「振り返る間もなく、早かったなというのが私の率直な感じだ」。
発足からおよそ1カ月が経過した“国民のために働く内閣”こと菅義偉内閣。この間、“未知数”と言われた外交面ではトランプ大統領を始め各国首脳との電話会談を実施。現在は初の外遊中だ。一方、内政面では“脱ハンコ”とデジタル庁の創設準備、さらに携帯料金の値下げや不妊治療への保険適用など、キャッチーな政策を次々と打ち出している。
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■「イメージしやすい問題を挙げていったことが奏功」
同日夜のABEMA『ABEMA Prime』に出演した、菅総理を議員初当選の頃から取材してきた丸谷浩史・日本経済新聞ニュース・エディターは、「すごく二面性のある人だ。笑うとかわいらしいという人もいるが、見ていて怖いという人もいる。ものすごくドライで機能的なところもあれば、義理人情を大事にする面もある。そういう複雑な要素が集まった人。昔の日本人の部分と、ものすごく新し物好きのミーハー的な好奇心が合わさった人でもある」と話す。
そんな菅総理の掲げる政策について丸谷氏は「菅さんの性格がよく出ていると思う。政務官をやっていた頃からそうだったが、全てが個別具体的で、抽象的な話がほとんどない。みんながイメージしやすい問題を挙げていったことが、今のところ功を奏しているのではないか」との見方を示す。
「大言壮語しない、美辞麗句はないということがあるので、よく“ビジョンがない”と言われる。やはり仕事を実感してもらうためには、具体的なものでなければならないということだ。携帯料金の値下げは、官房長官のときにあれだけ言ってもなかなか下がらなかったと感じていると思う。不妊治療の保険適用などもそうだし、オンライン診療も時限措置で終わりそうになってしまう。そこには忸怩たる思いもあったと思う。また、手広いように見えて、実はデジタル庁などはいわゆる骨太の方針にも一部が入っていて、全く新規に取り上げたものではない。霞が関のスケジュールに乗りかかったことをやっているという面もある。そして、その先にあるのは極めてシンプルだが、最も難しいこと。それはコロナの感染を止めることと経済を両立させること。外交では米中対立の中で日本の立ち位置をちゃんと示すことだ」。
また、これら政策を実行に移すための閣僚にも注目が集まっている。
「いわばPM、プロジェクトマネージャーに年限を区切ってミッションを与え、責任を負わせる。ビジネスの世界では珍しくないことだが、予算という日程に縛られがちな政治の世界では、イレギュラーな時期にこうした政策を打ち出すということは、あるようでなかった。やはり7年8カ月も官房長官をやっているので、役人に抵抗をされないためにはどうしたらいいのか、その辺の勘所がよく分かっているということだと思う。また、非常にせっかちな人で、河野さんが、“あれどうなっている?”と総理に聞かれて、“1週間しか経っていませんよ”と答えたことを明かしていた。大臣がやる気になりさえすればなんでもできるというのがモットーなので、閣僚も大変だと思う。ゆっくりのんびりやろうというのは許してもらえない。ただ、民間企業のプロジェクトであれば、1週間経って“あれはどうなっている?”と聞かない方がおかしいし、ただぼーっととしていたら“君、何やっているの?”という話になるだろう。無理はさせないが、ぎりぎりまでスピードを上げてやってくれという思いがあるのだろう」。
■「“支持する”が“支持しない”の倍以上の56%もある。まだまだ磐石だ」
他方、成長戦略会議のメンバーには新鮮味が無く、とりわけ元経済財政担当相の竹中平蔵氏が入っていることについての批判の声も少なくない。丸谷氏は「たくさんいる中の1人、という感じがしている。他の人についても、かつて教えを乞い、一緒に政策をやってきた人との縁を大切にし、意見を聞いているということで、特にこの人をメインにやろうということではないという気がする」とした。
また、日本学術会議への任命拒否問題では、「総合的、俯瞰的活動を確保する観点から判断をした」との説明を繰り返すばかりで、来週26日に召集される臨時国会では野党からの厳しい追及が予想されている。19日に発表されたANN世論調査によれば、支持率は発足直後の62.3%から56.1%と、6.2ポイントのマイナス。学術会議の説明についても、「納得しない」と答えた人が6割以上に上っている。
しかし丸谷氏は「菅さんのキャラクターから言って、信じられないくらいの高さだった。小泉純一郎政権や政権交代したときの民主党政権と比べても、ここまで受けるかなという感じだった。今回下がったとはいえ、“支持する”が“支持しない”の倍以上の56%もある。まだまだ磐石だ」と話す。
「下がった6.2%の中には、学術会議の問題も入っていると思う。説明に“納得しない”が62%なのが、それを表している。一方で、“学術会議のあり方を見直すべき”が64%となっているのも面白い。総理には説明責任、学術会議には組織のあり方。両方ともちゃんとやってほしいというのが一般的な世論の声ではないか」。
次の任期までは1年。それまでに衆院の解散総選挙に打って出るのであれば、結果を示さなければならない。
「“これは工程表上、ここまで来たので10点で、こっちは7点。これは申し訳ないが、できなかった。これらを総合していかがでしょう”と聞いてくるのだと思う。もちろん、支持率が高いうちに、と思っている自民党の人も多いと思うが、やはりこれからコロナがどうなるか分からない。それから、仕事をするという意味でも、1月時点では補正予算しか通っていない。その点で、私は年明けの解散の可能性は低いのではないかと思う」。
また、“弱点”については「やはり自民党そのものや、派閥という存在そのものだと思う。変わらなくて済むのなら変わりたくないということで、新しいことをやる時には、ものすごく抵抗を受ける。また、ご本人は趣味が仕事みたいな方なので、どこかで休憩するとか、チェンジ・オブ・ペースをされた方がいいかのではないか。総理日程を見るとびっくりされると思うが休みがない」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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