勝者は鼻が曲がっても「想定内」 敗者は指が折れてもギブアップ拒否…修斗で執念の大激闘
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 2020年の国内MMAベストバウト候補と言える大激闘だった。

 9月19日の修斗、渋谷O-EAST大会第2部。セミファイナルで対戦したのは世界バンタム級7位の藤井伸樹と後藤丈治だ。後藤は修斗初参戦の新鋭。4月のRoad to ONE無観客試合では元・修斗環太平洋王者の祖根寿麻を下した。

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 勢いに乗る後藤は得意の打撃で1ラウンドから圧倒する。左のハイキックを多用しながらパンチもヒット。このままいけばKO確実と思われる展開だった。

 だが後藤の師匠であるセコンド・長南亮の「相手は“ゾンビ”だから気をつけろ」という言葉が、2ラウンド以降に現実となる。藤井の最大の持ち味は粘り。前に出続けるしぶといファイトスタイルだ。

 後藤が打撃を出す前に組みついた藤井はバックを奪い、チョークを狙う。後藤も懸命にディフェンスし、立ち上がって打撃を入れようとするが、藤井はまったく引き下がらなかった。最終3ラウンドもバックをキープ、試合を支配して逆転の判定勝ちだ。

「厳しい試合になると思ってました。思った通りでした」と試合後の藤井。ギリギリの闘いも、あくまで想定内だったと言う。試合の途中から鼻血を流し、試合後の顔を見ると鼻が曲がっていた。そこまで含めての“想定内”か。

「1ラウンド、向こうに流れが行ってたんでなんとか立て直さなきゃと。しんどい試合でしたけど、気持ちを切らさないようにと、それだけでしたね。(試合中は)必死になることだけ」

勝者は鼻が曲がっても「想定内」 敗者は指が折れてもギブアップ拒否…修斗で執念の大激闘
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 前回の試合では判定負けを喫しており、負けられないという思いも強かった。まして今回の相手は上り調子。簡単に喰われるわけにはいかない。

「この階級(修斗バンタム級)はいつも激しい、厳しい試合になる。その中で上に行きたいと思っています。チャンピオンたちの中には過去に負けた選手もいるのでリベンジしたいですね」

 自分がやってきた闘いへのプライドを感じさせた藤井。一方、敗れた後藤も無傷ではなかった。1ラウンドの段階で右手の指が折れていたのだ。2ラウンドから藤井の反撃を許したのには、そういう理由もあった。逆に言えば、指が折れた状況で残りの2ラウンドを闘い、スリーパーを極められかけてもしのぎにしのいでギブアップせず試合を終えたのだ。

「タップしたら(故郷の)北海道に強制送還される」

 そう思いながらピンチに耐えたという後藤。長南の弟子らしい、覚悟を感じさせる言葉だ。勝った藤井も負けた後藤も手負いの状態。そういう中で、どちらも執念をケージの中に叩きつけた。声を出しての応援ができないご時世、しかし2人の闘いに、観客は鳴り止まない拍手で応えたのだった。

文/橋本宗洋

写真/SUSUMU NAGAO

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