ついに決着の時が来る。K-1スーパー・フェザー級タイトルマッチ、武尊vsレオナ・ぺタスが正式に再決定した。K-1王者vs Krush王者のトップ対決は11.3福岡大会で行なわれるはずだったが、武尊のケガで延期に。あらためて決まった舞台は1月24日の国立代々木競技場第一体育館大会。K-1年間最大のビッグマッチ『K'FESTA.4』だ。
これまで同大会はさいたまスーパーアリーナで開催されてきたが、今回は1993年に第一回K-1 GPが行なわれた“発祥の地”に戻ってくることになる。新生K-1が始まったのは代々木第二。運営サイドとしても代々木第一へのステップアップは念願だったという。
「歴史と意味がある会場でレオナ選手と試合ができるのはうれしい」
11月17日の会見で、武尊はそう語った。会見場に登壇すると武尊が握手を求め、それにレオナが応える場面も。
「お待たせしました、という意味です」
そう語った武尊に、レオナは「僕はその気持ちを受けました。格闘技であってケンカではないので」。一度試合が流れたことに対するわだかまりはなく、お互い万全な状態で闘いたいという思いは共通している。レオナは「完全決着で」と言い、武尊も「気持ちよく全力を出し合える。恨みっこなしの殴り合いをやりたい。僕とレオナ選手がやったらKOしかない」と言葉に力を込めた。会見での武尊は、あらためて自身の勝負哲学を語ってもいる。
「格闘技は気持ちの闘い。気持ちで勝ったほうが勝つ。レオナ選手にも他の団体の選手にも階級が違う選手にも気持ちでは負けない」
もちろん、自分の試合を見ることができなかった福岡のファンのことも忘れてはいない。
「K-1をもっと大きくして、また福岡に行きます」
必ずまた福岡で大会をやる。その時は自分が出る。その思いは変わらない。会見後のインタビューでは、欠場期間について語ってくれた。
「現時点での回復は7割くらい。1月24日には確実に間に合うと思ってます。(傷めた)左の拳以外は普通に練習できてますね」
欠場は苦渋の決断だったが、100%ではないにせよ練習できることが「救い」だったと武尊は言う。
「以前、右の拳を骨折して手術した時は体を動かすことができなかったので。練習することが精神安定剤じゃないですけど、気持ちを保つことができましたね。他の部分を強化する期間なんだって気持ちを切り替えました」
起きたことにはすべて意味がある。武尊はそう考えているという。今回のケガも同じだ。逆に言えば、前向きに考えるからこそ意味のあるものにできる。「これで腐って何もしなかったら、本当に意味がないので」。
何をすべきか、どうすればもっと強くなれるのか。欠場期間に細かく見直した。新しくボクシングトレーナーと契約し、マンツーマンでの練習も始めた。
「バンデージの巻き方、パンチの打ち方も一から勉強し直そうと。今までも考えてやってたんですけど、バンデージはこれまでと違う巻き方にしました。パンチも負担にならない打ち方を探ってます。パンチがある(強い)分、これまでケガもあったので」
ケガでの欠場期間を「進化する期間」にしようと頭を使い、工夫を凝らした。根底にあるのは、昔から変わらない思いだ。大阪大会、福岡大会と“武尊のいないK-1”を見て、内容の充実ぶりを喜ぶとともに悔しさも感じたという。
「武尊がいたらもっと盛り上がるんだなっていうのを見せたいですね。“俺がやらなきゃ”っていうより、そうじゃないと嫌だっていう気持ちが強いです。自分が中心でいたいんです。デビュー戦からそうですね。この会場で一番の歓声をもらいたいっていう。それは今も変わらないので」
欠場を発表すると、SNSでさまざまな声が届いた。応援ばかりではなく「酷い言葉、誹謗中傷」もあった。武尊はそのすべてに目を通したそうだ。
「誹謗中傷も含めて僕への期待だと思ってます。僕に期待してなければガッカリもしないですから。届いた声は全部読んで、受け止めました。受け止めた分、しっかり返します。楽しみにしてくれた人たち、応援し続けてくれた人たちに“武尊を待っててよかったな”と思ってもらえる試合をします」
より強く、より万全に。1.24代々木での武尊は、ケガなく11.3福岡を迎えていた場合の武尊よりも間違いなくレベルアップしている。うまくいかないこともあり、だがそれも含めてエネルギーにして魅力が増す。人間としての“色気”につながる。武尊はそういうタイプの選手なのだ。
文/橋本宗洋