「地道な努力をする」「勉強させる」「そっとしておく」…LGBTなど性的少数者の理解促進、どうすれば? 足立区議の発言から考える
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 「私は私の考えを正しく言ったと思っているから、怒鳴られて脅かされて“すみませんでした。間違っていました”と、そんなヤワな議員じゃないから。悪いけど」。

・【映像】LGBTを否定する人が批判されることも...相手を馬鹿にすることが分断を生む結果に?

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 9月25日、少子化問題を議論する議会での発言が批判を浴びている白石正輝・足立区議会議員(78)。1971年、29歳で区議選に初当選、23区内で最多期数となる11期目のベテラン議員だ。白石議員の発言を改めて確認しておくと、

 「性の多様性だとかLGBTといわれて性の自由を尊重しようという地方自治体があちこちに今生まれつつある。こんなことはあり得ないことですけれども、日本人が全部L、男が全部G、次の世代生まれますか?1人も生まれないんですよ」。

 「子どもを産んで、育てることは経済的、社会的に大変かもしれないけども本当に素晴らしいことなんだ。本当に正しいことなんだ。そのことを教育の場、子どもたちにしっかり教えないと『L』だって『G』だって法律で守られているじゃないか、なんていう話になったんじゃ足立区は滅んでしまう」

 と、LGBTがあたかも増えるような不適当な例えをし、その権利を保護することで、足立区が滅んでしまうという不適当な認識を示しているのだ。

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 しかし白石区議は6日、「子どもを産んで育てることの大切さを教育で教えなければならないとの思いで引き合いに出した」「“まず、こんなことは考えられないことだけれども”と断ってから、あくまで一つの例として発言した」「少子化の一番の原因がLGBTだとは思っていない」と説明。「社会の判断は分からないが、私は正しいと認識して発言」「LGBT批判ができない社会になりつつあると懸念」、さらに「ちょっとそれ(LGBT)に対して反対みたいなことを言うと袋叩きになっちゃう。私は良いことだとは思ってないだけ」との認識を示した。

 杉田水脈衆院議員の「LGBTは生産性がない」発言など、政治家の発言が問題視される中、なぜ理解が進まないのだろうか。ゲイであることを公表している松浦大悟元参議院議員は「LGBT運動の側にも問題があると思っている」と話す。

■ゲイ公表の松浦氏「地道な努力が足りないのではないか」

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 現状について、「“こちら側”“あちら側”と線を引き、“あいつらは敵だ”と名指しする。政治学者のカール・シュミットが言った『友敵図式(理論)』だが、白石議員も“LGBTは敵だ”という認識になっている。一方で、ある時期からLGBT運動がただの左翼運動に堕落してしまった。そのことへの反発もあると思う」と分析する松浦氏。

 目下、議論になっている日本学術会議を引き合いに、「LGBT活動家の学者が入り込んで、トランスジェンダーについてとんでもない提言を出している。それは従来の性同一障害特例法を廃止し、性自認の自己申告だけで性別変更ができるような法律を作れというものだ。しかし同様の法律(セルフID法)のあるイギリス社会では、ペニスがついたままの女性という人がシャワールームに入ってくるようになるようになり、大混乱に陥っている。そのためイギリス議会ではセルフID法を廃止しようという動きが出ているくらいだ。日本の場合には、温泉や銭湯もある。そこで女性の人権とトランスジェンダーの人権がバッティングすることがあるにもかかわらず、トランスジェンダー側に偏った提言をしているということだ。あまりにも拙速だし、白石議員のような方にとっては恐怖だろう。そういう感情に寄り添い、丁寧にコミュニケーションをしていく必要があるはずだ。それでもこういう指摘をすると、“何を言っているんだ。差別主義者め”と言われ、言論を封殺されてしまう。だからこそ、地上波ではこういう問題が出てこない。そういう背景も知っておくべきだと思う」と強い調子で批判。

