将棋界において「バナナ」という言葉を出せば、次に「永瀬」という2文字が出る。それほど永瀬拓矢二冠(28)の“バナナ食い”はファン、関係者の間で有名だ。長時間対局のタイトル戦ともなれば、最終盤に向けてエネルギーを蓄えるために1本、また1本と食べる。対局室に1本、2本ではなく、1房丸ごと置いてあることも珍しくない。ただ、永瀬二冠のバナナ食いは「近年ですね。3、4年とかでしょうか」と笑い、想像以上にキャリアが浅いことがわかった。
永瀬二冠が、対局中にフルーツを食べるようになったのは10年ほど前のこと。バナナは、タイトル戦に出場した際からだ。「お寿司が食べたいと言ったんですね。そうしたら『握れない』と言われたので、それなら『バナナをください』と。お寿司がハードル高いなら、どこまで下げればいいのかなと思って、バナナならさすがにあるかなと(笑)」。ご飯ものから、なぜいきなりフルーツに飛んだのか。おにぎりという手は思い浮かばなかったのか。当時の永瀬二冠の脳内をのぞく術はないが、いずれにしてもこの時から永瀬二冠のお供に、バナナが加わった。
バナナだけが好きなのではなく、フルーツ全般は好物だ。「シャインマスカットも好きなんですよ。ただ、あれってスーパーに売ってましたっけ?」と微笑むと、さらには「見る目がないんですよね。ハズレを買ってしまうことがあるんですよ。だから怖いんです」と、将棋にかける熱い思いから“軍曹”“中尉”と呼ばれる棋士が、皮が硬い・すっぱいといった失敗に懲りている。その点、イチゴは安心だそうだ。「一時期は毎日のように買ってましたね」と、ビタミン豊富な人気フルーツも強力なパートナーだという。
王座戦は持ち時間各5時間。午前9時から始まり、終了は夜になる。昼食から夕食までの間、さらには勝負どころの夜戦など、どこで永瀬二冠がフルーツに手を伸ばすのか。第1局は、おやつにフルーツ盛り合わせを頼んだ。記録的なロングシリーズとなっている叡王戦の第9局も、持ち時間は6時間だ。しっかりと栄養補給し、気分も新たになった時、徹底した負けない将棋はさらに力を増す。
(ABEMA/将棋チャンネルより)