マイナンバーカード、行政手続き、戸籍…デジタル化の実現性は? 平井デジタル改革担当大臣に聞く
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 菅政権肝いりの政策、「デジタル庁」の創設。2022年4月までにつくるという話もある中、「それより早いペースでやらなければ、総理の期待に応えられない」と意気込みを語った、平井卓也デジタル改革担当大臣(62)。

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 行政サービスのデジタル化を一元的に進めたい考えだが、中でも一番重要視しているのが、マイナンバーカードだ。これまでも政府はあの手この手でマイナンバーカードの普及を図ってきたが、その普及率はいまだ19.4%(1日時点)。そこで来年からは健康保険証としても利用できるようになり、さらには運転免許証との一体化を目指して普及を推進する方針だ。

 行政から人々の暮らしまで、日本のデジタル化をどう進めていくのか。18日の『ABEMA Prime』は平井大臣を招くとともに、ITの最前線にいる経営者らも交え議論した。

■参加者

青野慶久(サイボウズ株式会社社長)

西村博之(2ちゃんねる創設者)

平井卓也(デジタル改革担当大臣)

藤井宏一郎(マカイラ株式会社CEO)

若新雄純(慶応大学特任准教授)

■時代錯誤? マイナンバーカードのオンライン化は?

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 マイナンバーカードの交付枚数は2469万枚で、人口に対する普及率は19.4%(1日時点)。キャッシュレス決済で上限5000ポイントが獲得できる「マイナポイント」の申し込み開始(7月1日~)で、1.9%増加した。

 マイナンバーカードについてサイボウズの青野氏は、「物理的に配る必要があるのか」「デジタル化に逆行するアナログのカードは時代錯誤も甚だしい」「全国民を巻き込んだデスマーチにしか見えない」と異議を唱える。

青野:国のデジタル化の中心のようなシステムとして推進しているが、非常に危ないと思っている。おそらく何千億円、1兆円近くお金をかけていると思うが、この普及率でこの利便性。これだけスマホも普及しているし、生体認証もある中で、プラスチックのカードに名前や住所、顔写真を貼ったアナログなものを今から配るというのは、IT業界的には考えられない。自治体の職員も発行・再発行の手続きで、全国民を巻き込んだデスマーチにしか見えない。

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平井:究極のことを言えば、自分が自分であることを証明するICチップを持って欲しいということだ。その証明が結構難しく、マイナンバーカードのチップはそのためのもの。これはいずれ携帯の中に入ると思う。デバイスに入れるのかSIMに入れるのかはわからないが、遠隔でその人を証明できるようにするのに何らかのものが必要だと思っている。

ひろゆき:番号が漏れてはいけないとか、完璧を求めるが故に余計に使いづらくなっていると思う。どんなシステムも穴があるし、犯罪者は本気で悪用する手段を見つけるので、ある程度仕方ないということで割り切った方がいい。マイナンバーで個人利用する時に、カードリーダーを買って来てWidowsにドライバー入れてというのはすごく面倒くさいし、トラブルも多い。まずは簡単なデジタルシステムを普及させた方がいいと思う。

平井:マイナンバーとマイナンバーカードが合体してしまっているからややこしくなっている。民主党政権でスタートした時の、このシステムの設計思想の一番重要なところは、政府による情報の一元管理に対する懸念というもの。そのためにマイナンバーカードの情報連携は非常に面倒くさいことになっている。分散管理の上に、繋ぐ時は全て暗号化。なおかつ、誰かの情報を見たら全部トレースできるようにする。アメリカや中国のような一元管理はとても楽で、メリットも多分そちらの方が多い。日本はいろいろな裁判なども抱えながら、スパゲッティ的(複雑)なやり方をしてしまったがために、システムの開発コストと維持コストが高くなっている。こんなに苦労したのに、そこが全然評価されていない。

ひろゆき:すべてのリスクに対応しようとした結果、すごく不便なものができて誰も使わなかったというオチ。なので、ある程度リスクがあるけど“仕方ないよね”ということで皆で使ってもらって、少しずつセキュリティを上げていく方がまだましだと思う。マイナンバーの設計として、番号が漏れたらまずいというのは筋が悪い。番号を相手に伝えることによってこの人だと認証する仕組みなので、番号を人に見られたら使えないから再発行というのは、そもそも仕様設計が間違っている気がする。

