生まれる前の赤ちゃんの染色体に異常がないかを調べる「新型出生前診断」。これをどのように実施していくか、厚生労働省で初の議論が始まった。
日本で2013年に開始した新型出生前診断は、安易な中絶が増えないよう、専門家によるカウンセリングなどの要件を盛り込んだ指針を日本産科婦人科学会が策定。要件を満たす施設を日本医学会が認定している。
【映像】妊婦51%が“無認定施設”で診断、データ詳細(1分50秒ごろ~)
出生前診断には、超音波検査、羊水検査、NIPTなどの血液検査がある。NIPTとは、母体血を用いた出生前遺伝学的検査で、妊娠10~16週目に採血し、ダウン症候群の確率などを計算する診断だ。
しかし、日本産科婦人科学会が今年調査したところ、NIPTを受けた妊婦51%が認定を受けていない施設で診断を受けていたことが発覚。認可外にもかかわらず検査をしている診療所が全国で135カ所確認された。
中にはトラブルになっているケースもあるという新型出生前診断。厚労省は、これまで検査への見解を示していなかったが、こうした問題を受けて28日、検査の適切なあり方について専門家を交えた議論を始めた。
命の選別につながりかねない新型出生前診断。このニュースに慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は「正解は分からない。ただ、出産・育児する当事者たちには最終的な決断する権利があるのでは」と見解を示す。
「新型出生前診断には賛否両論ある。さまざまな議論がこれから起きていけば良いだろうし、それぞれの立場の意見は表明して良いと思う。『間違ったことを言ってはいけない』というムードがあると、なかなか議論が前に進まない。命の危険やリスクを伴って出産をする女性や、一緒に育てるパートナーである当事者には、決断する権利があるはず。それについて第三者が直接的に反対する権利はないのでは」(以下、若新雄純氏)
「例えば、新型出生前診断を受ける可能性が出てきたときに『親の都合で産む、産まないを決めるってどうなの?』と、それだけを言いすぎると、本人たちが自分の意見を言いづらくなる。例えば芸能人が妊娠して、新型出生前診断を受けて中絶したというニュースが流れたときに『ひどいやつだ』と一方的に非難するのは違うのでは。最終的に本人たちが悩んで、決断する権利がある」
議論の焦点になっているのは、胎児の“人格”をいつから認めるかだ。妊娠したら胎児は“一人の人間”になるのか。それとも出産した段階で“人間”になるのか。命の線引きは難しく、価値観は人それぞれだ。
「男性が育児に参加できないわけではないが、どうしても子供を産む女性に負担がかかりがちになる。女性がどうしたいか、一定の尊重をした方が良いと僕は思う。(新型出生前診断を受けて)悩むだろうし、葛藤がないわけじゃない」
「これはあくまで僕個人の一意見だが、出産して、この世に生まれ出てきたら、親も子どもを一人の人格を尊重して向き合わないといけないが、母体にいる間は母親が命をかけて付き合っていて、一心同体、最終的な権限は女性が持っていると思う。でも、これは僕の意見。そうやって、色んな人が堂々と『私はこう思う』と表明できるようになるべき」
女性の社会進出、晩婚化の進行に伴い、30代後半の高齢出産も増えている今。母体を考えた適切な検査の実施体制と議論が一層求められている。
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