9月30日の会見で5Gプラン「Rakuten UN-LIMIT V」を打ち出した楽天の三木谷浩史会長。これまでの4Gプランの料金そのままで、次世代通信サービス5Gも使えるというプランだ。三木谷会長は「他社に比べると平均で約70%。71%程度安い」、楽天モバイルの山田社長も「私どものユーザーが増えれば全体として日本における平均的な携帯料金が下がる」とアピールした。
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菅総理が年来の持論である携帯料金値下げに意欲を示し、KDDIとNTTドコモが相次いで値下げを検討していくことを明らかにする中での大胆なプラン。携帯電話業界に詳しいライターの佐野正弘氏は「当面は赤字が続くことを覚悟していると思う」と話す。
「ネットワークの仮想化など、新技術を取り入れることで安くしている部分もあるが、やはり戦略的に安くしている部分がかなり大きいと思う。三木谷さんの“勢い”というところもあるだろう」。
一方、併せて発表された楽天の5G提供エリアは、6都道府県のごく一部の地域に留まっている。この点について佐野氏は「非常に狭く、このエリアからほとんど動かないような人しか恩恵を受けられないといえる。5Gの電波は直進性が高く金属に反射しやすい特性のため遠くまで飛びにくく、しかも楽天が使っている周波数帯域は衛星の通信と干渉してしまうので、基地局を置く場所に制約がある。同時に4Gの提供エリアを広げないといけないので、非常に苦しい立場にある。他社の提供エリアはもう少し広いが、それでも面でカバーしているというよりは、点のイメージ。“5Gのスポットがあちこちにあるよ”というイメージだ」と説明した。
業界への新規参入である楽天モバイルの現状に目を向けると、やはり先行する大手三社の壁は厚く、6月末時点の申込数は100万人で、今年中に300万人を契約することを目標にしている。「正直なところ、年内に300万人いくかどうかも微妙なところだ。やはり4Gでも実際に“使い放題”になるエリアがまだまだ狭いというのが非常に大きい」(佐野氏)。
元NTTドコモ執行役員で慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏は「携帯電話業界はコスト構造と料金の構造がいびつだった。利益率が高いだけではなく、大手3社とも人件費が高く、無駄な投資をしている。広告宣伝費だけでも数百億円というレベルで使っていて、1人のお客様を獲得するのに平均で5万円以上のマーケティング費用を使っているとも言われている。そこに楽天が自前の顧客基盤を移していくいことができれば、他社よりも低い顧客獲得コストが実現でき、大手と戦えるんじゃないか」と指摘。
その上で、「また、MVNOのように数百社もできてしまうと難しいが、携帯電話事業は免許制でもあり、電波は有限なので最大3つ。ギリギリのところで4つというところ。過去の歴史を紐解くと、こうした事業に新規参入した企業が撤退に追い込まれるケースはあんまない。楽天はここに入れたので、何とか生き残れるんじゃないかという読みもあると思う。MVNOとしての楽天モバイルはEコマースのポイントの倍率を上げるといった戦略でうまくいっている。今後、4G、5Gの提供エリアが整ってきた段階で、同じようなマーケティングをするのだろう」と推測した。
佐野氏も「自社の4Gネットワークを作っていくということは最優先になるし、それができてこそ顧客が満足できる。現段階では、はっきり言ってしまうと“2台目”。地下に入るとauのローミングになってしまったりするので、メインの回線として使うにはまだまだ厳しい。だからこそ“300万人無料キャンペーン”などによって、まずはサービスを使ってもらうことにフォーカスしているのだと思う。その先に、グループが持つEコマースを始めとした様々なサービスとの組み合わせがあると思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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