「今は伝統と革新を両立できるようにがんばっていきたい」。74年の歴史を持つ社民党を解散し、立憲民主党へ合流するべきなのか。党が出した答えは、“分裂”だった。
・【映像】"ひとり社民党"福島みずほ党首が生出演「みんなのための政治っていうのが響かなかった」
19日の『ABEMA Primeに出演した』党首の福島みずほ参院議員は「去年の12月に立憲民主党の枝野代表から呼びかけがあり、解党・合流することの是非を問うということで、1年近くにわたって議論してきた。社民党は党大会で代議員の3分の2がないと解散できないし、“議員の政党”というよりも、党員が決める“党員の政党”だ。もちろん賛成と反対、両方の意見があったが、中には“せっかく政党要件もあるので、やっぱり社民党でがんばりたい”“社民党を守ってくれ残してくれ”という声も、とても多かった。それで解党・合流の道は選択しない、ということになった」と説明する。
■「みんな”に響く政策と言葉が足りなかった」
前身である日本社会党は1945年に結党。単独で160議席以上を持ち、自民党と並んで日本政治の一大勢力だった時代もある。1989年には当時の土井たか子委員長のもと、都議選、参院選で大勝。自民党を過半数割れに追い込んだこともある。その際の土井委員長の「山が動き始めた」という発言は、つとに有名で、女性議員の躍進は“マドンナ旋風”とも呼ばれた。
さらに1994年には新党さきがけとともに、宿敵だったはずの自民党との連立に合意、当時の村山委員長が総理大臣に就任した。ただ、これを機に“自衛隊は違憲”としてきた方針を大転換したことに反発する議員も現れるなど、党の分裂の兆しも。そんな中の1996年、党名を社会民主党(社民党)に変更、2年後に初当選したのが福島党首だ。2003年に党首に就任すると、2009年の民主党政権では、少子化担当大臣に起用されるなどの活躍も見せたが、党勢の衰微は止められなかった。
そんな経緯もあることから、今回の党大会では照屋寛徳衆院議員が壇上の福島党首に「先輩方が築いた遺産をすべて食い潰したのはあなただ。そういう自覚はないのか」と激しく詰め寄る場面も見られた。
「党大会で出た意見は全て受け止める。ただ、党のことは党首だけの問題でもないし、これからも党の内外で頑張ろう、応援している、という声もたくさんいただいた。伝統と言ってしまうとおかしいかもしれないが、社会党時代からの組合、働く人、非正規雇用の人たちとの連携も大事にしつつ、女性や若者などの市民と繋がるために外に向けて広がっていくところが弱かったのかなと思う。“みんなのための政治”を訴えたが、これが“みんな”になかなか響かなかった。政治とは関係のない人たちに届くような政策と言葉が足りなかったと思う」。
■「女性や若者が主役でがんばれる党に」
それでも国会の議席数で見れば、福島党首を含め参議院2人、衆議院2人の合わせて4人。このうち、吉田幹事長ら3人が年内にも立憲民主党に合流する見通しで、社民党は福島党首ただ1人になってしまう見通しだ。次の参議院選挙の結果次第では、政党としての存続も危うくなる可能性すらある。
「政党としては小さくても動物愛護や自殺対策、LGBT、あるいは非正規雇用の議員連盟などに入っているし、議員立法として成立させるために、与党にも働きかけて一緒に法案を提出することもある。動物愛護改正法案やDV防止法もそうだ。立憲民主党と実は共同会派を組んでいることもあるし、仮に国会議員が1人だとしても、そういう活動は大いにできる。これからも、もっと豊かにガンガンやるぞと思っている。さらに国民民主党、もちろん共産党のことも非常にリスペクトしているし、仲の良い人たちはたくさんいる。野党共闘や選挙協力も大いにやっていきたいし、むしろ社民党があった方が野党共闘はうまくいくと思う。さらに言えば、全国には400~500人くらいの地方議員がいるし、党員もいまのところ1万数千人がいる。特に女性の中には、これからも絶対に社民党で、護憲や脱原発でがんばりたいという人たちもたくさんいる。だから一人ぼっちという感じではないし、国会の中でもあまりさみしいという感じはしない」。
そして福島党首が目指すのが、「女性や若者が主役でがんばれる政党」への作り替えだ。
「今回のことは残念ではあるが、こうなったら女性や若者が主役の政党に作り替えてがんばりたい。1年間の議論の中で、私は“社民党っていい政党だな”と改めて感じた。私や国会議員が中心ではなくて、党員が決めるというところ、また、歴史的にも全国津々浦々で、地を這うような運動を地域で働く人たちと一緒に担っているところ。世界を見れば、新自由主義ではなくて社会民主主義的な政策が注目されている。税金の取り方や使い道、社会保障や雇用の問題、そして格差是正による貧困の根絶というのが非常に重要なテーマになってきている。社会民主主義を掲げる政党は、日本には社民党しかない。だからこそそういう分野での提言はしてきたし、あなたの生活をどうしていくか、というところ力を入れて、わかりやすくやっていきたい」。
■「リベラル政党はTwitterを見過ぎだ」
こうした福島党首の“敗戦の弁”、そして“今後の見通し”に対し、ノンフィクションライターの石戸諭氏は「僕は右派にも保守にも批判的だが、一方でリベラルの側も政治勢力として伸びていないことを自覚すべきだ」と苦言を呈する。
「社会党に関して言えば、かつては自民党と勢力を二分していた。脱原発、護憲、そして今後は女性・若者活躍だというが、本当に困っている人たちに手を差し伸べられなかったところが大きいのではないか。雇用調整助成金など、コロナ禍に対する野党の支援策は確かに良かったと思う。ただ、現実的な次の政権選択として考えると、やはり絶望的な差が出てしまっていると思う」。
福島党首は「ただ、まだ社民党という政党要件の枠がある。昨年の参議院選挙でも応援し、投票してくれた人がいるからこそ、それを維持できている。せっかくのこの枠を自分たちで壊すことはないと思うし、市民のプラットフォームみたいな形で使っていきたい。一つには、“緑の社会民主主義”のような気候変動問題への取り組み、そして、やはり女性だ。国会の中にジェンダー平等のような政党はまだまだ足りない。世界に目を向ければニュージーランドのアーダン政権など、社民党政権が政権となっているところもある」とした。
石戸氏は「これだけは絶対に伝えたいと思っていたことだが、立憲民主党も含め、最近の日本のリベラル政党はTwitterの見過ぎだ。Twitterの外にも、政策を必要としている人たちがいることを忘れてはいけないと思う。そして、そういう人たちが最も大切だと考えているのが、雇用や経済の話だ。それなのに“グリーンが”“女性活躍が”ということばかりが出てくる。もちろん、それらが経済とつながってくることはわかる。しかしそれでは遠いし、もっとストレートに言わなければ届かない。海外の社会民主主義の政党は、もっと現実的な訴えをしているはずだ」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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