漫画『キャプテン翼』の大人気キャラ、石崎了。主人公の大空翼のよき理解者である彼の代名詞といえば『顔面ブロック』だ。相手のエース格の選手が放つ強烈なシュートを臆することなく顔面で受け止め、血潮が飛び散る。身を挺した熱いプレーには、子供ながらに心を打たれたものだ。
そんな石崎の十八番のプレーがフットサル界でも飛び出し、大きな話題となっている。
■絶体絶命のピンチで見せた気迫の顔面ブロック
顔面ブロックを繰り出したのは、湘南ベルマーレのGK(ゴレイロ)・フィウーザだ。
「ナイスファイト!!」
「あれは痛そう」
「フィウーザ石崎くん」
「ボールはともだち」
キャプテン翼の石崎くんを彷彿させるガッツあふれるプレーに対して、試合を放送したABEMAのコメント欄には、強烈なシュートを至近距離で受けたフィウーザを称える声であふれた。さらに、解説で元フットサル日本代表の北原亘氏も「顔面で受け止められるんですね」と唖然とした様子を見せていた。
それほどまでに、彼のプレーは衝撃だったのだ。
フウガドールすみだとのアウェイゲームは白熱した打ち合いとなり、第1ピリオド(前半)を終えて2-2。第2ピリオド(後半)で次の1点をどちらのチームが奪うかが、最大のポイントとなっていた。すると開始早々に湘南がピンチを迎える。ゴール正面10メートルの位置でFKを与えてしまったのだ。
フットサルは戦術的な競技であり、特にセットプレーは攻撃側と守備側の読み合いが成否を分ける。今回のシーンは、相手の立ち位置を見極めた上で湘南が3人の選手を壁に立たせ、1人はファーサイドのケア、そしてゴレイロのフィウーザがシューターをケアする形で受け止める布陣を敷いた。
逆に、守り方を見たすみだは、その陣形を攻略するためのデザインプレーを仕掛ける。左サイドの選手が逆サイドに走り、右サイドの選手が相手の動きを止め、それを見たキッカーがフリーの味方にパスを出す。すみだの狙い通りのプレーが完璧にハマったかに思われた、次の瞬間──。
「ボコっ」。鈍い音がピッチに響き渡った。
リプレイで見ると一目瞭然だが、フィウーザの顔は、ボールの衝撃とともに首ごと真後ろに吹っ飛ばされている。なんというセーブだ……。しかし、本当にすごいのはその後だ。フィウーザはプレーを続け、様子を心配したレフリーの呼びかけにも笑顔で対応。最後までピッチで気迫のプレーを連発してみせた。
そして試合は、フィウーザの大活躍もあって、5-2で勝利。普段は気さくで優しく、ナイスガイのイケメン・ブラジル人だが、試合では闘志あふれるプレーでチームを盛り上げる男、フィウーザ。見る者全てに勇気を与え、石崎くんに勝るとも劣らない魂のプレーをぜひご覧いただきたい。
文・川嶋正隆(SAL編集部)
写真/高橋学