戦う理由
それでもこの状況下で総裁選に立候補するのは、今後にとってリスクになる可能性もあるのではないか。平石アナが「それでもあえて戦う理由とは何なのだろうか」と尋ねると、小林氏は次のように話す。
「政権与党の総裁選は、総理大臣を選ぶ選挙でもある。次に日本のリーダーになる人物がどのような考えを持っているのか、国民に共有する機会は重要だ。リーダーを目指す人間は、とにかく戦いの場に出て場数を踏み、切磋琢磨して高め合う。それが国民の信頼を得ることに繋がると思う。そして選ばれたリーダーは、議論を戦わせた他の候補の政策を吸収することができる。勝敗にかかわらず、自民党が政策を高めていくという意味で重要なプロセスだ」。
平氏も「自民党は総裁選を行うことで、間違いなく政策のパッケージがバージョンアップする。その中で、この人は何が得意なのか、ということも明確になってくる。仮に菅さんが総理になったとして、時代や世界情勢が大きく変化した時には、次は岸田さんが良いかもしれない、石破さんが良いかもしれない、ということが言えるようにしておかなければならない。自民党が支持を受け続けられる政党であり続けるためにも、世代交代の可能性や、“これはおかしい”と指摘できる勢力が党内にいることを示すことが必要だ」と話す。
「そして“義を見てせざるは勇無きなり”ではないが、政治家というのは、負けると分かっていても信念を貫いて戦うという姿勢がなければ誰もついて来ない。確かに“出ない方がいいのでは”という意見もある。しかし世論調査で1位を取ってきた石破さんと、後継者だと言われてきた岸田さんであっても、ここで出なければ1年後の総裁選挙の時には“過去の人”になってしまうと思う。政治家の仕事の一つに外交があるが、総理ともなれば、トランプさんやプーチンさん、習近平さんといった世界のリーダーとやり合うことになる。その時のためにも、自民党内でちゃんと闘っておかなければならない」。
■ひろゆき氏「候補者が政策を説明する討論会を」
2ちゃんねる創設者のひろゆき(西村博之)氏は、テレビのニュース番組などは候補者が討論を重ねることの必要性を訴え「石破さんが髪を切りに行ったとか、そういう話ばかりだ」と指摘すると、平氏は「私は水月会の広報委員長だが、“散髪のシーンを撮らせてくれ”というのはマスコミが言ってくる。また、告示以降は党本部の選管や広報に届出をしなければならないので、私や小林さんも勝手に出られなくなる。勝ち負けに関わるので厳格にしたいという人もいるので、例えば石破派だったら僕、岸田派だったら小林さんが出てきても、菅派で出てくれる人がいないと、企画自体が流れてしまうこともある」と説明。
小林氏は「8日に告示されて以降は厳格なルールに基づいて、3人揃っての討論会が毎日行われることになる。私たち青年局が主催する討論会もある。それまでの間は各人がそれぞれ番組に出て、楽しい話や柔らかい話、具体的な政策の話もする。ただ、内容が堅すぎると国民の皆さんが距離を感じてしまう。そこは課題だ」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)














