“対面はオンラインに勝る”というメッセージになってしまう懸念も 文科省「対面授業が5割未満なら大学名公表」の方針が波紋
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 新型コロナウイルスの影響でオンライン授業を取り入れようと試行錯誤を続ける教育現場。

 文科省の調査によれば、後期の授業形態を「ほとんど遠隔」「遠隔を7割」にする方針の大学は43.6%で、政府としてもその後押しをする構えを見せているが、先月中旬、文科省が示した“対面授業の割合が半数未満の大学を調査、大学名も含め公表する”との方針が波紋を広げている。

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 この問題について、慶應義塾大学の中室牧子教授(教育経済学)は「私は政府の教育再生実行会議のメンバーでもあるが、その会議の席で有識者の一人が“文科省の意図はどういうものか。オンライン授業をしっかりやっている大学を称賛したかったのか”と冗談をおっしゃり、暗に文科省に対して疑問を投げかけられた。私の知る限り、“対面が5割未満”ということについての確たる科学的な根拠があるとは思えない。多くの大学関係者が、文科省が対面の授業がオンラインの授業に勝ると考えているのではないかと受け取ったと思うし、大学名の公表は対面授業を実施しないことに対するペナルティだと捉えてしまったのではないかと、とても心配している」と話す。

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 萩生田文科大臣は、「キャンパスに行ったことがない、利用料を払っても図書館が使えない、入学したのに学校に行けず友人がいない、という学生が退学も考えているという危機的な状況。大学は学生の声を聞いて寄り添うことが大事。機械的に対面を増やせということではない」とも話している。

 中室氏は「オンライン授業はコロナ禍で急に始まったという面もあるので、もちろん行き届かないところもたくさんあったのだろうと思う。ただ、オンライン授業に対する批判の多くが、“普通の学生生活を送れない”という不満に起因しているという点については、慎重に見なければならない。これはオンライン授業の質や教育効果の問題とは別の話だ。逆に言えば、普通にキャンパスが使えて、サークル活動ができて、みんなと飲み会に行けて、授業だけがオンラインだったとすれば、ここまで不満が大きくなっただろうか」と指摘する。

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 「私自身は、オンライン授業のポテンシャルは想像していた以上に大きいと感じている。例えば私の授業では、海外の国際機関に勤めている方にゲストで出ていただくということをしているし、これまでは教室のキャパの関係で履修選抜をして50人に制限していたところが、100人、200人と受け入れられるようになった。こういう、時間と空間の制約を超えられるオンライン授業のいいところは活かしていかないといけない。同時に、実験や実習、少人数指導のゼミはオンラインには限界があると思っていて、これはできればリアルでやりたい。そのためにも、感染対策をしながらキャンパスを少しずつオープンにしていく努力もしなければならない。だからこれからはオンラインと対面を対立させるのではなく、うまく組み合わせて学生の満足度を高めていくべきだ。そして、その中で理系の学生や学習意欲の低い学生など不利になる人がいないよう、ちゃんと見てあげることが大切だ」。

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 東京工業大学で非常勤講師を務めるパックンは「今朝もオンラインで授業をしてきたが、学生にしっかり伝わっているかどうかを確認するのも教員の仕事。やっぱり学生に会いたい。同じ空気を吸いながら顔を見て、お笑いライブのように笑いを取りたい(笑)。世の中ではGo To キャンペーンもやっているし、スポーツイベントも開催している。キャンパスライフも大学が売っている商品の一つだと思えば、お金を払っているのにそれが提供されないのは不公平だ、という学生の気持ちも正当なものだと思う」とコメント。

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 ジャーナリストの堀潤氏は「国立大学の理系学部の新1年生に聞いたところ、昼ごはんは学食に食べに行き、残りはオンライン授業を家で受けていると。しかも学生は顔を出してはならない決まりなので、仲間が一体誰なのか、先生が自分のことを見てくれているのかとか、それが分からない中での授業はしんどいと行っていた。また、大学側に相談をしてもなしのつぶてだという学生もいた。オンライン授業の完成度を高める話とは別に、学生たちの暮らしをどう支えるか、という話もしていくべきだと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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