強豪揃いの過酷なトーナメントを制したのは、原口健飛の勢いと責任感だった。
10月11日、RISEはぴあアリーナMM(横浜)大会を開催。那須川天心が出場しない初のビッグマッチであり、RISEの新エース争いという意味でも重要な大会だった。伊藤隆代表は、今大会と11.1大阪大会のテーマとして「天心vsRISE」を掲げている。
原口はこの横浜大会で-63kg日本トーナメントに出場。1回戦でシュートボクシング&KNOCK OUT王者の西岡蓮太に判定勝ちすると、決勝では直樹をパンチ連打によるKOで下した。
2試合とも、原口は多彩なテクニックを披露している。常に圧力をかけながら三日月蹴り、二段蹴りからのパンチ、ハイキックからバックスピンキックへの連続蹴りと華のある闘いぶりだ。その上で決勝はパンチによるKO。コンプリートな勝ち方だと言える。敗れた直樹曰く「何がどうなってるのか分からなかった」。
試合前には昨年の-61kg世界トーナメント優勝者・白鳥大珠と舌戦を展開。決勝での対戦が期待されていた。しかし白鳥は1回戦で直樹に敗れてしまう。原口はモチベーションが下がりながらも「自分が優勝しなければ」という責任感も強くなったそうだ。ダークホース・直樹優勝の大番狂わせではなく、RISE王者である自分がトーナメントと大会を締めくくらなければならない、と。
決勝前には「トイレで泣いてましたからね」という原口。
「プレッシャーもあるし負けたくない気持ちもあって。負けたらどうしようって考えちゃうんですよ。(出場選手は)みんな同じくらい強いから」
そしてライバルである白鳥にエールを贈ることも忘れなかった。試合後「来年やりましょう」と語ると、一夜明け会見ではこんなコメントを残している。
「白鳥くんと決着をつけたい。僕が見てきた白鳥くんはあんなもんじゃない。僕は待ってるので。直樹くんにリベンジして強くなって挑戦してきてほしい」
単に自分が勝てばよしとするのではなく団体を背負い、ライバルの存在も重視する。原口は“観客目線”を持ったチャンピオンだと言えるだろう。伊藤代表曰く「RISEのエースというものを明確にしてくれた」。大会の解説を務めた那須川天心は、原口に「狂気」を感じたとツイートしている。闘いでも言葉でも、原口はこれからのRISEを引っ張っていくことになるだろう。
文/橋本宗洋