現在、将棋界にはタイトルホルダーが4人いる。タイトル通算26期を誇り序列1位の“現役最強”棋士・渡辺明名人(棋王、王将、36)。史上4人目の竜王・名人を達成した豊島将之竜王(30)、超ストイック棋士・永瀬拓矢二冠(28)、そして数々の最年少記録を樹立した天才・藤井聡太二冠(18)だ。2年前には8タイトルを8人が分け合い、群雄割拠の時代に突入したと言われたが、それが今では半分に。ベテラン・中堅・若手と、この4人に食い下がるべくしのぎを削っている。タイトル経験がある斎藤慎太郎八段も「なんとしてもコツコツ近づいていきたいという思いはあります」と強い意志を持っている。
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30代2人、20代1人、10代1人で、4人の平均年齢は28歳。40代以上のタイトルホルダーがいなくなったこと、藤井二冠が入ったことで、一気に低年齢化が進んだ。それでも現在行われている王座戦五番勝負では、永瀬王座に久保利明九段(45)が挑戦中。竜王戦の挑戦者決定三番勝負でも羽生善治九段(49)と丸山忠久九段(50)が戦っており、巻き返しを狙っている真っ最中だ。
今期から順位戦A級に参戦している斎藤八段も、当然タイトル候補の一人。2018年度に王座で初タイトルを獲得したが、翌年に失冠すると、その後はタイトル戦への出場機会を得られていない。トップクラスの実力を持ちながら、タイトルホルダー4人を追いかける“第2集団”も、激しい競り合いが続いている。「トップ集団に食い下がるという結果を残しているのは、私以外にもたくさんいる。そこにいることすら甘くないので、危機感は持っています」と、ホッと息をつけるような暇はない。
厳しさは肌で感じながら、慣れ親しんだ持ち時間6時間の順位戦で、最上位のA級をうまく戦えていることで、手応えもつかんでいる。1回戦では糸谷哲郎八段(31)、2回戦は広瀬章人八段(33)に勝利し2連勝。初の名人挑戦に向けて、うまくスタートダッシュが切れた。「タイトル獲得には、実力ももちろんですが、一つの棋戦で着実に星を伸ばしていくのも大切な要素。調子を維持していくのも大事です」と、結果につながっている棋戦に集中するのも、タイトルへの距離を縮めるコツだという。
27歳と言えば、棋力・体力・経験・判断力などが、バランスよく揃うプロの棋士にとっての絶頂期という意見もある。端正なルックスと優しい話し方から“西の王子”とも呼ばれる斎藤八段。第2集団から抜け出そうとする意欲に、穏やかな笑顔の中で目が光った。
(ABEMA/将棋チャンネルより)