1ラウンド1分19秒、挑戦者の思いが詰まった渾身の”ゴールデンフィスト”が炸裂し、王者が失神KO負けを喫した。コロナ禍で応援の自粛を求められていた会場の観客も思わずどよめくほど、王者の交代劇は衝撃的だった。
22日にエディオンアリーナ大阪で開催された「K-1 WORLD GP 2020 JAPAN ~K-1 秋の大阪決戦~」。K-1 WORLD GPスーパー・ライト級タイトルマッチで、挑戦者の山崎秀晃が王者・安保瑠輝也をフルスイングした左フックで失神KO。33歳遅咲きの新王者が放った気迫の”ゴールデンフィスト”に自粛応援の観客もどよめいた。
Krushでの2階級王者など黎明期から常に新生K-1の中心選手だった山崎。ケガによる長期欠場などを経験し、K-1タイトルに手が届かずに迎えたこの日。33歳7カ月の「集大成」という言葉には「負けたら後がない」という強い覚悟の思いが滲んでいた。
1ラウンド、軽快なステップを踏む山崎だが、左ヒザから太ももにかけて巻かれたテーピングが痛々しい。安保は山崎に勝利した2年前を再現するかのように左の奥足を狙うが、これは空を切る。続いて山崎の左、安保の右の蹴りが交錯。「バチッ」と同士討ちの音が鳴り響き、火花が散るような痺れる展開だ。
テーピングの不安を吹き飛ばすように山崎の足を使った動きは軽快だ。安保のインローを狙ったキレのある低空の前蹴り2発を紙一重でかわすと、前へ出て左ミドルから右、左と代名詞となっている“ゴールデンフィスト”を振るう。ここは安保もガードで逃れるが、王者に攻撃の間すら与えない山崎の波状攻撃が続く。
すると試合開始1分、山崎が大きく踏み込みながら右ストレート、さらに泥臭く右、さらに右フックと畳み込んでダウンを奪う。安保もすぐに立ち上がり、平静を保つようにファイテングポーズをとるも、試合再開とともにさらに圧をかけ前進する山崎が安保の反撃をかわし、渾身の左フックをフルスイングで安保の顔面に叩き込んだ。
「ボコッ」
鈍い音を響かせ振り抜いた重い一発に、安保は天を仰ぐように後ろへと崩れ失神、大の字のまま目を閉じた。
この山崎の劇的なKOシーンにABEMAの視聴者からも「まじか」「今のパンチはエグい」「踏み込めるのがすごい」「漫画のようなダウン」などのコメントが殺到。中には「空中で失神してる…」といった驚きの声も聞かれた。ゲスト解説を務めた魔娑斗は「この試合にかける意気込みというのは、山崎の方が強かったのだと思いますね」と勝敗を分けたポイントを振り返った。
時折体勢を崩しながらも、がむしゃらに「右、右、右」と全力で豪腕を振るい続けた山崎。相手の飛びヒザ蹴りを左のパンチで迎撃し、決定打となった左フック。さらに安保のダウンにより空を切った超フルスイングの右など、大迫力のダウンシーンに自粛応援が続く会場の観客も騒然としていた。
一方、新チャンピオンとなった山崎は、試合前にヒザの古傷が再発していたことや「もう負けたら最後、これで引退しようと思ってました」など、この試合に賭ける強い思いを明かしつつも「(タイトルを)獲ったからこそ自信もついちゃったんで…“まだまだいくぞ”という感じです」と気持ちを新たにしていた。