運用の見直しが表明されたGoToキャンペーン。とはいえ、継続か中止かを巡って、Twitterでは「#GoToキャンペーンを中止してください」「#GoTo中止に反対します」という、対照的な2つのハッシュタグを用いて様々な声が上がっている。感染拡大防止と経済社会活動の両立をめぐり、再び激しい論争が起きている。
■中止によって“自粛警察”的な空気も再び?
そもそもGoToキャンペーンをめぐっては、観光・飲食業界ばかりを重視しすぎてはないか、という意見もある。
第一生命経済研究所の首席エコノミストの永濱利廣氏は「確かに様々な業界が厳しい状況にあるが、やはり移動や接触を伴うビジネスが受けたダメージは圧倒的に大きい。そこを救うためにも、ある程度ピンポイントの対策が必要だった。おそらく、GoToによって救われた人は多かったと思う。データを見ていても、GoToを始めてから宿泊・観光関連は業況がかなり上がった。また、接客も含め、こうした業界は女性の働き手も多い。もちろんGoToを止めたからといって、旅行に行ってはいけないというわけではない。しかし“GoTo止まるということは、やはり移動しちゃいけないんだな”と、人々の活動を抑制する“アナウンス効果”がある。GoTo中止によって需要が落ち込めば、経済にもかなりの影響が出ると思う。このままでは年を越せない、もう廃業しちゃおうか、という人たちが多く出てくることも予想される」と話す。
「北半球の国々、寒い地域を中心に、他国でも感染者数が増加している、日本もGoToをやっていなかったとしても感染者数は増えてきていたと思う。そうはいっても、医療崩壊は止めなければならない。GoToを止めるのであれば、業界に補助金を出すとか、そういったところの手当てまでしっかりと考えてほしい。また、女性の雇用環境が厳しいと言ったが、医療現場でも女性看護師の方が非常に厳しい中で風評被害、差別みたいなものに遭っていることが経済の中でも非常に問題になっている。この部分のサポートも必要だ」
東洋経済新報社の山田俊浩・会社四季報センター長は「そもそも補助金的なものはフレキシブルに始めたり止めたりできなければならないものだが、観光業は裾野が広く、全国的な経済効果があるので止めにくく、一旦始めるとなかなかやめられないのが辛いところだ」、ジャーナリストの堀潤氏も「地方を回っていて、今まで誰も来てくれなかったところにようやく人が来始めた、ということを感じていた。僕はGoToはやった方がいいと思っている。ただ、どういう基準で決断するのか、それが時々で異なるので、霞が関の現場も振り回されている」と指摘した。
また、ウツワ代表のハヤカワ五味氏は「GoTo中止のアナウンスによって、それこそ旅行に行ってはいけないという雰囲気が出たり、旅行者が歓迎されなかったり、といったことが起きてしまいそうだ」、カンニング竹山も「ちょっと旅行に行っただけで陰口を叩かれたり、一時期言われていた“自粛警察”的なことがまた起り出すと思う」と懸念を示した。
■GoToとの因果関係は不明も、見過ごせぬ医療提供体制の逼迫
内科医の坂元晴香・東京大学大学院特任研究員は現在の感染状況について、「夏の流行とは異なっている。夏は20、30代の方が多かったが、今回は60、70代まで満遍なく患者数が多い」としつつも、季節やGoToトラベルと感染拡大の因果関係については現時点では「あるともないともいえない」と話す。
「GoToトラベルだけが原因というよりは、会食の場や休憩室など、いわゆる密になる環境で広がっていると思う。メディアの論調も危機を前面に出すような報道になってきているので、これによって“密を避けましょう”という雰囲気が出てくれば、ある程度収束に向かうようにも思う。一方で、人々に我慢、我慢をお願いする“自粛頼み”、“行動変容頼み”、みたいなものも限界に来ていると思う。12月、お正月と、本来であれば楽しい時期。これが我慢のお願いだけでどこまで押さえられるかという心配もある。ここで感染拡大が一度落ち着いたとしても、クリスマス、忘年会、お正月と集団の飲み会が行われれば、再び同じような状況になる可能性はある。まずは専門家会議が提案している、感染リスクの高まる“5つの場面”を避けていくことを優先して行うべきではないか」。
また、心配される医療提供体制に関しては「ベッドが空いていたとしても、診る人がいなければ始まらない。一般的に冬は重症患者が増えやすい時期で、コロナ患者以外に他の疾病の重症者が重なってくれば、特に少ない医療スタッフで回している救急集中治療が厳しくなることが予想される。医療従事者の子どもが保育園に入れさせてもらえないなどの差別、精神的ストレスによるバーンアウトといった問題も現場では出てきている」と指摘。「特に札幌、大阪など、病床占有率が上昇しているところはかなり厳しいのではないか。北海道の場合、札幌だけが注目されているが、それ以外の地域は元々病院や医師の数が少ないため、札幌や旭川などの都市に緊急搬送を行っていた。これから雪が降る時期にクラスターが発生してしまえば、ドクターヘリが飛ばせず、地方の基幹病院がやられてしまうというリスクもある」と警鐘を鳴らした。
その上で、GoToトラベルについては「感染症の観点からだけでいえば、人々が動かない方がいいに決まっている。しかし経済への影響や、それによる自殺者の増加の可能性を考えれば、やはりバランスの問題だ。基本的には、ある程度の感染は許容しつつGoToを進めるということが必要だと思うが、医療体制が逼迫しているのであれば、短期的にでも止めるしかない。ただ、それでも札幌や大阪が落ち着くというわけではないと思うので、大人数での会食は控えるとか、リモートワークにするとか、マスク着用、三密を避けるといったことをいいながら、感染の可能性を潰さないといけない」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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