「デジタルスキルが高齢者にとって重要」85歳、“世界最高齢のエンジニア”が訴えるスマホ・IT社会
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 行政のデジタル化を強力に推し進める方針の菅内閣。一方、それを担うはずの政治家たちの平均年齢が高いことを批判する声もある。果たして高齢者にITは無理なのだろうか。一つの答えを示してくれるのが、「デジタルスキルが高齢者にとって重要」と訴える若宮正子さん、御年85歳。“世界最高齢のエンジニア”と呼ばれている。

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  1935年に東京に生まれ。旧三菱銀行を定年退職したのを機にPCを学び始め、75歳になった2010年にはスマホデビューした。「私が銀行に入ったばかりの時は終戦直後。“お江戸”が終わってなくて、お札はそろばんと指で数え、通帳は手で書いていた。コンピュータができてから、下手な字を書いたり、不器用な手でお札を数えたりしなくてもいい。コンピュータ様様だ」。

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 そして2017年には、なんと82歳でiPhone向けゲームアプリ「hinadan」を独力で開発。世界開発者会議「WWDC」に招待され、アップルのティム・クックCEO絶賛を受けた。また、83歳を迎えた一昨年には、国連の会議でスピーチも経験している。「高齢の方も、もっとスマホを使えばいいのに。使いにくいってことと、年寄りが喜びそうなアプリが何にもないからだ」。そんな発想から生まれた「hinadan」は、シンプルなゲーム性と操作がシニアに受け、ダウンロード数は11万超、App Storeの評価も4.6となっている。

 「スマートフォンは年寄りが使うということを想定していない。だから指が乾いている年寄りにはスライド操作も難しい。スキルの問題ではなく、年寄りの都合を考えられていないものだということ。そして、私たち年寄りからすると、若い者のために若い者が作った道具であるスマートフォンはアプリも含めて全く面白くない。だから箱物を作り変えることはできないが、アプリだったら誰かに作ってもらえばいいんじゃないかと思った。それを若い方たちに言ったら、“年寄りがどんなものが好きなのか分からない。自分で作ればいいじゃないか”と言われた。まことに止むを得ず作った。だからタップだけで操作できる。ティム・クックCEOともそういう話をした」。

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 根っからの新しいもの好きだという若宮さん。Facebookや英語学習など様々なアプリをフル活用するだけでなく、スマホからネット上で句会に参加。「OK Google。栗の剥き方を教えてください」と、スマートスピーカーも使いこなす。

 Zoom飲み会も「もちろんした」。

 「私は『メロウ倶楽部』という、インターネット上の老人会の会員だが、その友達が全国にいっぱいいる。まだ一度も会ってもいないのに、20年くらいは付き合っているので、すごく懐かしい友達もいる。コロナで外出できなくなったので、オフ会で一杯飲みに行くというようなことはできなくなったが、それ以外のことでは何も困らなかった。私の兄は今年90歳だが、同じくメロウ倶楽部の会員で、Facebookで面白いことを書いたりしている。みんながZoomを楽しんでいるのを見て、一生懸命勉強して、息子に手伝ってもらいながらZoomデビューした。仲間がいるというのはいいよね」。

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 また、スマートフォンの弊害を懸念する声もあることについては、「スマートフォンによって家族との時間がなくなるとか言うけれど、ズバリ言っちゃうと、家族との会話を楽しんでいる若い人たちなんてもともといないと思う。例えば電車に乗っていて私みたいな髪の毛真っ白な年寄りが来たときに、“席立たなきゃいけないかな。だったらおばあさんの方を見るのはやめて、顔を上げずにゲーム画面を見よう”としたり、2人の会話が途切れて気まずくなった時なんかにいじったり。そんな風に、所在ないとき、なんとか間を持たいときのための道具だと思っている。そして80代の人間は月に2~3回しかお出かけしない。だからスマートフォンを持って外に出ても、“あー疲れた”とバッグごとどこかに置いておく。そして充電しない。だから緊急避難情報なんかが来てもスマホは“気絶”している」と、当事者ならではのユニークな見方も示した。

 その上で、「新しい端末にどんどん出て来てほしい。例えばSuicaとかPASMOのようなカードにスマホ端末のような機能あれば便利だと思っている。どこかかざすと、“今日のお天気は”とか、“駅前のおいしいケーキ屋さんはどこ”とかわかる。でも、銀行情報とかクレジットカード情報などは入っていないので、落としても拾った人も困らない。それは便利だなと思う」と期待を示した。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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