新型コロナウイルスの感染対策のため、無観客で実施された陸上日本学生対校選手権。今回、現地で観戦できない家族やファンのため、ネットでのライブ配信が実施されたが、その応援メッセージ欄に多数の“性的メッセ―ジ”が寄せられたことが問題となっている。
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日本学生陸上競技連合によると「チェック役はいたが対応しきれず」「学連の理事には弁護士も含まれており、対応は総務委員会が行っている」と説明している。
女子アスリートを性的目線で撮影した写真の拡散が問題視される中でのトラブル。日本学生陸上競技会連合では、撮影に関しては申告を必須としており、前方・後方からの撮影や、競技と関係のない目的での身体の一部のアップ撮影などを禁じていた。
一方、今回の問題には、いわばネットのコメント欄への投稿の是非。出場した選手たちからは「親とか見ていたら本当につらい」「知り合いに指摘され、被害に気が付いた」といった声が上がり、会終了後、主催者による会議で指摘されたという。
芸能人やプロスポーツ選手の肖像権の問題を扱っているレイ法律事務所の河西邦剛弁護士は「書き込みそのものが違法になるのかどうか、規制できるのかどうかというところが1つの境目になってくる。今回、性的なものが多かったということが問題となっているが、それはまさに感想に当たる。選手の人格を否定したり、事実ではなかったりといった名誉棄損や侮辱に当たれば刑事・民事の法的責任追及ができるが、基本的には法的な規制はなかなかしにくいのが現状だ」と説明する。
その上で、「今回は対象が学生スポーツというところもポイントだ。これがプロスポーツ選手の場合、“見られる”ことで収入を得ている部分もある。しかし学生の場合、純粋に競技をやっているだけなので、そこはコメント欄を解放しないとか、削除対応をするなど、学校や陸連といった管理者側の配慮が必要だと思う」との見解を示した。
また、ネットの投稿そのものの問題点について、「表現の自由と、自分の発言に責任を持たなくてもいいというのは別の話だ。匿名だから何を言っても良いというのも、表現の自由とは無関係だ。最近では政府も動いており、発信者情報の開示制度によって、書き込んだ人物の特定がしやすくなる方向に向かっている。これからは“匿名だから”という認識を改め、書き込んだものについては自らが責任を負うという意識を共有していくことが必要だ」と指摘した。
リディラバ代表の安部敏樹氏は「アマチュアスポーツだったとしても、宣伝効果を狙って企業がスポンサーするパターンもある。しかし、画面に映る学生自身はビジネスの議論の外に置かれているのが実態だと思う。そうである以上、運営側が厳しく取り締まる必要がある」と指摘。「学生の場合、セクシーである必要は全く無いと思う。人によっては際どい格好に見えてしまうのなら、ユニフォームを変えるといった対応も必要なのではないか」と問題提起。
「Black Diamond -from 2000-」のリーダー・あおちゃんぺは「こういうことは絶対に起きることだと思う。書き込みを禁止したり、スクショできない設定にしたりすることが大切だ」とした上で、「私は“露出狂”のような格好をしているので、よく痴漢に遭う。そして、“そういう服装をしているからだ”と言われることもある。でも、どんな格好をしていたとしても触られる筋合いはない。アスリートの方々だって、どんな格好をしていようが性的な写真を撮られたり、書き込みをされたりする筋合いはないし、被害者に原因を押し付けるのはおかしい。やはり撮る側、書き込む側が悪いという方向にしていかなければいけない」と憤る。
また、ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「例えば髪の毛や指先に性的なものを感じる人もいるし、LGBT的なものを含めて考えれば、何が性的なのかということには非常に多様性があるわけで、境界線を引くことは誰にも分からない。むしろアマチュアスポーツだろうが何だろうが、健全なセクシュアリズムについては否定する必要はないのではないか。もちろん誹謗中傷や攻撃を含むものは法的に対処すべきだと思うが、健全なセクシュアリズムそのものを否定するのは、昔のPTAが漫画を批判していたようなものだ」と話す。
「画像やテキストが一度SNSなどにシェアされてしまえば、データとしてありとあらゆるところに残ってしまうというのがインターネットだ。4K、8Kの時代になれば、スクショであってもさらに高画質で保存することができるようになる。そうしたことをいかに引き受けるのかという問題だと思う。ただ、電車の中で痴漢行為をしている人に対して、周りで“もっとやれ”と囃し立てたり、加勢したりする人はいないはずだ。しかし、ネットになるとそうではなくなる。そう考えると、現実世界で恥ずかしいことはネットでも恥ずかしいことだという抑止力が必要になってくる。何千人、あるいは何万人に1人の人物の恥ずかしい行為を“やってはいけないことだよね”と皆が思い、注意できるという、ある種の“文化”をどう育てるかという問題だと思う」。
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