2ラウンド終盤から3ラウンド序盤にかけ、およそ70秒の間に4つのダウンを奪う圧巻のKO勝利だ。網膜剥離という選手生命の危機を乗り越えた玖村修平が、怒涛のダウンラッシュで見事な完全復活を果たすと、試合後のマイクで感極まる一幕も。その様子にネットからは「よく復活したね」「おめでとう」「泣くな! まだコレから」といった祝福や激励の声が多数寄せられた。
9月26日に後楽園ホールで開催された「Krush.117」の第5代Krushフェザー級トーナメント一回戦。玖村と秀樹の対戦は、ヒザやパンチの連打を畳みかけ、ラウンドを跨ぎながらも70秒で4つのダウンを奪った玖村が3ラウンドKO勝ち。Krushスーパー・バンタム級王者である弟・将史との「兄弟でのタイトル獲得」に向け、二回戦へコマを進めた。
玖村はK-1でスーパー・バンタム級のトーナメントに出場するなどトップ戦線で活躍。しかし昨年、網膜剥離の手術を受け戦線離脱を余儀なくされていた。今回は階級をフェザー級に上げ、Krush.での再挑戦。34歳のベテランである秀樹とのトーナメント初戦となった。
過去の実績からトーナメント優勝候補筆頭に挙げられる玖村は、1ラウンドから右のミドルを何発も秀樹に打ち込んで試合のペースを握る。2ラウンドに入ると秀樹も間合いを詰め、左フックからワンツー。対する玖村は執拗に右ミドルで勝負という展開だ。1ラウンドから何発もの鋭いミドルを受け続けた秀樹の左腕はタフで頑丈だが、ダメージは徐々に蓄積されていく。
試合が大きく動いたのは2ラウンド終了間際。残り30秒で玖村が右ミドル一辺倒の攻撃から一転、鋭い跳びヒザで秀樹のアゴを捉え、さらに右フックをテンプルに打ち込むと、秀樹は後ろにフラつきながら最初のダウンを喫する。
なんとか立ち上がった秀樹だが、試合が再開されると玖村の攻勢に防戦一方となりロープを背に串刺し状態に…。その後も玖村のキック、パンチの連打を一方的に浴び、2度目のダウンはスタンディングダウン。絶体絶命のピンチもラウンドの残り時間は数秒…ここはゴングに救われる形となったが、ロープにもたれ掛かり一方的な攻撃を浴びるだけの秀樹に試合を中継したABEMAの視聴者からは「もう心が折れてる」「タオルを投げろ!」「レフェリーストップでもいいだろ」といったコメントが多数寄せられた。
3ラウンドが開始。すでに決着は時間の問題と思われたが、あとのない秀樹が最後の力を振り絞るように前に出てパンチを繰り出す。一度はさがりながら様子を見つつ応戦した玖村だったが、カウンターぎみに繰り出した右で三度ダウンを奪う。前ラウンドのダメージも抜け切れていない様子の秀樹だが、驚くことにすっと立ち上がると、フラつきながらもコーナーへ。じっくり目をつむってカウント8まで聞いたところでファイティングポーズをとった。
もはや気力と本能で戦い続ける姿に、コメント欄は「そろそろ止めどきだ」「もう止めていい」「もう駄目だ」「止めてあげて」の大合唱。そんな中、試合が再開されると玖村の容赦ない右ミドル、跳びヒザの連打、ダメ押しの右ストレートがテンプルを捉える。3ラウンド開始40秒、何発もの蹴りやパンチを浴び続けた秀樹が、仰反るように崩れ落ち、力尽きた。
新たな階級での注目の復帰戦において、実績ある玖村が力を遺憾なく発揮した。試合後にマイクを取り、網膜剥離からのリング復帰について「このリングに上れるなんて思っていなくて、本当に怖かったです」と涙ながらに心境を明かした玖村に対して「よく復活したね」「おめでとう」「泣くな! まだコレから」など多数の激励の声が寄せられた。