きのう開かれた、自民党青年局・女性局主催の総裁選候補者討論会。質疑で多くの時間が割かれたのが女性活躍政策、そして少子化対策だった。
・【映像】「不妊治療を保険適用に」経済的理由で諦めていた人たちの希望に?
岸田政調会長は「出産費用を実質にゼロにするような後押しも大事だと思うし、結婚についても自治体とNPOが協力して様々な後押しを行う」、石破元幹事長は「大変な痛みと経済的負担に耐えながら不妊治療をしている人たちは46万人。みんな子どもを作りたくないわけじゃない」「無痛分娩・不妊治療にも力をつくすべき」と主張。そして最有力候補とみられる菅官房長官は「子どもを産むハードルを下げるべきだ。出産を希望する世帯を広く支援するために、不妊治療の保険適用を実現したいと思う」と訴えた。
■日本の不妊治療が抱える問題とは
出生数が過去最少(2019年は86万人)となる中、検査や治療などを受けたことがある夫婦の割合は増加傾向にあり、2015年には18.2%と、5.5組に1組の割合となっている(国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査報告書」)。
一方、検査や排卵誘発は保険が適用されるものの、体外受精・顕微授精などは適用外のため、かかる費用は数十万円~数百万円に達する(「妊活ボイス」)。さらに、多くのケースが治療に数年以上の期間を要しているとされる(NPO法人Fine「仕事と治療の両立についてのアンケート」、2015年)が、体外受精を行った際の「妊娠率」は30代後半から低下、日本産科婦人科学会「ARTデータブック」によると、不妊治療後の年齢別妊娠成功率は24歳以下の25%前後から49歳でほぼ0%になってしまう。
そこで政府は今年、少子化対策の大綱に「不妊治療への経済的負担軽減」を盛り込んだほか、自民党も6月、「不妊治療の支援拡充を目指す議員連盟」を立ち上げ治療への保険適用を訴えていた。
そんな中でにわかに注目を浴びる不妊治療の保険適用。出産ジャーナリストの河合蘭氏は「結婚年齢も高くなっているし、“これくらいキャリアを高めていければ安心して子どもを生み育てられる”と感じられるラインも上がってきてしまっている。そのため治療のスタートも遅くなっているということだ」と話す。名医にかかりたいと考える方もいらっしゃるが、やはり年齢が非常に大きなポイントだ。やはり若い方が、いかに早く体外受精を始められるかにかかっていると思うので、そこに手が差し伸べられるという意味では、治療のハードルが下がると思う」と話す。
「日本の不妊治療の問題点としては、お金がかかるというだけではなく、治療法が標準化されておらず、施設によって妊娠率もばらばらだ。それが保険適用になることで標準化が進み、オプションで自費診療したい方はそれを選べる、という形になると思う」。
ただ、不妊治療に保険が適用されるようになるだけでは、少子化へのインパクトもそれほど大きなものではないようだ。「少子化対策のポイントは、高等教育だと思う。そこにかかる費用が高いことは皆が知っていることだし、不妊治療の保険適用が少子化対策の切り札になるとは思わない」。
■教育費の方が効果はある? 予算の問題も
元経産官僚の宇佐美典也氏も「周りでも体外受精を経験した人は多いが、“費用は親に借りた”とか、“稼げるようになったから始めたが、もっと早く始めれば良かった”と言っていた。体外受精に関しては保険適用の効果が出ると思うので、今すぐに実現すべきだと思う。100万円を1万人分負担したところで100億円。財政にも大きな影響を与える施策ではない。ただ、これだけで出生数が何万と増えるというわけではないし、出産の焦点を当てすぎだと思う。基本的には早く結婚ができるようにすることと、教育費の負担を減らすことの方は効果がある。やはり育児にかかわる費用は全般的に面倒を見る、という流れの一つとすべきだと思う」と話す。
池澤あやかは「働く女性は仕事と子育ての両立が不安だ。例えばベビーシッター代や家事代行などへの支援がほしい」、パックンは「出産時の負担が減ったとしても、18歳まで育てるまでには教育費も含めて数百万円から2000万円ほどかかるという資産もある。たとえばハンガリーでは子どもを3人以上産んだお母さんは生涯にわたって所得税がゼロになる。そのくらい思い切ったことをやってもいいような気がする」とコメント。
慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏は「社会保障費の増大を考えれば、どんどん援助すればいいという時代ではない。不妊治療や出産の費用を援助する代わりに、何かを減らすことを選択しなければならないと思う。もちろん人によって状況は違うが、平均して高齢者の方が資産もあるし、年金も安定してもらっている。だからセーフティネットは用意した上で、後期高齢者の保険料の1割負担を3割に上げるべきだ。炎上してしまうからあまり言いたくないが、こういうことを政治家が言わないから国債残高が増える」と指摘。
また、「政策の効果を考えれば、出生が1万人増えただけでは意味がない。例えば120万人という数値目標を掲げ、そのためにはどうすればいいのかを議論しなければ、少子化問題は根本的には解決しない。冷たい発言のように聞こえるかもしれないが、マクロに数字を見て、最も効果のある政策を考えるというのは、そういうことだ。女性が出産適齢期に産むのに不安を無くすためにはどうすればいいか。それは究極的には終身雇用をやめることだと思う。終身雇用があるから長く勤め続けた人が有利、出産・育児でブランクのある人、転職していく人葬りになる。その意味では我々の社会制度そのものが問われている非常な難題だし、総裁選でテーマとして語る人はいないと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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