試合終了の寸前、表示タイムが残り0.00秒に変わった瞬間に生まれた“奇跡のゴール”に、会場のファンは思わず歓声をあげ、解説は「いやーー!」と絶叫。「0秒!」「お見事!」などとネットも騒然となった。
バスケットボールなどで目にするブザービーター。試合終了直前に放たれたシュートであれば得点が認められるというルールで、ゴールによってブザーが鳴るように感じることから、そう呼ばれている。
スポーツのドラマ性を象徴するブザービーターによって、数々の名シーンが生まれてきた。だが、これまでビザービートを採用していたフットサルでは、今シーズンからそのルールが廃止となった。ブザーが鳴った瞬間で試合が終了するため、その前に放たれたシュートであっても得点が認められない。だが、奇跡は起きた。
フットサルの試合で、表示タイムが残り0.00秒となった瞬間にゴールが生まれたのだ。
■1秒で1点が入るフットサルだから生まれたゴール
試合は、今シーズンから昇格してきたボルクバレット北九州とバサジィ大分による、Fリーグ史上初めての九州ダービー。2007年のリーグ開幕から参加しているオリジナル8の“先輩”の大分が効率よく得点を重ねて、一時3-0と有利にスコアメイクする展開となった。
しかし、北九州は、コロナ禍のなかで初めて迎えたホームでの有観客試合。負けることはできない。試合終盤にはゴレイロ(GK)をフィールドプレーヤーと交代して5人全員で攻めるパワープレー戦術を仕掛け、残り1分49秒で1点を返すことに成功。さらなる追加点を求めて、そのままパワープレーを継続した。
しかし、なかなか次のゴールを奪えないまま、刻一刻と終了時間が近づいていく。
残り4秒、自陣からロングボールを蹴り込む。
残り3秒、ウーゴ・サンチェスがこのボールを落とし、なおかつ相手の動きをブロック。
残り2秒、このボールにクシヤマ・イザケが反応する。
残り1秒、ボールを左に持ち出して左足でシュートを放つ。
ボールは、相手ゴレイロの股下を抜いてゴールネットを揺らした。時計は、0.00秒を示していた。
フットサルの試合にVARは採用されていないが、審判団が集まり、そのシュートが“ブザー前か後か”を確認し合う。そして「ゴール」が認められたのだ。結果、2-3でホームチームが敗れることになったものの、このあまりにもドラマティックなゴールに、会場に訪れたファンも思わず歓声を漏らした。
試合を生中継したABEMAの解説・稲葉洸太郎氏も「いやーーー!!!」と思わず絶叫。「今の0(秒ちょうど)なのでゴールですね!ギリギリ(ブザーが)鳴ってなかったですね」と“ほぼ”ブザービーターに大興奮。視聴者も、「ナイスー!!」「0秒!」「北九州お見事!」と、劇的なゴールを称えるコメントであふれた。
フットサルにブザービーターがなくなったことで、懐かしむ声も多く聞かれていたが、“ほぼ”とは言え、まさかブザービーターが生まれるなんて。「1秒で1点を奪える競技」と言われるフットサルだからこそ生まれたに違いない。だからフットサルでは、言葉そのままの通り「最後の瞬間まで目が離せない」のだ。
文・川嶋正隆(SAL編集部)
写真/高橋学