20歳未満の「人工妊娠中絶手術」が年1万件以上…日本が性教育・避妊の“後進国”な理由
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 年間1万件以上に達する、20歳未満の人工妊娠中絶。実に1日あたり30人以上が手術を受けている計算だ(厚生労働省、2018年度)。

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 全国で性教育に関する講演を行っている産婦人科医の遠見才希子医師は「かつては年間100万件以上も行われていたが、今は16万件くらいで、10代の件数も減少してはいる。若者の性交経験率が下がってきていること、あるいは緊急避妊ピルなどが出てきている影響が指摘されている。一方、赤ちゃんの病気やご自身の病気の問題だけでなく、性暴力による妊娠など、様々な理由があるので、“安易だ”“自己責任だ”と一概には決めつけられない、すごく深い問題がある」と話す。

 それでも、望まない妊娠に悩む10代の若者は後を絶たない。その背景には、日本特有の様々な問題もありそうだ。

■「発覚すれば退学させられるかもしれないと思った」

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 現在、国立大学教育学部2年のみゆさん(19)も、その一人だ。中高一貫の私立高校3年生のとき、2年生だった男性の子どもを妊娠した。

 「相手が避妊の大切さをよく分かっていなかったこともあるし、私が断り切れなかった部分もある。“この世の終わり”のような感覚を覚えた。心臓がばくばくした。“母親”と“高校生”を両立できるのなら産もうとも思ったが、発覚すれば退学させられるかもしれないと思い、学校には伝えなかった。中卒になってしまえば、経済的にも育てるのは難しいと思った」。

 双方の親の同意を得て、人工妊娠中絶手術を受けることにしたみゆさん。未だに手術当日のことがフラッシュバックしてしまうなど、心身に影響が残っているという。それでも大学に通う傍ら、性教育に取り組む「NPO法人ピルコン」のメンバーとして活動を続ける。

 「私が中絶した時、パートナーは高校2年生で、全く性教育を受けていない状態だった。その意味では、パートナーもまた被害者なのではないかと考えている。そして、アメリカには妊娠した子が通う公立高校があることを知って、“こういう学校が日本にもあれば、私は中絶しないで済んだかもしれないし、将来、私のような子を減らせるかもしれない”という使命感のようなものを感じた」。

■次の妊娠にリスクも…人工妊娠中絶手術の実態

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 みゆさんも受けた人工妊娠中絶手術とは、どのような処置なのだろうか。

 妊娠初期(12週未満)の場合の術式は大きく3種類あり、ピンセット状とスプーン状の2つの金属器具を使って子宮内の妊娠成分を取り出す掻爬(そうは)法。プラスチックの注射器型の器具で吸引する手動真空吸引法、そして金属の吸引器具を使って電気の力で吸い込む電動吸引法がある。

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 遠見医師は「掻爬の技術を必死に習得したが、自分にとってもすごくつらい行為だ。日本の状況は世界のスタンダードではない。低用量ピルの認可が40年くらい遅れているが、中絶についても同様だ。私自身、産婦人科医になって初めて知ったが、海外では30年ほど前から飲み薬で行われていて、現在およそ70カ国で認められているのに、日本ではそうではないということだ」と指摘する。

 そのため日本では約8割で掻爬法が用いられているが、WHOは手動真空吸引法を推奨している。年間1000件以上の手術を実施する、さくま診療所の佐久間航医師によると、どの方法を選んでも子宮内に傷が付き、次の妊娠などに影響を及ぼすこともあるため、細心の注意が必要なのだという。

■進まない学校現場の性教育

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 また、みゆさんも指摘した、性教育の現状はどうなっているのだろうか。日本では、“寝た子を起こすな”、つまり性教育によって、かえって子どもたちの性的な関心・行動を喚起してしまうとの意見も根強いという。 一方、ネットの普及により、子どもがアダルト動画など様々な情報に触れられるようになった結果、誤った知識を得てしまうことも危惧されている。

