プロレスリング・ノアのシングルリーグ戦N-1 VICTORYでは、12名の参加者の中に50代の選手が3人いる。しかもそれぞれが衰え知らず。過去のネームバリューではなく現在の実力が評価されての出場だ。
Aブロックにエントリーしている桜庭和志は51歳。Bブロックの杉浦貴は50歳で、2人は現GHCタッグチャンピオンだ。もう1人はAブロックの望月成晃。ドラゴンゲートからノアに乗り込んできた望月は2年連続のリーグ戦出場となる。
望月は50歳。ノアの中では体が小さいが、うまさと激しさを兼ね備えたスタイルで大型選手とも渡り合う。9月23日の後楽園ホール大会では、現GHCヘビー級チャンピオンである潮崎豪を下す“大穴”をあけてみせた。
鉄柱へのチョップ誤爆を誘うとキーロックに腕十字、ショルダーアームブリーカーと腕殺しを徹底。望月は圧倒的なパワー差を覆そうとする。
だがそれでも“豪腕”にこだわるのがチャンピオン・潮崎の凄味だ。傷めつけられた右腕でなおもチョップ、そしてラリアット。望月が蹴りでラリアットを迎撃する場面もあったが、潮崎は構わず右腕を振るう。
潮崎強し。そんな印象もあったこの試合だが、望月はなおも奥の手を残していた。フィニッシュを狙って潮崎がロープに走った瞬間、バックを奪い高速ドラゴンスープレックス。不意を突かれた潮崎は3カウントを聞くしかなかった。
これで潮崎の開幕からの連勝がストップ。星取りで出遅れていた望月だが、この大きな勝利でブロック突破に望みをつないだ。
大会を締めるマイクでは、公式戦最終大会となる10.4後楽園まで「生き残ります」と望月。さらに所属団体ドラゴンゲートの後楽園大会も「ノアの3日後の10月7日にありますんで」としっかりアピールしていた。
インタビュースペースでは「他団体からきた175cm、85kgの50歳がN-1取ってやる!」。王者相手にサイズも年齢も超越する実力を見せた望月。だからこそ、この優勝宣言にも説得力がある。
文/橋本宗洋
写真/プロレスリング・ノア