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 さらに「電通が毎年発表している調査で、なぜLGBTの人口が増えているのかといえば、それは男にも女にもカテゴライズされない、Xジェンダーが増えていて、その中にセクシュアリティとは無関係の人たちが含まれているからだ。これもLGBT運動をする側の情報発信のまずさで、数を増やすことによって、“あなたの周りにもLGBTはいる。特殊なことではない”という運動をしようとしてきたということだ。そういうあの手この手によって、企業からお金を持ってきたり、マスコミに取り上げてもらったりしてきた。こうしたLGBT活動家の言動が、自らの首を絞めてしまうことに繋がっていると思う」と持論を展開した。

 その上で、「私のポスターをどうしても貼らせてくれない保守のご家庭があった。しかしお父さんが亡くなった後、お母さんがポスターを貼らせてくれた。やはり人間関係の中で“言えない”ということもあれば、“松浦さんだったら貼ってもいいよ”と変化することもある。私はLGBTの問題も、少しずつ壁に穴を開けることができるのではないかと思っている。問題は、そのための地道な努力が足りないのではないかということだ」と訴えた。

■小島慶子氏「正しい知識を身につけること」佐々木俊尚氏「そっとしておく、ということも必要では」

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 エッセイストの小島慶子氏は「一番大切なのは、正しい知識を身につけることではないだろうか」と話す。

 「おそらく白石さんは“趣味”の問題だと捉えてらっしゃると思う。しかし、同性愛はそうではない。ご自身の考えは色々あっていいと思うが、間違った知識でものを言ってしまうというのは、ぜひ改めてほしい。今は良い本がいっぱい出ているので、何冊か本を読まれれば、まず基本的な知識が身につくと思う」。

 また、「トランスジェンダーを巡る考え方について、松浦さんと同じ考え方をする人もいれば、そうではない考え方をされる方もいる。性的少数者の方の中にも、当たり前だが色々な考え方がある。だから松浦さんのお考えを聞いて“そうなんだ”と思った方も、何冊か本を読んだり、インターネット上の色々な議論をご覧になったりするといいと思う。自分は性的マイノリティではないから、LGBTはきっとこういう人たちだ、と決めつけてしまうことから偏見や差別が始まると思う。松浦さんの考え方に興味を持たれたのであれば、他にどういう意見があるのかを知って欲しいなと思う」と話した。

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 こうした小島氏の発言に、ジャーナリストの佐々木氏は「それは“上から目線”ではないか“。勉強して下さい”と言われたからといって、みんなが勉強するわけではない。白石区議の側の人たちは、自分たちのことを弱者だと思っているので、おそらく“勉強しろ”と言われた瞬間、“そうやって俺たちをバカにする”と反発を強める。この分断が今の政治の構図だ。アメリカでトランプ大統領が生まれたのも、民主党の支持者たちの“あんな田舎のどうしようもない白人たちがバカを支持しやがって”という態度への反発からだ。反知性主義だ何だと罵ることが分断を招き、対立を煽るという構図は、この10年くらい世界の政治空間で続いている」と指摘。

 「日本社会ではLGBTは弱者、マイノリティだった。ところが最近のポリティカル・コレクトネスの中で、今度はLGBT否定する人そのものがけしからんという話になっていった。確かにけしからんのだが、言われている方としては、みんなから批判されているマイノリティであると考えるようになる。それと同時に、実はマイノリティなのではなくて、意見に同調してくれるサイレントマジョリティを背負っているんだとも思う。 白石区議やその支持者についても、この“自分たちはマジョリティなんだけど弱者”という認識があると思う。いわば“LGBTのマイノリティ”と、そうではない“サイレントマジョリティ自認”の人たちの間での不毛な“弱者競争”みたいなことが起きているのが現状だ。多様性を認めない人たちのことを認める必要はないが、そっとしておく、くらいの受け入れ方もどこかで必要になってくるのではないか。何でも多様性を認めるのが正しく、そうじゃないやつはバカだと言い続ければ、いずれジレンマが生まれてくるということを我々は認識するべきだと思う」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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