2018年のロシアW杯でベルギー代表が披露した高速カウンター。日本代表初のベスト8進出という国民の夢を打ち砕いたあのゴールは、今でも多くの日本人の記憶に残っているだろう。ティボー・クルトワからボールを受け取ったデ・ブライネが前線へと一気に運び、右のトーマス・ムニエを経由してファーサイドのナセル・シャドリが決めたゴールは、日本からするとわずか“9秒の悲劇”だった。
アシストを決めたムニエは後に、「1000年に一度のゴール」と振り返ったという。そんな高速カウンターが、再びピッチで見られるとは……。Fリーグを戦うシュライカー大阪が奪ったゴールは、ベルギーを彷彿とさせる素晴らしいカウンターから生まれた。その間なんと「5秒」の出来事だった。
■わずか5秒でピンチが歓喜に変わる魅惑の競技
「カウンターうっま!」、「綺麗すぎる!」
試合を放送したABEMAのコメント欄は、驚愕のゴールを讃えるコメントで埋め尽くされた。
と同時に、解説の元日本代表・稲葉洸太郎氏が「お手本のような3対1の崩し方」と絶賛したように、ただ速いだけではない、緻密に計算され尽くされ、なおかつ選手の技術が結集したカウンターだったのだ。
自陣の深い位置でボールを奪った相井忍が、デ・ブライネのように一気に相手ゴール前へと駆け上がる。両サイドには“三本の矢”のごとく味方選手が相井を追い越し、典型的な3対1+GKの状況をつくり出した。
必死に追いかける相手をよそに、相井のパスを受けた右サイドの水田貴明がファーへ正確なパスを送ると、走り込んだ齋藤日向が冷静にゴールへと押し込む。ボールホルダーが中央のレーンを走り、両サイドから味方がアタックする。サッカーでもセオリーとされる、まさに全チームが真似すべきプレーだった。
100m以上の長さがあるサッカーと比べて、フットサルのピッチサイズは縦40mしかない。一瞬で状況が移り変わるだけに、ゴールを奪うために一つの判断ミスも許されないのだ。的確に状況を把握し、カウンターを仕掛けた3人が寸分違わずイメージを共有したシーンは、まさに「1000年に一度のゴール」を思わせた。
わずか5秒で、ピンチが歓喜に変わる。一般的に、フットサルと言えば華麗な個人技にフォーカスされがちだが、こうしたカウンターの場面にも競技の魅力が詰まっている。緻密な戦術と戦略、細かい判断と技術の駆け引き。そんなハイレベルな攻防が日常的に繰り広げられる舞台、それがFリーグだ──。
文・舞野隼大(SAL編集部)
写真/高橋学