先月29日に都議会・都民ファーストの会が打ち上げた、新型コロナウイルス対策の罰則付き条例案。対象となるのは、明らかな感染が疑われながら正当な理由なく検査を拒否した個人、外出自粛要請などに反し他人に感染させた療養中の感染者、そして休業要請や時短要請などに従わず一定人数以上の感染を発生させた飲食業など事業者。条例に違反した場合、それぞれ5万円以下の行政罰を科すという。
しかし、この全国初の罰則付き条例案は物議を醸している。インターネット上では、「海外でも罰則あるし賛成」「誰が感染させたとかどうやって特定するのか」「感染者の差別を助長しないか」などの声。この提案に小池都知事は「(都民ファーストの会が)それぞれの地域で色々な声を聞いている。それを求めている都民の考え方も反映しているのではないか」との見方を示した。
新型コロナ対策の特別措置法では、休業要請や時短要請はできるが、強制力はない。また、都の新型コロナ対策条例も自宅療養中に外出を控えることや必要な検査を受けることなど、いずれも努力義務で罰則はないのが現状だ。
新型コロナ対策に罰則は必要なのか。16日の『ABEMA Prime』は、推進派の都民ファーストの会・伊藤悠都議と反対派の自民党・川松真一朗都議を招き議論した。
■伊藤都議「迷惑行為だと認識を」 川松都議「魔女狩りになる」
伊藤氏は今の感染状況について、「第2波以降かなり新規感染者が増えるのではないかと思われていた中で、皆さんの努力のおかげで多くの部分では抑えられていると思っている。そういう意味では、GoToも始まり経済活動をこのまま元の状態にできる限り近づけていくということに、私たちはまったく反対ではない」とした上で、罰則付き条例案の趣旨について次のように話す。
「そうさせていくためにも、一部の迷惑行為者に徹底的に自制を促し、抑えていく必要があると思っている。例えば、コロナと診断されて入院あるいは自宅療養していただかなければならないのに、わざわざ飲み会に行って感染させてしまうというのは迷惑行為だ。罰金を科すことによって、むしろそういう迷惑行為を起こさないということをしっかり認識していただくということ。経済を止めないこと、第3波を起こさせないこと、そして極端な迷惑行為者をこの条例を通じて皆さんに認識していただくということが大きなテーマだと思っている」
一方、条例案に反対の立場の川松氏は、感染経路が特定できないことを問題視する。
「極端な事例に向き合うのは当然だが、改めて条例を作るより傷害罪や威力業務妨害などの現行法で対応できる。この条例案で一番怖いと思っているのは、誰が誰にうつしたか特定できないこと。それなのにこういう条例を作ると“魔女狩り”になったり、東京都の人権部で言っている『コロナ差別をなくしていきましょう、止めていきましょう』ということに逆行するのではないか。いきなり飛び越えた条例を作るのではなく、感染が判明した人が外に出た瞬間に何か注意を与えるとか、指示や改善に従わなかった場合に次のステップにいくような条例にしていかなければ、建て付けが良くない。逆に治安が悪くなるのではないかという心配をしている」
罰則付き条例案には、「“この人が感染させた”と証明するのはかなり難しい」「陽性が出た人が必ずうつしているとも限らないのに、『クラスターになったから』とまったく関係ない人を罰するかもしれない」という懸念の声があがる。
これに伊藤氏は「“罰則付きコロナ条例”というタイトルにかなり誤解されている方もいると思うが、感染させたら罰金をいただくということを目的としているわけではない。感染してしまうのも感染させてしまうのも、どちらも被害者だ。本来、保健所に行ってPCR検査を受けて“コロナです”と言われたら、感染法上は入院措置。しかし、それだと医療が逼迫するので自宅療養になっている。ただ感染症法の中で、入院措置に代わる自宅療養における義務が定義されていないので、私たちはそこに網目を入れる。人権侵害だと言われることもあるが、普通はコロナだと言われてわざわざ飲み会に行くことはないと思う。ただ、一部にいるそういう方には罰金がかかるくらいの迷惑行為だということを、この条例を通じてしっかりと認識していただきたい」との考えを述べた。
