初の順位戦A級で絶好調“西の王子”斎藤慎太郎八段が選んだ相手を「見ない」という作戦
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 将棋は無言なれど、盤を挟んで会話するとも言われるが、相手が強大であるほど気圧されることもある。「オーラを感じた」「迫力がある」と思った時点で、形勢は少し不利になっているかもしれない。その状況を作らないようにしているのが、端正なルックスと棋力から“西の王子”と呼ばれる斎藤慎太郎八段(27)だ。今期から初参戦となった順位戦A級では、並み居る強豪相手に無傷の4連勝で単独トップ。4回戦では、過去1勝5敗と負け越していた羽生善治九段(50)からも勝利を収めた。意識しない方が難しい相手ばかりだが、斎藤八段に聞くと「ただ盤面に集中できる」スタイルを追求しているという。

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 無傷の4連勝という結果に「これからの相手もずっと厳しいですし、(前年成績を元にした)順位も一番下。必ず残留できる5勝目を見て、その先を見たいと思います」と、丁寧な受け答えが印象的な斎藤八段は、名人への挑戦権について語らず、目の前の1勝に集中する。

 将棋界のレジェンド・羽生九段との戦いでは成長も感じられた。「先入観をかなり変えようと思いました。この形はこれしかない、というのはやめようと。いろいろな手を候補に入れながら、変わった手も選べるようになってきて、幅が少し広がったかなと思います」と、将棋において懐の深さを身につけた。「囲いを崩すような手を、それほど恐れずにできるようになったのは、少し成長かなと思います。最近はいろいろな将棋もあるので」と、型にとらわれない戦いでも、勝ちをもぎ取る力強さもついてきた。

 指し手の研究もさることながら、精神面は重要視している。相手が強くなるほど、なおさらだ。「対戦相手に対しての感情といいますか、どなたが相手でも最善手を指すことを追求するのが、自分に合っていると思います。そこに恐れが出てしまうのはよくない状態。日々の過ごし方でそうなることもあるので、ただ盤面に集中できるスタイルになるような過ごし方をしたいですね」と、細かく説明した。

 もちろん相手の棋風、戦法など、対局に必要な情報収集は抜かりないようにする。ただ、それ以外の情報は、むしろ戦いの邪魔になることもある。羽生九段がタイトル99期、永世七冠のレジェンドであっても、順位戦A級の上で待っている渡辺明名人(棋王、王将、36)がタイトル26期であっても、天才棋士・藤井聡太二冠(18)の通算勝率が8割を超えても、盤上にある駒の行動範囲に何か影響を与えるものでもない。将棋は将棋。そう集中することで、相手から必要以上なプレッシャーを感じることもない。

 “鬼の棲家”と称されるB級1組から、神々が集まりし場所とも言うべきA級に上がり、そこでも輝く斎藤八段。ただ、その神々は目に映さず、じっと盤を見つめて戦い続ける。

ABEMA/将棋チャンネルより)

王位戦 予選 斎藤慎太郎八段 対 石川優太四段
王位戦 予選 斎藤慎太郎八段 対 石川優太四段