厳しい夏を乗り越えて強い姿が戻ってきた。豊島将之竜王(叡王、30)は、他の3人のタイトルホルダーと合わせて、現在の将棋界で「4強」として数えられる存在。一時は10局指して1勝8敗1持将棋という、その実力を知るものからすれば信じられない成績になったが、秋風が吹いたあたりから復調した。天才棋士・藤井聡太二冠(18)にも無敗の6連勝を果たすなど、後輩の大きな壁にもなっている豊島竜王だが「安定感がない」と、少し笑みを浮かべながらさらに高みに視線を送っている。
史上4人目の竜王・名人にもなり、将棋界の序列1位にもなった豊島竜王。しかしタイトル防衛戦では苦戦が続き、棋聖、王位、名人と獲得した順に失っていった。防衛ができていれば、今ごろ8つあるタイトルの半数以上を占めて「豊島時代」を築いていたかもしれないだけに、本人も安定した強さを求めている。
豊島竜王クラスともなれば、どの棋戦でも上位クラスからスタートするため、対戦相手が偏ってくる。タイトルをかけた番勝負でも、異なるタイトルで同じ相手と戦うことも珍しくない。「戦っていると相手の傾向がわかってきますが、それは相手も同じ。お互いがちょっとずつ対策を出しているし、工夫を出していかないと苦しくなります」と、手の内がわかる相手同士、似たような進行でも微妙なアレンジを加えることで、勝機を探り合っている。
将棋ソフトを活用しながら深く研究することでも有名だが、その豊島竜王から見ても「4強」の研究熱心さは驚異だ。「戦型によって、すごく詳しい人がいますし渡辺さん、永瀬さん、藤井さん、そのあたりの方はすごく研究されている」と、渡辺明名人(棋王、王将、36)、藤井二冠、永瀬拓矢王座(28)というタイトルホルダーの名前が口を突いた。
相手の力を認めつつ、その中での競り合いに勝たねばならない。「(4人の中で)自分が一番安定感がないし、ちょっとヤバいなあと思っているところはあるんです。藤井さんが圧倒的に若くて将来性がある。難しですけど、なんとか戦えるようにしたいなと思います」。直接対決で6戦全勝している後輩棋士に対しても、全くおごることなく低い姿勢で精進する。口調はいつも静かだが、時折盤上で見せる力強い手さばきは、内なる闘志が溢れたものでもあるだろう。
夏場の不振で教訓になったのは「いい時と悪い時の差が大きいので、悪い時に悪いなりになんとかすること」だという。不調を自覚した時期でも、なんとか星を拾うことができれば、好調時には一気にタイトルまで駆け上がれる。そこが次の目標だ。序盤、中盤、終盤。いつでも強いと言われた豊島竜王だが、「不調時でも強い」が加わった時、本格的な豊島時代が訪れる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)