平井:マイナンバーは特定個人情報、要するに普通の個人情報より上のものに法律でしてしまったためにこのようになっている。番号を自分の名前と同じオープンで設計していたら、もっとイノベーションは起きるし、ものすごく社会は楽だった。これはいずれ一般の個人情報に戻す法改正が必要だと思う。

藤井:基本的におっしゃる通りだと思うが、カードを今すぐ止めるというのは難しいとも思う。マイナンバーカードは一種のユニバーサルサービスとして公的個人認証の手段を与えようという話で、携帯はお金がかかるもの。逆説的だが、リテラシーが低い人のためにカードという手段を残しつつ、全体的に改善していくという段階的なプロセスかなと思っている。

■公文書管理のデジタル化は?

 既得権を持っている人やITに疎い政治家も多い中での改革になる。公文書の管理、改ざん防止などのデジタル化は。

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平井:紙で管理していると誰に見られたかがわからない。やはりデジタル化のメリットは、トレーサビリティが担保できるということは1つある。あと管理するコストが紙に比べて低い。私は公文書は担当していないが、社会全体のデジタル化を進めていく中で当然そういうことになっていくと思う。

ひろゆき:公文書をデジタルで保存すれば、何百年保存しても大した容量ではない。だが、政権を担当しているうちは見られたくないものがあると思う。そうすると“ここは消せるようにしよう”“ここは隠せるようにしよう”という思惑がどこかで働いてしまうと思う。

平井氏:わざわざ隠すものに出会ったこともないし、隠す気もない。政権が隠したかどうかも知らないが、隠すということが事実上、今の世の中は不可能だと思う。結局何を隠そうとしても隠し切れない。その意味でもデジタル化を進めていくことは一番フェアかなと思う。

■行政のオンライン化は?

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 平井大臣は就任当初の会見で、10万円の特別定額給付金について「届けるコストに1500億円かかっているのは、デジタルの世界ではあり得ない」と指摘した。また、PCR検査結果について保健所からFAXで集めたものを手入力で集計、国の手続き5万5000件のうちオンラインで完結可能なものは7.5%(出店:日本総研、2018年度末)など、行政のオンライン化に遅れが目立っている。

平井:一部の人だけがメリットを享受できるということを良しとしなかった。中国やアメリカのように“置いていく人は置いていく”というデジタル化をやってこなかったのは、日本らしいなと思う。それを良しとしない社会と政治があるので、遅れているが全員引き連れていくデジタル化をやってもいいと思う。

 フランス政府の引っ越し用サイトでは、引っ越しの日程・旧住所・新住所を入力すると、年金、自動車登録、電力会社、社会保険、ガス会社など一括で住所変更が可能。また、確定申告では、ID・パスワードで認証し、給与収入や個人事業の売り上げなどを入力すると自動的に税金を計算し、クレジットカードで払えるという。

ひろゆき:言い方とやり方の問題だと思う。例えば、フランスの確定申告は紙の場合だと5月までだが、オンラインだと6月まで締め切りが延びたりする。紙で申請した人はずっと紙で申請できるが、1回でもデジタル申請した人は紙で申請ができなくなる。紙しかできない人は、締め切りは早い。一方、デジタルに行った人は締め切りが長くなるし、楽だしというので移行する。“今までの人は今まで通りやって下さい。でもデジタルでやった方がもっと便利ですよ”ということで、置いていかれた人たちが損しないやり方で進めている。

平井:そのやり方はいい。

■地方のデジタル化はどこまでできる?

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 マカイラの藤井氏は、「地方のデジタル化はどこまでできる?」「地方の中小企業など民民の意識改革はどうやってやる?」「デジタル庁は地方に設置を」と意見する。

 独自の取り組みを進める福岡市の高島宗一郎市長に話を聞くと、「地方自治体のデジタル化の標準化・共通化など、やる気のある自治体から試行を!」との回答。福岡市では、LINE公式アカウントで粗大ごみの回収が完結できる仕組みを作り、コロナ禍で外出を避けることにつなげたという。

