ノアのシングルリーグ戦「N-1 VICTORY」決勝進出者が決定した。
公式戦最終大会となる10月4日の後楽園ホール大会では、A・B両ブロックとも好カードが並んだ。実力者揃いのメンバーだけに得点争いも白熱、大会開始の時点でAブロック3名、Bブロックは4名の選手が決勝進出の可能性を残しているという大接戦だ。
Bブロックでは中嶋勝彦が丸藤正道を下し、決勝進出を決めた。一方のAブロックでは望月成晃がマサ北宮に敗れて脱落し、メインイベントが決勝進出者決定戦となった。
ここで対戦したのが現GHCヘビー級チャンピオンの潮崎豪と前王者の清宮海斗。今年1月4日にベルトをかけて闘い、潮崎が劇的な王座奪取を果たしている。清宮はこのリーグ戦に優勝し、ベルト奪還につなげるのが大きなテーマだ。
序盤、清宮は基本技といえるヘッドロックで主導権を握っていった。リーグ公式戦で桜庭和志からギブアップを奪った試合でもそうだったが、今年の清宮はグラウンドにこだわりを持ち、磨きをかけているようだ。バックドロップで切り返されながらスリーパーホールドを離さず、そこからフェイスロックに移行してダメージを与える場面も。華やかでひたむきなイメージがある清宮のファイトぶりだが、今ではそこに“重み”も加わっている。
対する潮崎はパワーで圧倒しにかかる。得意のチョップ、ラリアットはもちろんコーナー上からぶっこ抜いての変形ブレーンバスターも。
しかし清宮は、ベルトを奪われた技であるムーンサルト・プレスは阻止。変形リバースDDTを雪崩式で豪快に決めると、バックキック、変形エメラルドフロウジョン、そしてタイガースープレックスで3カウントを奪った。
「1月に負けてるから、まだ1-1」と清宮は言うものの、王者を倒しての決勝進出は大きい。10月11日の決勝戦に向け、リングで対峙した中嶋には「今の俺の勢いは本物だぞ」と自信のマイク。さらに観客には「このN-1をどの団体にも負けない闘いにしたい。ノアのヘビー級がナンバーワンだと証明します」とアピールしてみせた。
ベルトを失って9か月、清宮は成長を示した上で決勝進出という結果を出した。グラウンドから大技ラッシュまで、王者時代以上に隙のないレスラーになったと言えるだろう。
「武藤(敬司)さん、桜庭さん。リーグ戦での全員との闘い。それがここにつながったと思います」
清宮は勝因についてそう語っている。敗れた武藤戦も含め、ありとあらゆる対戦相手からさまざまな要素を吸収して今の清宮の実力がある。またこれまでは「新しい景色」という言葉をスローガンにしてきたが、決勝進出を決めると「優勝してノアの“絶景”を見せる」と語った。単に景色を変えるだけでなく、それを最高のものにする。清宮海斗の野望と決意は、さらに大きなものになったということだ。
文/橋本宗洋
写真/プロレスリング・ノア