コロナ禍の中での大会がビッグカードを呼び込んだ。9月10日に開催される『Road to ONE 3rd TOKYO FIGT NIGJT』。そのセミファイナルとして、猿田洋祐vs内藤のび太のストロー級トップファイター対決が行なわれる。ONEはアジア各国で行なわれるインターナショナル・イベント。基本的に日本人対決は組まれない傾向にあるが、今回は日本在住の選手だけで開催せざるを得ない状況だ。そこでこの一戦が決まった。
猿田、内藤ともに修斗の世界王者となりONEへ。ONEでもベルトを巻いたことがある。もともと猿田は上の階級でベルトを巻くことができず、ストロー級に落として才能を開花させた。無敗のままストロー級で出世していった内藤のことは、以前から意識していたそうだ。今回、猿田にとっては念願かなっての対戦となる。
8日の会見では、ゲストの松井珠理奈がこのストーリーを踏まえて注目カードとして紹介している。勝てば世界再挑戦が見えてくるという意味でも重要なカードだ。
「ストロー級で世界で活躍する日本人がいることを知ってほしい」
会見で猿田はそうコメントしている。修斗時代からのストーリーがあるカードを、ONEの大会で、世界レベルの対戦として実現できることへの感慨があるようだ。
「5年前だったらそんなに注目されてないと思うんですよ。お互い修斗、ONEのチャンピオンになって対戦できる。その成長が嬉しい」
そう語った猿田。これまでのキャリアで紆余曲折あったからこそ、ここまでくることができたと考えてもいる。
「自分は勝ったり負けたりの選手で、格闘技をやめた時期もあります。ケガで3年くらいまともにやれない時も。だから連勝で順風満帆できた選手には負けたくないという気持ちがありました。(連勝でONE王者になった内藤を)追いかけて、いつか勝ってやろうって」
そんな猿田の熱い思いに「上の人だと思ってたので。自分とやりたいと言ってくれるのはうれしいです」と内藤。リングネームそのまま、コメントもマイペースで強気なことは特に言わない。ただ自分は自分で順風満帆ではなかったという。
「格闘技の成績で言えばそうですけど……最近は負けが込んでますし。向こうのほうがいろいろ挑戦してるってことですよね。僕はあまり挑戦してないので……」
そんな内藤だが、試合になるととてつもない意志の強さを発揮する。タックルで食らいついたら離さない、粘りと執念のファイトスタイル。それが分かっているからこそ、猿田は「苦しく激しい削り合いになると思います。その闘いで削り勝って、日本人で初めてのび太選手に勝ちたい」と語った。楽をして勝てる相手ではない、ということだ。
対する内藤は「全局面でどっちが上かはっきりさせたいんだと思います、キャリアが被ってますし。僕はそれに抗いたい」。
猿田がポイントとして挙げたのは「打撃」。内藤も同意する。より“苦しさ”を乗り越えたほうが勝つであろうこの一戦からは“世界”を感じられるはずだ。
文/橋本宗洋