アマチュアには人気も、プロでは少数派なのが将棋の「振り飛車」という戦法。攻めの要となる大駒・飛車は、自分から見て2筋に初期配置されているが、これを中央の5筋やそれ以上左に移動させることを振り飛車と呼び、2筋のままで戦うことを居飛車と呼ぶ。「居飛車党」か、「振り飛車党」か。棋風において大別されるポイントでもある。プロでは年々数が減ると言われる振り飛車党だが、若手棋士・山本博志四段(24)はブレない振り飛車党で、さらには「生涯・三間飛車」まで掲げている。その山本四段に言わせれば、なんと昼食がおいしく食べられるという想定外のメリットがあるそうだ。
【動画】山本博志四段の名(迷?)言「振り飛車はご飯がおいしい」(5時間0分~)
山本四段の口から、不思議な利点が語られたのは9月24日に行われた王座戦五番勝負第3局、永瀬拓矢王座(28)と久保利明九段(45)をABEMAで解説していた時のことだ。久保九段が振り飛車党のトップ棋士ということもあってか、山本四段も朝からテンション高め。昼食休憩が紹介されたタイミングで、聞き手を務めた飯野愛女流初段(33)とフリートークを展開した。
山本四段
振り飛車のいいところは、ご飯の味がする。それが一番の利点です。
飯野女流初段
(笑)居飛車の人は味がしないんですか?
山本四段
しないんじゃないですかね(笑)あんまりおいしそうに食べている気がしないんですよ。展開にもよるんですが、結構居飛車の人は昼食休憩の時点ですごいことになっていることがある。角換わりでバババっと進んで、もう60手目とかありますからね。前例があったり、定跡が長い展開だったり、攻め合いになってのっぴきならないことになっていたりするので。
どうやら、多数派である居飛車党の棋士は、午前中からどんどんと対局が進み、正午からの昼食休憩の時には、食べ物の味がわからないほど局面に脳をフル回転することも多い、ということのようだ。
山本四段
ところが!振り飛車は、味がしないことはないです!休憩の時に、ご飯がおいしくなかったことは一度もないです。お昼の時点で自信がなかったことがないですから。楽観派なので、お昼の時点では勝つと思っています。ところが、なぜか負けているのはなんででしょうね(苦笑)でも、お昼で悪くなっていることはない。3筋に飛車を振って、美濃囲いにしたらお昼ですから。
将棋ソフトによれば、振り飛車にした時点で評価がマイナスになるとも言われるが、山本四段は超ポジティブ。少々のマイナス評価など、まるで気にもしない。ただ、なんでもかんでもポジティブということもない。ちゃんと苦しみもする。
山本四段
夕食は(味がしないことは)ありますね。夕食休憩の時に、囲いが倒されていることはそんなにないんですけど、飛車とか角とかを抑え込まれて「ああ、絶望的だ…」みたいになっている。夜ご飯がおいしく食べられないのはしょうがないんです(苦笑)
まさに勝負を決める終盤に迎えることが多い夕食休憩。ゆっくりと味わう余裕もないのは、決してプロ2年目の山本四段だからというわけでもないだろう。とはいえ昼食においては、これからの自分の会心譜を想像しながら、実に楽しい気分で食べる。次回、山本四段が放送対局に登場した場合、昼食休憩前にはウキウキと注文の品が届くことを待つ様子が映し出されることだろう。
(ABEMA/将棋チャンネルより)