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平井:高島さんはものすごくやっている。LINEはいろいろなところで大活躍していて、厚労省と組んだり各自治体と組んだり非常に良かった。ただ市の中で留まるならいいが、広域になった時に各自治体にある個人情報保護委員会、保護条例というものがとても影響して進まなかったというのを今回経験した。よく“2000個問題”と言われるが、これを何とかしないといけない。

 あと自治体クラウドもなかなか進んでいない。例えば、「自治体ピッチ」というところで“うちこんなものを作りました。買って下さい”という取り組みをやっていて、千葉で作ったものを高松市が採用するなどしている。アプリケーションはうまくいくようになったが、基盤がばらばらなのでこれから考えていく。地方のことは地方で決めるという本旨は、どんな政策を住民にするかということであって、システムを独自に作るという話ではないと思っている。そういう風に頭を切り替えて、広域クラウドで地方自治の問題がクリアできると、相当にコストは下がると思う。

■マイナンバーで戸籍の巻取りも?

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平井:この国のものすごく手間がかかっているところは、皆さんの名前の読み方が確定していないということだ。戸籍が何を明かしているかというと、日本人であることと、兄弟・親子関係と、名前の漢字。漢字のデータとしての登録で、どう読もうと法務省は関係ない。それが住民基本台帳の方にいって住民票などいろいろなものを作るが、名前の読み方はいつでも変えられる。文部科学省も漢字の読み方は“我々は関知しないので好きにやって”となっているわけだ。こんなに名前の読み方が確定していない国はない。だからマイナンバーを振ったということを説明しなかったのが悪いと思う。

ひろゆき:そういう直球を投げて反発が来ることを恐れる人たちは前に進めない。地方自治体のシステムがうまくいかないのも実は同じで、“こういう便利な仕組みなんだからうちの市にも入れて”と、住んでいる人たちの声が上がらない限りは変わらない。なので、ニュースなどに平井さんがバンバン出て、“こんなに便利な仕組みがあります。村長がこのシステムを入れると言ったらすぐできます。ただ、条例を変えるのは自治体でやって下さい”と訴えるメディア戦略の方が大事だと思う。システムは金を払えば誰でも作れるが、できた便利な仕組みをどう浸透させるかが本当に難しい問題だと思う。

若新:僕は戸籍から名前を変えているので読みを登録しなくていいというのは知っていたが、逆になぜひらがななりアルファベットを登録することができないのか。よっぽど戸籍のルールを変えたくない何かがあるのか、デジタル一個いじるにしてもしがらみがあるのだと感じた。「調整、調整」としていると10年かかってもなかなか進まないので、決められる人が決めていかなければならない。なんでそれを変えてしまうのかということを変えていかなければならない。

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青野:やはり仕様を1つ変えるのでも随分抵抗される方がいる。ただ、戸籍とマイナンバーのシステムは被っている。管理している情報は相当被っているのに、私たち国民は二重に負担し続けるのか。やはり、もう1回ゼロからデザインし直した方がいいと思う。

平井:日本の国のシステムは、実は100年前からほとんど変わっていない。その中で、デジタルでどうやるかということだと思う。行政サービスを提供する側からデジタル化を始めてしまうと、多分やらなくてもいいことまでやってしまう。だから、国民が“便利だな”“これがいいな”と思うものから集中的に投資をすると、マイナンバーカードなどは便利になると思う。

 戸籍は法務省のガチガチのところにあるので、私は一切手が出るような立場にない。場所も北海道から尖閣とかいろいろなところに持っていってしまって、一番多いのは皇居だ。日本人であるということと、相続の時に使う姻戚関係。マイナンバーを作る時にそれを巻き取ってしまえばいいが、まだ先のことだと思う。

ひろゆき:戸籍は触るのが難しいので、“マイナンバーで暮らせるよね”“戸籍はシステムとして一応あるよね”くらいにしてしまった方が、むしろデジタル庁はやりやすいと思う。

平井:戸籍には、今使っている戸籍と過去に封印している戸籍があって、全部をもって日本国と考えている人もいる。なかなかそのあたりは難しい。

若新:やっぱり、“日本はIT鎖国して、紙と印鑑と古い戸籍”と、デジタルを放棄しているような気になってしまう。平井さんの仕事は大変だ。それを調整できなかったから、今までの大臣や部署はうやむやになったという理解はよくできた。

ABEMA/『ABEMA Prime』より)

平井デジタル改革担当大臣が生出演
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