出場選手8人中チャンピオンが5人、優勝賞金300万円、KO賞が最大50万円と破格の規模で開催されているRISE女子トーナメントが、いよいよファイナルを迎える。10月11日の1回戦を勝ち上がった選手たちによる準決勝・決勝。その舞台は11月1日の大阪大会だ。
1回戦は、実のところ“不発”ともいえる内容になってしまった。実力が拮抗していることもあってか持ち味の潰し合いのような闘いに。力を出し切ったと言える選手は少なかった。
特に悔しい思いをしたのがRISE QUEEN(女子王者)の寺山日葵だ。erikaの突進に苦しみ、右目の下を腫らしたのも印象が悪かった。延長判定3-0で勝利したものの、試合後は悔し涙を流し続けた。
チャンピオンらしい試合ができなかったと泣いた寺山に、SNSでの厳しいコメントが追い打ちをかける。
「心が折れたというか」
「いなくなっちゃいたい」
そんな精神状態になりながら、それでもコメントはすべて読み、受け止めたそうだ。チャンピオンとはいえ19歳。あまりにも酷な状況だった。だがそうしてどん底まで落ち込んで、気づいたことがあると寺山は言う。
「(前回は)RISE QUEENらしく、RISEらしくという言葉にとらわれすぎて、自分の闘い方が一切できていなかった。でも私をデビューの頃から見てくれている人たちからは、RISE QUEENらしさなんて求めてない、寺山日葵らしい闘い方が見たいと言われて」
その言葉で吹っ切れた。
「自分らしくいたほうが、自分らしく闘ったほうが周りも喜んでくれるし自分もいい勝ち方ができる」
準決勝は1回戦でも力を見せつけ圧勝したsasori。7月大会のリマッチとなる。前回は寺山の辛勝。「再戦はずっとしたいと思ってました」と寺山は言う。
「周りに何も言わせない試合をして優勝して、笑ってたこ焼き食べたいです」
潜在能力の高さは誰もが認めるところ。1回戦で悔しさを味わい、吹っ切れたことで寺山への注目度は増したと言ってもいい。
寺山は那須川天心と同じTEAM TEPPEN所属。セコンドにスター選手の那須川がいるから判定で有利にしてもらっているのだという心ない声もあるという。1回戦の後には、自分でも「またTEPPEN判定って言われちゃう」と泣いていた。本来は選手が気にする必要がないことまで気にしてしまうのは寺山の誠実さであり、SNSユーザーの罪でもある。
ただ、寺山にとって那須川の存在が大きいことだけは確かだ。
「今まで天心の背中を追ってきて後悔したことないので。那須川天心の妹分ということでプレッシャーもあるけど、それ以上にいろんなことを教わっています。天心はいつもポジティブで、天心の言葉で考え方が変わったところもある。最強の味方だと思います」
11.1大阪大会は那須川も試合がある。となると寺山のセコンドにはつけないだろう。そこでどう闘うかも大きなテーマになりうる。寺山日葵にとって、このトーナメント・ファイナルは正念場であり真の力を見せる最大のチャンスだ。