1人の男性が現れ、特徴的な歩き方でキャンパスを進んでいく。画面には達成率を示す数字やHPゲージなど、どこか見たことのある表示が…。
実はこれ、都内にある「有明教育芸術短期大学」のPR動画だ。一見ただの校内紹介動画に見えるが、“ゲームでよく見る演出”が随所に散りばめられている。在校生も協力して、フロア毎にワンカットで撮影。微動だにしない表情や壁にぶつかる動きは、まさにゲームそのものだ。
なぜ今回、大学のPRに“ゲームあるある”を取り入れたのか。三浦裕明常務理事は「コロナ禍で、通常の来校型のオープンキャンパスや説明会ができない状況が続いている。有名大学やマンモス大学と違って、我々のようなあまり名の知れていない大学だとオープンキャンパスで実際に来校してもらって、まずは学校の教育内容や先輩など雰囲気を感じてもらうことから始まる」と話す。
新型コロナウイルスの影響で思うようなPR活動ができない中、一辺倒なWEBオープンキャンパスでは埋もれてしまうという強い危機感があったという。「オンラインでもおもしろく学校紹介をできないか」。模索を続けていた時に三浦さんが出会ったのが、あるYouTuberの存在だった。
「8月ごろだったか、Twitterですごくバズった『渋谷でゲームあるある』の動画を見た時に、これでキャンパス紹介をもしできたら学校の平凡な動画とは一線を画せるかなと思って、駒沢アイソレーションさんに依頼をした」
その「渋谷でゲームあるある再現してみた」という動画がTwitterで公開されるや、「本物と見間違えた」などと大反響。30万以上リツイートされ、再生回数は現在2300万回超え。“ゲームでよく見る動き”を見事に再現し、コロナ禍の影響でいつもより渋谷駅に人が少ないことを逆手に取り、見事に世界観を作り出している。
この制作を手掛けた3人組のYouTuber・駒沢アイソレーション(がんそ、しゅんぴ、ハヤケン)が新たに作ったのが、今回の大学PR動画だった。
「ご依頼の内容が非常に斬新で。学校の方ってYouTuberに抵抗がある方が多いのかなと思っていたが、僕たちにそんな面白いことをやらせてもらえるなら『ぜひ』という形で、お仕事を受けさせていただいた」(ハヤケン)
「やっぱりワンカットというのが一番大変な部分。ロングカットになるので皆さんかなり集中して、次のカットがかかるまで撮影している」(しゅんぴ)
大学時代、ストリートダンスサークルで一緒だったメンバーが集まった駒沢アイソレーション。壁にぶつかる動きも「つま先やかかとの使い方、体重の移動のさせ方というのは、ダンサーだからこそあのクオリティーで出せたのかなと思う」と、その技術が存分に活かされているという。
3人のYouTuberならではの自由な発想は、有明教育芸術短期大学のPR動画にも反映されていると三浦さんも話す。
「エレベーターに生徒は乗ってはいけないというのが校則であるが、駒沢さんはそれを生かして『テロップで“学生は使えないみたいだ”と入れましょうよ』と。学長に入学をどうするかを問うシーンも『一発で“はい”と言わずに断りましょう』と」
大学とYouTuber、まさに異色のコラボで新しい形の大学紹介を確立させた今回の動画。三浦さんは、コロナ禍で大学がどう対応するか厳しく見られていると話した。
「コロナ禍を通して、学校のオンラインの姿勢を見て、学校が時代に沿って動けているのかをシビアに判断されているような気がしている。こういうYouTuberさんとキャンパスを使ってコラボレーションしたのは、とても好感触だなと私の中では思っている」
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