 それは避妊に対する認識の低さにも現れているようだ。公益財団法人ジョイセフの調査によれば、コンドームをつけずに性交渉した理由について、男性の20.6%が「快感が損なわれるから」、17.9%が「つけなくても大丈夫だと思った」などと解答している。渋谷の若者に聞いてみると、「(子どもが)できたらできたで多分大変なことになるだろうが、(コンドームを)付けて欲しいとかは言ったことがない」(会社員・20歳)、「ダメだとは分かっているが、大丈夫じゃないかなって甘い考えも…」(大学生・22)、さらには「怖いけど、自分の場合は1回妊娠させている。“産みたくない”と言われたので、お金その時バリ持ってたんで、普通に札束バンって渡して、“これで堕ろして来な”って」(会社員・23)と、驚くような答えも。

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 遠見医師は「実は中学生の学習指導要領に、“妊娠の経過を伝えてはならない”という文言がある。このことをもって、“セックスに関して教えてはならない”と解釈をする人もいる。実際、中学校の教科書にはセックスや避妊が出てこない。高校の教科書になるとコンドームとか経口避妊薬、中絶が出てくるものの、緊急避妊に関しては出てこない。妊娠は男女が揃わなければ成立しないことなので、女性だけの問題として片付けてはいけない。海外では避妊や性感染症予防はもちろん、自分と相手の身体を大切にすることを5歳くらいから継続的・包括的に学ばせようとする」と指摘。

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 さらに「本当はより根本的なところから変わらなければならない。コンドームは性感染症の予防としてはもちろん大切だが、実は年間の妊娠率が18%というデータもあるくらいなので、決して万能なものではない。その一方、低用量ピルや子宮内避妊具は普及していないし、腕に入れるインプラントなど、長期的に作用するタイプの避妊の選択肢が認可されていなかったりする。教育はもちろん、避妊の選択肢を国として認めていくことも必要だ」と訴えた。

■男性の責任感、中絶は絶対悪という倫理観の問題も?

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 EXIT兼近大樹は「妊娠したために家族がバラバラになってしまったとか、家族に相談ができずに逃げ出してしまったという女性を見てきた。女性は中絶する前も、中絶した後も罪悪感に襲われる。でも、男性は自分の身体に変化があるわけではないし、そういう感覚は薄いと思う。そして、中絶するのは絶対悪だ、みたいな人たちもいると思う。でも、産むという選択肢を選べず、中絶するしかない現状こそ悪いと僕は思う。それ以前に、性教育が足りないということもあるし、結婚することが幸せ、子どもがいることが幸せ、両親がいることが幸せ、というイメージが強すぎるということもあると思う」とコメント。

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 慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「自覚がある・ないの問題になって、高校2年生の彼が無罪放免になってしまうのはおかしいと思う。また、20代、30代、40代になったからといって男に責任感や父親になる自覚が出てくるわけではないと思う。単に就職していて収入があるということと、昔から男性がお金を稼ぎ、女性は家を守るものだという文化があるだけだ。そして、結婚もしていないのに、中絶に相手の男性の同意が必要なのもおかしい。もし責任があるというのであれば、今はDNA鑑定もあるのだから、妊娠させた瞬間に経済的な責任も負わせられるよう、法律で縛ってもいいと思う。逆に言えば女性も自立して働ける時代だから、そもそも男を当てにし過ぎない方がいい」と指摘した。

 遠見医師は「教育現場で胎児が逃げ惑う映像を見せられたという人もいるが、これは作られた映像で、罪悪感を強めてしまうものだと思う。中絶については様々な宗教観や倫理観があるので難しい問題ではあるが、女性自身が産まない・産むという選択を決めること、それを尊重し、社会で支えていくということが大事だ」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

 ※ABEMAでは、「予想外の妊娠」「セクシュアリティの多様性」「性感染症」など、今回の特集にも繋がる若者の性をテーマにした新オリジナルドラマ「17.3 about a sex」(毎週木曜日夜11時。全9話)が9月17日から配信スタートする予定だ。

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