勝利を確信していた難攻不落の王者が、一発のパンチに不覚。大逆転負けでの王座陥落、劇的決着に「まじかぁぁ」「一発で目が覚めた」「一発でひっくり返った」などネットが騒然とした。
10月30日にシンガポールで開催されたONE Championship「ONE:INSIDE THE MATRIX」のフェザー級世界タイトルマッチで、終始優勢だった王者のマーティン・ニューイェン(ベトナム/オーストラリア)が3R、タン・リー(ベトナム/アメリカ)の右フックを被弾。その一発を機に形勢は大逆転となり、ONEの顔として難攻不落だった王者がまさかのレフェリーストップで敗北、王座陥落となった。
ニューイェンとタンには、アメリカとオーストラリアと国籍は異なるものの、北米のMMAの流れを組むベトナム系選手という共通点がある。またONEフェザー級の王者に対する元LFAフェザー級王者といったリーグを超えた代理戦争的な点でも注目が集まった。
1ラウンド、ニューイェンが真ん中に位置しながらプレッシャーをかけると、タンが周囲をサークリングしながら、テコンドーベースのサイドキックやヒット・アンド・アウェイで慎重に当てていく。見応えある攻防についてABEMAのゲスト解説を務めた青木真也も「圧力の強さはニューイェン、試合巧者はタン・リー」と、両者の特徴を捉えてコメントした。
2ラウンドになっても中央でスイッチを繰り返しながら圧をかけ、一発を狙うニューイェン。その周囲を回りながら変則的な動きからカウンターを狙うタンという構図は変わらない。序盤よりも強いミドルや離れ際のフックを当てるタンに対し、優勢に見えつつも決定打を欠くニューイェンは大振りが目立ち始める。この状況について青木が再び「ニューイェンのほうが強いんですけど、試合を上手く運んでいるのはタン・リーです」とコメント。その言葉どおり、ケージを背にし、ニューイェンの強い打撃をかわしながら繰り出すタンの攻撃が目立ちはじめる。
3ラウンドに入っても主導権はニューイェンだが、決定的な場面は訪れない。そこで、前に出たニューイェンが勝負を仕掛ける。近い距離で大きなパンチを振るう“リスクを取った”攻撃だ。追うニューイェン、逃げるタンの動きもここまでくると重い。勝負に出た王者の右フックがボディや顔面を捉えはじめ、タンの善戦もここまでか…と思われた矢先、ケージからの離れ際に挑戦者が放った起死回生の右フックが王者の顔面を打ち抜いた。たまらず前のめりになったニューイェンに対して、一気に息を吹き返したタンが、さらに後追いのヒザを入れると完全に攻守が逆転。連打からフルスウィングの右フックを振り抜き、ニューイェンが後ろによろめく姿を確認したレフェリーが試合を止めた。
よもやの大逆転劇に視聴者は「おおおお」「ええええええ」「まじかぁぁ」と大興奮。さらに「一発で目が覚めた」「一発でひっくり返った」「ナイス逆転」などの声も。
実況の西達彦アナウンサーが「際々(きわきわ)の攻防」と評した紙一重のタイトルマッチ。「なかなか読めない」と解説しながらも、タン・リーの勝利を予言していた青木は「深追いしたところに当たってしまった」と勝敗を分けたポイントについて話すと「オレ格闘技見る目ありますね。冷静に解説してて上手だなと思った(笑)」と自画自賛しつつ、新王者の巧みな試合運びを称賛していた。