破格のスケールを持つ女子トーナメントを、立ち技格闘技イベントRISEが開催する。8人制トーナメントで1回戦が10月11日のぴあアリーナMM大会、準決勝&決勝は11月1日のエディオンアリーナ大阪大会。題して『RISE GIRLS POWER QUEEN of QUEENS 2020』。那須川天心をはじめ男子のトップ選手も出場するビッグマッチの中でのトーナメント。優勝賞金300万円、KOボーナス1試合最大50万円も大きな魅力だ。
9月5日の記者会見では、出場選手8名(+リザーブマッチ出場選手)が発表され、抽選により1回戦の組み合わせも決定。RISE王者の紅絹、寺山日葵などタイトルホルダーが6人。それに加えてプロキャリア5戦のerika、1戦の大倉萌が抜擢されるなど、期待感の高い顔ぶれとなった。
出場メンバーを選考したのは、トーナメントのプロデューサーを務める神村エリカ。現役時代は女子キックのトップ選手で、女子格闘技の強さの象徴とも言える存在だった。選考にあたって重視した要素の一つには「気合い」もあるという。
「ベルトを巻いていなくても私が真のトップになるんだという気持ちのある選手に出てほしい」
開催発表時から神村はそうコメントし、運営側からのオファーよりもSNSなどでの選手からのアピールを待ちたいとしていた。実際、多くの女子選手が開催発表のニュースに反応している。
「会見前日まで(メンバーを)考えました。格闘技関係者でも誰が優勝するか分からないトーナメントにしたかった。それは達成できたかなと思います」
大倉やerikaという“抜擢枠”は、神村らしいプロデュースだろう。現在の実績だけでなくアグレッシブな「RISEらしい」試合ができるかどうか、このトーナメントで“化ける”可能性まで含めてのメンバー入りだ。
「キャリアの差がある試合でも、覆す可能性は充分あると思います。1回戦は1日1試合。ワンマッチであれば勢いでいったほうがいい場合もあるので。準決勝・決勝の2試合を1日で勝ち抜くには経験も必要。ただプロのワンデートーナメントを経験していない選手も多いですから、その部分も未知数ですよね。全員に可能性があるトーナメントだと思います」
神村自身は、ワンデートーナメントで優勝した際に「決勝はアドレナリンと気合いと根性」で闘ったそうだ。今までとは違う領域での闘いを経験し、トーナメントの中で急成長する選手がいるかもしれない。
「そういう意味で期待してるのは寺山選手です。技術では女子でもトップで、課題はメンタル。そういう選手がワンデートーナメントを経験したら、一気に成長するでしょうね」
重要なのは、どの選手が勝つにせよ女子キックというジャンルの魅力を大舞台で見せつけることだ。ただ勝てばいいという闘いではないし、その意味で選手たちは敵であると同時に同志でもある。神村は5日の会見が始まる前、選手たちを集めて話をしたという。
「話したのは“大きい大会で発言する場がある”ことの意味です。せっかくの会見で“頑張ります”とか“出場できて嬉しいです、ありがとうございます”とか、ありきたりな言葉で終わってほしくない、と。自分がこのトーナメントで、女子キックで何をしたいかを伝えてほしいという話をしました。今回のトーナメントは女子キック界を変えるもの。その1人なんだという自覚をもってほしいと」
重要なのは誰が勝つかだけではない。どう勝つか、どう闘ったかだ。
「安パイで無難に勝っても評価されないのがこのトーナメントです。結果として負けても、終始バチバチに打ち合って、その試合しか覚えてないくらいの闘いをしてくれたら、その選手は次につながるんですよ。でも無難に勝って決勝に行っても次はないので。何を求められているかを意識して闘ってほしいです」
現時点では、トーナメントにかける意気込みを言葉という面から最も強く感じるのは神村プロデューサーだ。女子キックを背負い、誰よりも説得力のある試合をしてきたからこそ、ジャンルへの愛着も責任感も強い。トーナメントが終わった時、神村以上に強烈な存在感を残す選手がいるかどうかも気になるところ。出場選手にとっては“VS神村プロデューサー”もテーマになるのではないか。
文/橋本宗洋