特別養子縁組の親子が迫られる「真実告知」の選択 血のつながりのない家族はいかに心を繋げていくのか
番組をみる »

 「子どもの権利」条約で明記されている、「自分の出自を知る権利」。条約を批准した日本でも、特別養子縁組した子どもに対し、できる限り早期に出自を明かす「真実告知」をすることが推奨されている。ただ、その時期や方法、そしてそもそも「真実告知」をするかどうかは親に委ねられている。

・【映像】17歳で「真実告知」を受けた当事者に聞く養子縁組

 海岸で幸せなひとときを過ごす池田紀行さん(47)・麻里奈さん(45)夫妻と息子・蓮くん(1)の家族。実は蓮くんは、夫妻が民間のあっせん団体に登録、研修を受けた後に紹介され、特別養子縁組で迎え入れた息子だ。

 夫妻が結婚したのは、紀行さんが30歳、麻里奈さんが28歳の時のこと。なかなか子どもに恵まれず、不妊治療も行った。しかし二度の流産、さらには死産を経験、無理がたたったのか、麻里奈さんは子宮の全摘出手術を受けることになり、子どもが産めない体になってしまった。

 手術後、紀行さんに宛て「産めなくても、育てることはあきらめたくない」と手紙で伝えたという麻里奈さん。そして昨年1月、生後5日の蓮くんが家族になった。「ずっと思い描いていたので、信じられないというか、フワフワした気持ちだった。命を渡されたという責任感も感じた」(麻里奈さん)。

特別養子縁組の親子が迫られる「真実告知」の選択 血のつながりのない家族はいかに心を繋げていくのか

 それから1年9カ月、精一杯の愛情を注ぐとともに、血のつながりのない子どもといかに心を繋げていくのか、同じ経験をしている人たちとも交流を持ち、考えて続けてきた。

 そして夫妻が決断したのが、生みの親が他にいるということを子どもに伝える“真実告知”だった。「産んでくれたお父さん、お母さんがいるんだよってこと、こういうふうにしてうちに来てくれたんだよ、という話を常日頃からするようにしている」(紀行さん)。

特別養子縁組の親子が迫られる「真実告知」の選択 血のつながりのない家族はいかに心を繋げていくのか

 一方で、血のつながりが無いことをわざわざ伝える必要あるのかという意見もある。

 周囲と変わらない子ども時代を過ごしてきたという、みそぎさん(24)は、17歳のある日、受験勉強をしていると父親が「この問題が解けないのは自分の子どもじゃないからだ」と言い放ったのだという。実はみそぎさんは2歳の時に特別養子縁組で両親のもとにやってきたのだった。

 「父は“はあ、言っちまったな”っていうリアクションをしていた。母は横でずっと泣いてるだけだった」。

 突然知らされた真実だったが、みそぎさんは「“嘘だと思わなかったの?”とよく言われるし、言われなければ気づかなかったかもしれない。ただ、スッと受け入れることができたというか、むしろ納得できたという感覚があった。というのも、父親はもともと感情的になる場面が多く、なんでこんなにイライラしているんだろうという違和感を覚えることが多かった。だから初めて“父にもいろんな葛藤があってイライラしていたんだな”という形で受け止められた」と振り返る。

 「受験勉強の最中で忙しかったということもあるが、関係もそれまでとあまり変わらなかった。“特別養子縁組”と聞いても、映画や小説の中の出来事のようにしか捉えられなくて、なかなか自分ごととは捉えられなかった」。

特別養子縁組の親子が迫られる「真実告知」の選択 血のつながりのない家族はいかに心を繋げていくのか

 それでも、なぜ自らが養子になったのか、その経緯について想像をめぐらせ、不安な気持ちに襲われたという。

 「母が横で号泣しているのも見たので、“この話題は禁句なんだな”と感じて、以降“特別養子縁組”というワードを僕から出すことはしなかったし、親から何か言われたということもなかった。だから若年での妊娠だったり、父親が逃げたりしたからじゃないかとか、不倫や性犯罪の結果できた子どもかもしれないとか、誕生した瞬間の自分に味方はいたんだろうかとか、むしろ恨まれてたり憎まれてたりしたんじゃないとか…。非常につらいものだった」。

 現在は特別養子縁組家庭支援団体「Origin」の代表としても活動しているみそぎさん。今回、番組に出演することを決めた理由について「私が話せるのは、あくまでも自分が経験した体験談のみ。それでも1年ほど前から情報発信をする中で、色んな方から“子どもとの関係性を振り返った”といった反応があった。自分が発信することが、これから縁組をすることになる子どもたちのためになるのではないかと感じたので、出演させていただいた」と説明。

特別養子縁組の親子が迫られる「真実告知」の選択 血のつながりのない家族はいかに心を繋げていくのか

 「真実告知されたことが結果として良かったかどうかはライフステージや人によって変わってくる。また、真実告知をするなら、やはり小さいうちに、しかも人生を一緒に乗り越えて、意見を通わせて関係性を築いてきた人からがベストかと思う。僕の両親の場合、“言わない”と決めていたのに、父が口を滑らせてくれたことで知ることができた。結果的には知れてよかったと思っているし、ある意味では感謝もしている。一方で、17歳で真実告知を受けたので、実は“養親と養子”としての関係はまだ8年しか経っていない。今は養親とはある程度の距離を置いているが、産みの親に対しては、産んでくれたことへの感謝がないわけではない。そして、会いたいわけではないが、自分のせいで不幸になっていないかは確認したいので、遠巻きにでも眺めて、“いい家庭を築いているのかな”ということを知りたい」とも話していた。

特別養子縁組の親子が迫られる「真実告知」の選択 血のつながりのない家族はいかに心を繋げていくのか

 オンラインサロン『田端大学』を主宰する田端信太郎氏は、前出の池田紀行さんとは友人だといい、「同じくらいの歳だし、おしゃれな家やキャンピングカーの写真をインスタで見て、“いいなあ”と思っていた。特別養子縁組をしたということも聞いていたが、実はこんなに苦労をしたり、子どもにカミングアウトしたりしていたことは知らなかった。友人として応援したいなと思った。3人の子どもを育てている立場で言えば、その子にとって何が本当にベストなのかというのは、自分の子であっても分からない。親自身もサンプル数は1、自分の人生だけだからだ。全員が真実告知をすべきだということでもないし、最終的にはそれぞれが決めること。こうしてメディアに出て、こういう選択肢があり得るのだということを示してくれること自体に価値があると思った」とコメント。

 EXITの兼近大樹は「確かに血のつながりがあったとしても望まれて生まれてきたわけではないという人もいる。でも養子になる人は、確実に望まれて養子になると思う。そうだとしたら絶対に味方はいるということだし、血のつながりよりも、心のつながりの方が深くなったり、より大切に思えってもらえるということがあると思う。そういうことを考えさせられた」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

17歳で「真実告知」を受けた当事者に聞く養子縁組
17歳で「真実告知」を受けた当事者に聞く養子縁組