11月1日に開催されたRISE大阪大会における最大の驚きは、志朗の成長だった。もちろん以前から強かったのだが、RISEルールにおける強さを見事に身に付けていた。
志朗が出場したのは-55kgトーナメント。優勝者には那須川天心との対戦権が与えられる。志朗は昨年の世界トーナメント決勝で那須川に敗れ、そこからRISEを主戦場にしてきた。頭にあるのは那須川へのリベンジだけだったという。
1回戦、シュートボクシング王者の植山征紀に判定勝ち。前半は植山の手数が目立ったが、技の的確性では志朗が上回った。しっかり“効かせる”攻撃だったのだ。
ムエタイをベースとする志朗だが、本人も言うようにパンチのスキルが大幅に向上していた。決勝戦では、那須川に敗れて以来、ここまで20連勝を重ねてきた鈴木真彦と対戦。1ラウンドにカウンターの右ストレートでダウンを奪い、鈴木の反撃はジャブでコントロール。強さを見せつけるような優勝劇で那須川とのリマッチを決めた。
「那須川天心くんに負けてから、自分の時間は止まったままです。このメンバーで優勝したので、僕が天心くんと闘うのは文句ないと思います。天心くんがボクシングに行く前に敗北の味を教えます」
手応えのある優勝だったのだろう、試合後の志朗のマイクは力強かった。とはいえ、目標はあくまで那須川に勝つことだ。まだ道半ばだから「喜ぶのを忘れてました」と言う。
「喜ぶというより、那須川天心と闘う数少ないチャンスを引き寄せたなと」
この1年あまり、常に那須川天心のことを考えてきた。そのために自分の動きに修正を加えてきた。
「彼が自分より上なのを認めて、強くならなきゃ勝てない」
その結果、トーナメントで闘った相手の動きはすべて「想定内」だったという。那須川とはフィジカルトレーナーが同じ。練習場所で「シャドー(ボクシング)とか盗み見してます。練習を直に見るチャンスがあるのは大きい」。
打倒・天心への糸口は見えた。2月末に予定されている再戦まで、志朗はさらにレベルアップしているはずだ。このトーナメントには、ヒジありルールのトップファイターである江幡塁も出場し、1回戦で鈴木に敗れた。志朗は文句なし、最強のチャレンジャーと言っていいし、その背後にはトーナメントで涙を呑んだ3人の想いもある。
那須川は志朗の優勝を予想していたそうだ。「かけているものが違う」と那須川。さらに「絶対に油断はできない」とも語った。
「油断したら負ける」
そこまで志朗を認めた上で、しかし「絶対にリベンジはさせない」と言う那須川に対し、志朗は「満足するのはリベンジしてから」。あと約4ヶ月。RISE史上最大のリマッチが待っている。
文/橋本宗洋
写真/RISE