カウンターを狙いすまし、右のショートストレートを一閃。総合格闘技の試合で飛び出したアゴを打ち抜く鮮やかな一撃KOに、実況が思わず「突然、終わった!」と声を上げると「スゴイの入った」などネットも一時騒然となった。
11月6日に配信されたONE Championship「INSIDE THE MATRIX II」で、若松佑弥がキム・キュサン(韓国)を相手に1ラウンド1分46秒、右ストレートで鮮やかなKO勝利を収めた。約1年ぶりの試合での快勝に、タイトル挑戦に向けて次期対戦者を自ら指名し「勝ったらタイトル戦を」と猛アピールだ。
現在、ONEのフライ級ランキング4位に位置する若松は、元UFC王者であるデメトリアス・ジョンソンなど強豪選手との対戦で連敗を喫したものの、その後は元ONEフライ級王者であるジェヘ・ユスターキオ(フィリピン)にKO勝利。トップ戦線での生き残りをかけた重要な対戦が続く若松にあって、ランク外のキムには絶対に負けられない状況だ。
しかし、180センチ近い長身のキム。対峙すると若松とのリーチ差は大きい。若松は距離を取りながら左右にサークリングし、慎重に近づきながらワンツー、キムも合わせて腕を振るう。
若松が先手を仕掛けると次はキムのターン。じわりとプレッシャーをかけつつ、出会い頭に左ストレートを当てる。一度冷静に後退した若松は、一転して急速に距離を縮め再びワンツー。緊迫した主導権争いが続くなか、今度はキムの踏み込みに合わせ下がりながら若松が左フック。巧みに足を使いながら、一発一発、若松が着実に当てるシーンが続く。セコンドにつく若松陣営から飛ぶ指示「ローのあとの(キムの)パンチに気をつけろ」も的確だ。
若松がワンツー、左のフックなどでギアを上げると、反撃に出たキムの右に合わせた若松の右のショートストレートが、絶妙なタイミングでキムのアゴを打ち抜いた。キムは崩れ落ち、大の字にダウン。若松が追い打ちのパウンドに入ると、レフェリーがすかさず割って入り試合を止めた。
いきなり訪れたKOシーンにABEMAで実況を務めた西達彦アナウンサーも「突然、終わりました!」と絶叫。鮮やかな一撃KOに視聴者からも「スゴイの入った」「アゴをカウンターで撃ち抜いた」「日本人でワンパンKOは凄い」と興奮気味の反応が。なかには「まるで井上尚弥やん」といった声までも聞かれた。
対戦相手のキムもボクシング経験者ではあったが、この日の試合でゲスト解説を務めた元UFCファイターの岡見勇信は「若松選手にパンチの打ち合いを挑むのは厳しいですね」と打撃戦での若松の強さを改めて実感したように振り返った。
2分かからずに相手を倒し、圧倒的な強さを見せた若松はマイクを取ると「1年間試合できなくて。自分が強くなったのか自問自答していた…」とコロナ渦で試合がなかった苦悩を明かすと「(次は)リース・マクラーレンとやってKOして、その後タイトルマッチに挑みたい」と、同階級の強豪マクラーレンを対戦相手に指名し、タイトル挑戦に意欲を示した。
試合後、若松は「勝つことができて嬉しいと言うよりも"生き残った”とホッとしています」と改めて勝利後の率直な心境を吐露した。
(C)ONE Championship