10月30日にシンガポールで開催された「ONE: INSIDE THE MATRIX」。そのメインイベントにおいて、ONEミドル級とライトヘビー級2つのタイトルを保持し、ミャンマーの国民的英雄でもあるアウンラ・ンサン(ミャンマー)が伏兵のライニアー・デ・リダー(オランダ)に不覚。1ラウンド、リアネイキッドチョークで絞め落とされ、完敗する大波乱が起こった。コロナ渦において本拠地シンガポールでONEが満を持して用意したメガイベントにおける“大本命”の衝撃敗戦に一時、ネットが騒然。この驚きを青木真也は「悪夢」と表現した。
ンサンはミャンマーが生んだ格闘技の世界王者にして国民的ヒーロー。本国では銅像が建てられ全国民が試合に注目する存在だ。ONEでは25勝し23勝が1本勝ちもしくはKOと高いフェニッシュ率で、ミドル級とライトヘビー級2つのタイトルを保持するONEの顔といえる。一方のデ・リダーも総合12連中、ONEでも3連勝中。190センチを超える長身で柔術黒帯、絞め技でのフィニッシュ率が高い。
試合前の下馬評では、7連勝中の“ンサン優勢”の声が多かった。ABEMAで解説を務めた青木は試合前「デ・リダーは未知の部分も多い。何があるかわからない」と慎重に言葉を選んだが、その予言が現実のものとなった。
1ラウンド開始早々、組み付きを狙うデ・リダーに対して、ンサンが右のアッパーで牽制。さらに右の強いローにデ・リダーがよろめく場面も。デ・リダーは低く速いタックルで応戦するも、ンサンがこれを切る。しかし、デ・リダーに右ワキを差されテイクダウンを許したンサンは続けざまにバックポジションを取られてしまう。
ケージを背にしたデ・リダーが長い足でまとわりつくように両足でフック。ンサンは相手の両手を掴みチョークやパウンドの封じ込めにかかるが、デ・リダーは冷静にゆっくりと腕をほどき、チョークを探りつつ左右のパンチで削っていく。
その後、膠着状態を嫌ったデ・リダーが自らフックを解いて流れを変える。立ち上がったンサンだが、デ・リダーは背後を取ったままだ。デ・リダーが乗りかかりながらチョークに移行すると、再びグラウンドの攻防へ。ジリジリとデ・リダーの腕がンサンの喉に巻き付くと、ンサンは力なく左手でタップし、勝負が決した。
国民的英雄の首にチョークが滑り込むと、視聴者からは「これは入るな」「決まってしまった…」「どうしちゃった」など、絶対王者の完敗を信じられないといった様子のコメントが殺到。青木も開口一番「これは悪夢だ…」と声を発すると「大将、勝ってくれるよね。という意味で組んだと思うんですよ。ここで負けて欲しくなかったと思うんですよね、団体の意向としては…」と話し、この敗戦の衝撃の大きさを代弁した。
この日はンサンに加え、もうひとりのONE絶対王者であるマーティー・ニューイェンも王座を陥落。波乱続きの結末が続いたことを受け、ネットからは「これが格闘技の醍醐味」「これがMMA」などの声が寄せられている。