一方で、2ちゃんねる創設者のひろゆき(西村博之)氏は「病気にかかった、感染したという証明が難しい問題で罰金にするのではなく、“あなたはコロナもしくは何かの伝染病にかかっている。もし病院を出たら罰金だ”というルールにすればすっきりする」と指摘する。
川松氏は非常に大事な論点だとし、「これは感染症法と一緒に考えていかなければならない。感染症法では、2類感染症で自宅でもいいという判断で、1類感染症でかなり厳しくなるわけだが、科学者たちが(新型コロナを)1類に入れていないという現状の中でこれを見つめていかなければならない。それと同時に、“自宅にずっといてくれ”あるいは“お店を休業してくれ”という時には、ヨーロッパのように経済補償とセットで考えていかなければならない。この条例だけポンと出てくるから私はおかしいと思っている。やるのであれば、色々な営業補償など周りのことも含めた環境整備が大事だというのが私の考えだ」と述べた。
■海外と日本の差 罰則規定はどうあるべきか
海外の対新型コロナ罰則規定を見てみると、韓国では隔離期間の外出に対し懲役刑があるほか、11月からは公共の場でのマスク未着用に罰金が課される。イギリスでは、7人以上の集まり禁止や隔離義務違反があり、約13万5000円から最大135万円の罰金。フランスは夜間外出禁止に公共の場でのマスク未着用で約1万6000円の罰金が課される。
また、国内で感染爆発に繋がりかねない事例もあった。大阪で8月、療養施設の感染者が職員の制止を振り切り外出。9月には東京の病院で医師ら7人の感染判明から患者含む40人が感染し、今月は埼玉で稽古中のミュージカル劇団で集団感染が起き出演者・スタッフら62人が感染した。
しかし、川松氏は「クラスターが出たことが悪いのではない」と話す。「飛沫を防ぐように距離を取っていたとか、あるいはちゃんと手洗い・消毒をしていたとしてもクラスターになってしまうところがある。これで感染させたら罰則ということになってしまうと、人々が委縮して日本が心配になってしまう。ダイナミックな議論になっていないから、本質的な解決として違うのではないか」。
また、会社四季報センター長の山田俊浩氏は「罰則と言っても5万円未満。路上で喫煙した場合なども罰金を取られるが、金額的には非常に小さいということは1つ思う。なので、やってしまう人はやってしまうのではないか。抑止という意味では分かるが、感染させたらというよりは、出かけたらというような外形的な基準でやらない限りはちぐはぐだ。5万円取るというのは交通違反の“ネズミ捕り”のようなものであり得るが、これは噛み合いが悪い気がする」との見方を示した。
伊藤氏は、病院から出たら罰金を課すような考えには理解を示す一方で、「日本の場合は医療が逼迫したということもあって自宅療養を認めたが、例えば一人暮らしの方で10日分の食料があるかというとなかなか難しい。現実問題、外出して即罰金となると生活が成り立たないという議論にすぐになると思うので、国の今の取り組みに応じた条例や法律がなければならない。ただ、本来これは感染症法でやってもらう話だと思う。感染症法の中で、就業規制に対しては少なくても罰金刑がある。本当であれば外出に関してもあって然るべきだと思うが、自宅療養といったことを想定していなかった。なので、少なくても都議会でできることは何だろうかと。いきなり外出したから罰金、あるいは懲役というのはいき過ぎだろう」と話す。
ひろゆき氏が「台湾の自宅療法の例だと、役所の方が毎日食べ物を家に届けてくれる。外に出なければならないと事情があることを相談できる窓口を置いて、その代わりに食糧や必要なものは全部都が税金で出すという方がよっぽどスムーズだと思う」と指摘すると、川松氏は「それは自治体によってはやっていて、私の地元の墨田区も届けるようにしている。だから、現実的な路線でルールを作った方がいい」とした。
(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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