暴走族あがりの元Krush王者と現職官僚が繰り広げた真っ向勝負の殴り合いは、大激戦の末に官僚がボディブローで悶絶KO負け。しかし、日々の激務の中で自分らしさと強さを追求し、身をもって示した「働き方改革」に反響の声が多く寄せられている。
10月17日に後楽園ホールで開催された「Krush.118」におけるベストバウトとの声が多く聞かれた鈴木勇人と松本篤人の対戦。最後は鈴木の強打に屈したものの、東大卒の現職国家公務員、"戦う官僚"こと松本が魅せた激闘ぶりが反響を呼んだ。
36歳にしてキックボクサーと官僚という2足のわらじを履く松本。誰も通ってこなかった異色の道だけに試合を放送したABEMAの視聴者からは「国家公務員でKrushセミファイナルって凄いな」と驚きの声が。その一方、「公務員って副業していもいいの？」と疑問の声も聞かれたが、松本本人は「少額のファイトマネーであれば副業にはあたらない」という“職場公認”でリングに上がっている。
実況解説でも紹介されたように本業の忙しさ故に練習は週に1～2回、大会も年1回ほどと出場機会は限られているが勝率は圧倒的。Krushでは2015年から引き分けを挟み5連勝で、鈴木戦を迎えることになった。今回もパンツの後ろには「働き方改革」の黄文字がデカデカと掲げられ、目を引いた。
鈴木戦では松本の試合運びにも注目が集まった。独特のフットワークと距離感、強打よりも“コツコツ速く”当てることで、相手のリズムを狂わせる"弱のパンチ”には「松本の変なリズムやりずらそう」「松本距離がいいね」との声も。
2ラウンドに入ると、鈴木のギアが一段上がる。松本を仕留めようとする強打が顔面を捉えはじめるが、対する松本もコンパクトなパンチとヒザで応戦。下がらずにどんどん前に出ていく強気な姿勢に「公務員、結構やるな」「打たれ強いわ」と鈴木の圧勝ムードに変化が。解説を務めた石川直生も「（松本選手は）気持ちの強さだけでなく、細身だけど体が強い」と話し、松本の特徴を貰っても倒れない体質と説明した。
鈴木の強打にも倒れず、心も折れない松本の奮闘ぶりに当初は「これは厚労省の広報活動です」「KO負けしたら本業に支障が出るぞ」など冷やかしの声も聞かれていたが、それらは次第に影を潜め「よく出る手数」「相当練習しているな」「なんか感動するな」「頑張れ！」など、松本に向けられる声援が大半を占めていった。
3ラウンド、鈴木の猛攻に耐えていた松本だが、最後はボディに強烈な左ストレートを捻じ込まれ悶絶…苦悶の表情を浮かべながらリングに沈み、KO負けを喫した。惜しくも力尽きた松本だったが、戦前の予想を覆す堂々たる戦いぶりに視聴者からは「よく耐えた」「仕事しながらよくこんなプロの試合に出るよな」「週に1～2の練習で鈴木とやり合うのか…」と称賛の声が、さらに「月曜日、仕事に行けない」「仕事に支障が出ちゃう」とダメージを心配する声も相次いでいた。
元Krush王者の鈴木と壮絶に殴り合い、最後はボディでリングに大の字。試合前の会見でも二足のわらじでKrush参戦を続ける理由について「格闘技が本当に好きでそれに尽きる」と語った松本。身を持って示すには激しすぎる"働き方改革”だが、堂々と打ち合い散った生き様が観る側の心を掴んだのは確かだろう。
苦戦するも最後は豪快に松本をマットに沈めた鈴木は「松本選手はすごくタフで打たれ強くて、しんどい戦いになりました。試合前と180度印象が変わりました。正直もっと楽に勝てると思っちゃってたんですけど…実際に向かい合うとやりづらくてタフで、めちゃくちゃ強かったと思います。今日の試合で自分の悪いところが分かったので、初心に帰って一から練習してトップに食い込めるように頑張っていきます」と松本の健闘を称え、さらなる高みを目指すことを約束した。
