新型コロナウイルスの影響を受け、困窮する人々を救うために立ち上がった、あるプロジェクトが話題になっている。プロジェクトのヒントになったのは、日本の有名な昔話のひとつ「わらしべ長者」だ。
【映像】100円の「赤い糸」が大阪都市部の「一戸建て」になっちゃいました!
「わらしべ長者」は、とある貧しい男が1本のわらを元手に、人々と物々交換を繰り返し、ついには大金持ちになるという物語。そんな昔話のような出来事が、2020年、令和の日本で起こっている。
きっかけになったのは、新型コロナウイルスの影響で困窮する人々を支援するため、大阪市のNPO法人「みらくる」が、立ち上げた「赤い糸プロジェクト」だ。オンラインで物々交換を繰り返し、手に入った品物を最終的に換金して寄付するという。身近な昔話をモデルに、寄付の裾野を広げようと試みている。
プロジェクトの発起人となったのは、「みらくる」の理事長を務める吉村大作さんだ。いったいなぜ、このプロジェクトを立ち上げたのか。
「赤い糸プロジェクトは、ただ単にお金を集めようということではなくて、みなさんに注目してもらえるように“わらしべ長者”で物を大きくしていき、最終的に手にしたものをNPO法人に寄付するような形で始めました」
100円ショップで買った1本の赤い糸から始まったこのプロジェクト。滑り出しは、決して順調とは言えなかった。
「電話で交換相手を探したりしましたが『なんだそれ』や『うちはそんなサービスやってない』と言われ、あんまり話を取り合ってくれないっていうのがほとんどでした。現実は甘くないなと実感しました」
なかなか物々交換ができず、それこそ、わらにもすがる思いだった吉村さん。しかし、ある日 “転機”が訪れる。鹿児島県のコーヒー豆屋さんの店主に企画を一生懸命説明した結果、コーヒー豆と赤い糸を交換してくれることになった。
「アマビエコーヒーと言って、疫病退散を祈願して、その売り上げがコロナに対する支援になるんです。金額にすると大体9000円弱くらいですね。めちゃくちゃうれしかったですよ。やっと一歩踏み出せたって。感謝しています」
さらにこのコーヒーを東京の漫画制作会社が、自身の物語を漫画化してくれる「オリジナル漫画制作権」と交換してくれることに。その後、元プロ野球選手の木村昇吾さん(39歳)が「オリジナル漫画制作権」と“自身の経験”を交換してくれた。
現在はクリケット日本代表として、日本だけではなくスリランカやオーストラリアなどでプレーしている木村さん。木村さんは15年間のプロ野球生活の後にクリケット選手に転身。世界最高峰のプロリーグ、インディアン・プレミアリーグを目指し、日々挑戦を続けている。
「僕はライオンズ時代のユニフォームと、野球の技術指導など、自分の経験を交換させていただきました。やはり実際にお会いして話をする大切さをいろいろな人が感じられていると思うので、人とのつながりを感じられる良い企画だなって思っています」
その後、色鉛筆、イヤホンマイクと形を変えていき、迎えた6回目の取引。赤い糸で結ばれた“善意のつながり”はまさかの展開を迎えた。
「月額6万5000円相当の家賃の物件を10年間最大で無償で借りられる権利をいただきました。僕自身も驚きました。まさかって」
なんと「いと」が「いえ」に変わったのだ。イヤホンマイクが大阪都市部の一戸建てを最大10年間無償で借りられる権利に変わり、経済価値は最大780万円(※6万5000円×12カ月×10年)になった。まさに令和の「わらしべ長者」となった吉村さん。現在はこの家をお菓子のアメ270個と交換し、今後さらに「善意の輪」を広げたいと話している。
「みなさんが手に入れたものを社会のために還元している流れが起きている。これは最初に想定していませんでした。270個のアメは、みなさんが社会のために何かしたいっていう気持ちと交換したいと思っています。ただのわらしべの話ではなく、今回は本当に善意の輪が広がっていく。そんな令和の新しいわらしべになっているんじゃないのかなと思います」
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