「著作権の認識が薄く、想像力が働いていなかった」炎上した元銭湯絵師見習い・勝海麻衣さんと考える“パクリ”問題
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 絵画や彫刻、映像作品、さらには広告デザインまで、度々論争を巻き起こす、創作物の“パクリ”問題。

 モデル、銭湯絵師見習いとして注目を集めていたアーティストの勝海麻衣さんは昨年、イベントで描いた2匹の虎ののライブペインティングが既存の作品と構図やモチーフにおいて酷似していると指摘され炎上。所属事務所が「作品の構図をそのままに無断使用して制作を行った」として謝罪した。

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 今年4月、過去の過ちを胸に活動を再開した勝海さん。20日の『ABEMA Prime』に騒動後初めてメディア出演した勝海さんは「著作権のことを知っていれば当然分かることだったが、認識が浅く、色も着けているから大丈夫だと思っていた。“これをしたらどうなるか”ということまで想像力が働いていなかったと思う」と振り返る。

 「人生初のライブペインティングだったし、だ自分のスタイルを確立できていなかった。色々な作品を見て“当てはめる”じゃないけど、“今回はどういうのが合うかな”と…。動物が好きだったので動物を描くことは決めていたが、(参考にした作品が)エネルギッシュだったので、“これができたらかっこいいでしょ”と。それで“お守り”じゃないが、作品を握って制作に挑んだ。直接トレースはしていないが、こういうイメージだったら喜ばれるだろうなと構図を意識し、参考にして描いた。問題になってから事の重大さに気づいて、“大変なことをしてしまった”と思った。自分の立場をわきまえず、まだ学生の範囲内というか。本当に浅はかだった。大学でもオマージュやパロディの勉強はしていたと思うが、恐らく真剣に取り組めてなかったのだと思う」。

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 勝海さんは騒動後、参考にした作品「HUM」「A」の作者で、イラストレーター猫将軍さんの元へ謝罪に出向いたという。取材に対し猫将軍さんは「正直言うと、当初は怒っていた。ただ、私がいる関西へ謝罪に来てくれた。そこで彼女の絵描きへの熱意も感じた。今は怒りの感情はなく、再起を応援したい。これから自分の色を出して頑張ってほしい」とコメントしている。

 猫将軍さんとの対面について、「寛容に許してくださった」と、涙ながらに語った勝海さん。「休学中ではあるが、学生として著作権のことは引き続き勉強して、問題を起こしたことを払拭できるくらい良い作品を作るために、これから一歩ずつ歩んでいこうと思う。この場を出させていただいたことに感謝しつつ、これからも頑張っていこうと思う」と語った。

■インスピレーション、パロディ、オマージュ…法的に問題となる境界線は?

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 一方で、インスピレーションやパロディ、オマージュと呼ばれる、模倣に当たらないとされるケースもある。

 アート分野の法務の第一人者である小松隼也弁護士は、法的な観点から「パッと見て特徴的だと感じる部分を真似てしまうことで著作権侵害に当たるという考え方になっている。例えば『鬼滅の刃』の主人公のアザや髪型、攻撃シーンは独創的と言えると思うが、服の市松模様はありふれたものなので、そこは真似ても大丈夫だろうということになる。また、真似された側の作家さんが“問題ないし、面白いからいいんじゃないか”ということであれば、法的に問題はない」と説明する。

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 その上で、勝海さんのケースについては「例えば神社の狛犬を真似た場合なら、ありふれていて創作性はないので著作権侵害にはならないと考えられるし、猫将軍さんの作品の虎の向きや腕などの構図がありふれた表現ではなく、創作性が認められれば、無断で真似ることで著作権侵害に問われる可能性はある。仮に勝海さんの描いた虎が人間のようになっていて正拳突きや回し蹴りしているというようなことであれば、創作的な部分があるとして法的にはOKということになるのではないか」とした。

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 ただし、ネット上には「自分で生み出せないのはクリエイターじゃない」「他人が作ったモノにただ乗りしているだけ」「罪悪感ないの?人としてのモラルを疑う」と、道徳やモラルの観点から厳しい指摘が寄せられることもある。

 小松弁護士は「例えば東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムの問題は、専門家でも意見が分かれるとことだと思う。ただ、アルファベット1文字から作られたシンプルな表現なので、非常に特徴的でなければ創作性はないと考えられる。確かに同じ要素のある作品はあったが、色が違うし、赤丸が付いていてとなってくると、特徴的な部分が一緒だとは言えないのではないかという考え方もあると思う。このように、権利侵害が成立しないのではないかと考える著作権法の専門家も多い一方、世間の目は非常に厳しいということはある」とした。

■「“模倣はいかん”と言うだけで文化的には何も進歩しない」

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「オリジナリティなんてどこにあるのかわからない。文章でも絵でも音楽でも、全てが模倣から生まれて成り立っていると思う。模倣に新たな要素を加えることでオリジナリティが出てくるし、模倣そのものがムーブメントになることもある。インターネットで繰り返し広がっていく状況はミームと呼ばれているが、例えば面白い虎の絵があった時に、みんながマネしてどんどん二次創作的に描いていくことで、一つの新しい文化になるということも起きうるわけだ。それは決してネガティブな側面だけではない」と話す。

 「ただ、今の時代は習作やイベントで一瞬だけ消費されて終わるものまでがアーカイブとして残り、評価される時代だ。勝海さんが炎上し、このような形でメディア露出をし、そして評価されていく。もしかするとそこまでがトータルで新しい作品づくりに繋がるという言い方もできるかもしれないし、そういう時代に我々は生きているということだ。それを前提に語り、中には面白がる度量がないければ、ただ“模倣はいかん”と言うだけで文化的には何も進歩しない」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

元銭湯絵師見習い 勝海麻衣さんが生出演
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