安倍晋三前総理の後援会が開いた「桜を見る会」の前夜祭について、東東京地検特捜部が後援会の代表も務める公設第一秘書らに任意で事情聴取していたことが分かった。今回の報道を受け、安倍事務所は「刑事告発されたことを受けて説明を求められたので、捜査に協力し、真摯に対応している」とのコメントを出している。
■「適当にお茶を濁して終わり、という捜査には見えない」
まず、任意での事情聴取、というのは一体どのような意味を持つのだろうか。
元検事の落合洋司弁護士は「事件の捜査というのは手探りで進めていくもの。初めから明確に分かっていれば起訴してしまえばいい。今回も、いきなり身柄を取ってしまうのは無理なので、まずは関係者の人たちに任意で来てもらうということ。中には1回や2回で終わる人もいれば、任意であっても必要があれば何十回と呼ばれる人もいる。例えば広島の選挙違反事件でも、人によっては60回、70回と呼ばれている。素直に喋るか頑張って喋らないかにもよるが、できるだけ任意で調べていくのが捜査の常套だ。安倍前総理についても、あれだけのことを数年間にわたってやっているわけだから、常識的に考えて何も知らないとは言いにくい。やはり“どういうことですか”と聞かれる可能性が高いのではないか」と話す。
「今回は告発が出ているものなので、まずはそこを見ていると思う。既に20人くらいが呼ばれているという一部報道もあるが、それだけの人を呼ぼうとすれば、人も時間もそれなりに必要だ。特捜部はこの問題だけを扱っているわけではないので、やはり“不起訴にするのが見え見え”という状況ではないのだろう、というのが率直な印象だ。適当にお茶を濁して終わり、という捜査には見えない」。
その上で、このタイミングで動きがあった背景について「11月も下旬に入っているので、検察庁、特捜部の中で年末に向けて様々な告発・告訴事件をについて起訴する・しないを決めよう、ある程度の結論を出しておこう、という動きが出やすい時期でもある。あるいは交代したばかりの特捜部長も、前の特捜部長の活躍を見ているので、何かいい事件を手掛けたいと思っているはずだ。そういう中で、本腰入れてみよう、という形になっている可能性は高い。さらに現首相の陣営を捜査対象にする場合、手続き的なものが煩雑になったり、法務省への報告の度合いが強まったりと、捜査が何かとやりにくい。しかし“前首相”になったことでそういう重石が取れた部分もあると思う。刑事事件というのは、それなりに手間暇をかけて丁寧に調べていかざるを得ないし、やっと捜査が追いつきつつあるのかなということだろう。アンケート調査結果でも、国民の半数以上が問題ありという認識を持っているというのは出ていた。そういう点を踏まえて捜査も行われていると見るべきだろう」と推測した。
■読売もNHKも情報を取っていた?
都内ホテルで開かれていた前夜祭では、出席者から1人あたり5000円の会費を徴収。しかし、ホテルに支払われた総額が徴収額を上回っていた可能性が指摘されていた。これが公職選挙法違反と政治資金規正法違反にあたるとして、600人以上の弁護士が「『桜を見る会』を追及する法律家の会」を結成、告発状を提出していた。
「ニューオータニのような高級ホテルで飲み食いするのであれば、どう考えても1万円ぐらいはかかると思うが、この前夜祭は1人5000で済んでいる。私も以前から感じていたのは、その差額部分はどうなっていたのか、ということだ。一つの見方としては、政治資金規正法で禁じられている、政治家から選挙区に対しての寄付、あるいは公職選挙法における買収という捉え方をするのが実態に即した判断ではあると思う。ただ、法的には1円であっても寄付してはいけないことになっているが、1円を寄付しただけで起訴するかといえば、実際にはそうではない。あくまでも社会通念上、“これぐらい寄付すると良くないよね”という金額が出てこないと、なかなか起訴まではいかないだろう。今回も、1人あたり数千円の負担が数百人規模になっていた、ということになってこなければ難しいかもしれない」。
また、ホテル側の責任について落合弁護士は「政治家との繋がりの中で、ホテルもサービスをする。その行為自体が寄付ではないか、買収ではないかというのが特捜部の見立てになっている可能性が高いとして調べていると思う。ただ、山口から出てきた全然知らない人たちから5000円しか取らないというのは、やはり安倍事務所側からなんらかの働きかけがあったのではないか、いわゆる共謀と捉えられるのではないか、ということだと思う。特捜部が調べ始めれば抵抗するのは厳しく、資料提出を拒否すればガサが入ってしまうだけ。知らぬ存ぜぬでは済まない状態になっていると思う」とした。
今回の公設第一秘書らへの事情聴取については、読売新聞が第一報を報じ、続いてNHKが“安倍前総理大臣側が少なくとも800万以上を負担した。そういった証言が出ている”と報じた。「読売は警察取材には強いので、情報を取っていたという見方はできると思う。穿った見方としては、なんらかの意図を持った検察からのリークがあったのではないかということだ。NHKの報道についても、単に後を追っているだけではあれだけのニュースは出せないと思うので、やはり情報を持っていて、いつ出すか、タイミングを見計らっていたのだと思う。ただ、誰に起訴の可能性があるのか、どこまで捜査が進んでいくか、現時点での報道を見る限り断定的なことは言えない」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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