異論を唱えた官僚は左遷? 菅政権が目指すべき政治主導・官邸主導のあり方は
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 「私どもは選挙で選ばれているから、何をやるという方向を決定したのに反対するのであれば、異動してもらう」。13日に出演したフジテレビの番組で、そう述べた菅義偉“新総理”。

 ・【映像】元厚労官僚「良い政策を作るための官邸主導というように進化させるのが良いのでは」

 2012年に出版した著書『政治家の覚悟』(文藝春秋企画出版)では、「真の政治主導とは官僚を使いこなしながら国民の声を国会に反映させ、国益を最大限、増大させること」と持論を述べている。

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 元産経新聞政治部長で、政治ジャーナリストの石橋文登氏は「菅さんは7年8カ月、官房長官として官僚と対峙してきた。どこを、誰を押せば政策が動くかを熟知している。まさに官僚機構の“鍵穴”を知り尽くしているので、各大臣に任せなくても、自分で官僚を操縦できる。つまり、菅さんが政策を言い出した時点で、既に決まった(実現)も同然だ」と話す。

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 この力の源泉の一つが、首相を中心に政治が方針を決定していく「官邸主導」、そして縦割り行政の弊害を無くし、中央省庁の幹部人事(次長・局長・審議官級、全省庁で約600人)を一元管理するため2014年5月に設置された内閣人事局の存在だ(初代局長は新内閣で官房長官に就任する加藤勝信厚労相)。

 ただ、安倍政権が進めてきた“政治主導”には、厳しい批判の声もある。その路線を引き継ぐとみられる菅政権における官僚人事とはどうあるべきなのか。組閣前夜の『ABEMA Prime』では、元厚労官僚の千正康裕氏に話を聞いた。

■「官邸主導には大きなメリットがあった」

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 官僚時代に児童虐待防止策を担当した経験から、千正氏は児童福祉司の増員や児童虐待防止法、児童福祉法の改正などにおいて、“官邸主導”に「大きなメリットがあった」と話す。

 「政治主導とは、政治が責任を取るということ。ストレートに言えば、支持率を気にするということとイコールだ。結果的としてそれが正解か不正解だったのかということは別にして、判断の基礎が特定の団体の利益などではなく、一般の人がどう思うかというところになると思う。私の場合、重要な政策は厚生労働大臣に相談していたわけだが、それだけでなく、総理や官房長官がどう思っているのかをちゃんと聞きなさいということで政策を作り、幹部たちはその意向通りに動くことがほとんどだったと思う。その結果、政策が早く、大きく動く。省庁によってミッションが違うので、その調整にはどうしても時間がかかる。しかし官邸が方針をはっきり示せば、各省庁はそこに向かって政策を作っていく。私は19年くらい役人をやっていたが、安倍政権の時代が最も動いたと思う。その中にあって、菅さんは強いリーダーシップを発揮されたと思う」。

 一方、「人々が何を考えているのか、そこを読み間違えるということもあり得る。コロナ対策でいえば、国民の不安を和らげようと思ったのだろうと思うが、たとえば全国一斉休校やアベノマスクなどが“失敗例”として挙げられている。結果的に皆がそれを喜んだかどうかは別問題だ」とも指摘した。

■「問題点を指摘すれば“人事で飛ばされる”」との告白も

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 実際、こうした“政治の判断”の問題点や、人事権の行使を懸念する声もある。

 元総務官僚の平嶋彰英氏は、菅総理が自身の実績として繰り返しアピールした「ふるさと納税」に関して、自治体からの“返礼品合戦”が過熱する懸念から、法律で一定の歯止めをかけるべきだと主張。しかし待っていたのは、自治大学校町への転出という、異例の人事異動だったというのだ。平嶋氏はインタビューで「問題点を指摘すれば“人事で飛ばされる”と恐怖を感じている。霞が関は萎縮している」と告白している。

 この点について千正氏は「官僚の苦しさも実はそこにある。しかし官邸主導を後戻りさせるというよりも、良い政策を作るための官邸主導に進化させたほうが良い」と指摘する。

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 「例えば全国一斉休校についても、“来週月曜日からだ”という話が決定事項として木曜日に急に降りてきた。学校や保育園をどうするのか、学童をどうするのか、あるいは共働き家庭はどうするのかといった点について、事前に文科省や厚労相ときちんと調整したかと言えば、必ずしもそうではなかった。組織人なので、決定後は言うことを聞くのが当たり前だ。しかし、決定の前には異論を挟む余地、見解を述べる機会は大いにあっていい。詳しい人と責任を取る人が、好き嫌いではなく、合理的な意見かどうかを議論するプロセスが大事だと思う。100人全員が素晴らしいと感じるような政策はない。しかし意見を聞くことで、不評を買う、間違った政策が起こる可能性は少なくなるはずだ」。

■「優秀な人材が霞が関から逃げ出さない仕組み作りを」

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「スコミ報道を見ていると、“独裁”などと言いすぎだと思うし、“反権力”とか“権力監視”だと言う割には霞が関の監視が足りていなかったのではないか。歴史を振り返れば、官僚がコントロールしすぎている部分をいかに政治に取り戻すかというのは、1980年代の行政改革の頃からの課題だった。2009年の民主党政権も、官僚支配の打破をスローガンに掲げていた。一方、官邸の支配が行き過ぎるのは問題だし、官僚が根拠とする審議会と、そこに出てくる有識者の問題もある。その点では、例えばコロナ対策では、専門家会議の西浦博教授が“官僚だけに任せるのでも政治だけに任せるのでもなく、両方から距離を置いた第三者の科学顧問のような人を置き、ある程度の判断してもらうことが必要ではないか”とおっしゃっていた。政治と官僚の力関係のバランスをいかに保つかが大事だし、この二軸だけででなく、もう一つの軸も必要なのではないか」とコメント。

 リディラバ代表の安部敏樹氏は「若手官僚の中には、“理不尽なことを言われたら辞めてやろう”と心の中で考えている人が結構いる。それは健全な考えだと思うし、政治の側も、優秀な人材が霞が関から逃げ出してしまうのは良くないと思っているはずだ。議論のプロセスを担保し、幹部も含めて優秀な官僚を抱え込むことも政治家の力だという形にしていかなければならない」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

▶映像:元厚労官僚「良い政策を作るための官邸主導というように進化させるのが良いのでは」

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