「正当な理由もなく検体の採取等に関する命令に違反した者は5万円以下の過料に処する、という罰則規定を設けた」。
政府がGoToトラベル、GoToイートの運用を見直す中、除外されるか否かが注目されている東京都で、都議会の最大会派「都民ファーストの会」がPCR検査を拒否した人に対する罰則に絞った独自の条例案を打ち出した。
条例案について記者会見を開いた伊藤悠都議は24日の『ABEMA Prime』に出演、「第3波を起こさせないようにしよう、保健所の仕事が減るようにしようと7月から検討を始めた改正案だ。ひとつひとつ探し出して罰金を取るということが狙いなのではなく、実効性の高い条例を作ることによって保健所が“PCR検査を受けてくださいね”とお願いした時に応じていただけるよう、お手伝いをしたい」と、その狙い説明する。
新型コロナウイルスの感染再拡大に伴い増加する重症患者。東京都では過去最多となる51人の重症患者を抱えており、提案の背景には医療提供体制への強い危機感があるようだ。
「すでに保健所はかなり逼迫してきている。例えば陽性となった方に電話をし、生活指導までされているが、そのやりとりが10回、20回に及ぶこともある。さらに困っているのが、陽性者との接触の可能性のある方が“あの方とは最近お会いしていない”とか、陽性者と一緒に住んでいらっしゃるはずなのに“最近はホテルで生活しているので会っていない”というようなお返事をされ、なかなか濃厚接触者指定ができないことがある。あるいは“コロナはただの風邪だという情報をネットで読んだから検査の必要はない”などとおっしゃる方もいるという。都立病院でも、そのようにして検査を断られたケースが複数件あったと聞いた。個人だけではなく、事業者が従業員に対して“陽性者が出ると事業に影響が出るので、検査はできるだけ受けないようにしてくれ”という指導をしているケースもあると聞いた。東京都福祉保健局に確認をしたところ、接触者リストを提出してくださらなかったり、弁護士を介して調査拒否をされたりした事業者も実際にあったそうだ」。
当初の条例案では、自宅療養者が外出し他人に感染させた場合に罰金を科す案も盛り込まれていた。自民党の川松真一朗都議が「こういう条例を作ると“魔女狩り”になったり、都の人権部が訴えている“コロナ差別をなくしていきましょう”というメッセージにも逆行したりすることになるのではないか」と懸念を示すなど、都民からも不安の声は根強い。
ただ、福岡県議会でも今回の都民ファーストの会の案を踏まえたとされる条例案が検討されるなど、“罰則付き”をめぐる議論は全国に波及する可能性もある。
伊藤都議は「確かにこういう条例が作られることによってギスギスした社会になってしまう可能性はある。だから本当であれば作らずに乗り越えたい。しかし現状ではPCR検査を受けていただくのは、ある意味で“努力義務”でしかないため、保健所としては何度もお願いの電話をかけるしかない。例えば受動喫煙防止条例も今年4月から罰則を付けたところ事業者のみなさんも協力してくださるようになったし、本当に景色が変わった。反動もあるとは思うが、やはりこの危機においては“都民の責務のひとつだ”というメッセージを発することで実効性を高める必要があると思う。また、検査の要請を断ったからといって直ちに罰金が科せられるというわけではなく、保健所として“ここはどうしても検査を受けてもらいたい”というような例において都と相談の上で知事が命令を下し、それでも検査を2日以内に受けなかった場合に罰金を科すことになっている。さらに言えば、自営業者や個人事業主の方は所得が減ることにも繋がるので、その支援も併せて考えることで、検査を受けやすい社会にしなければならない」と訴える。
「正直言って、私の事務所にも様々な方が押しかけて来られたし、ご意見もたくさんいただいた。しかし、これは国家的危機管理だと思うし、本来であれば国でやっていただきたいが、それがなかなか国会の中で議論されない。どうしても“罰則付き”というところが議論になっているが、“罰則付き”をタブーにしてはいけない。医療崩壊が起きれば、事故などで亡くなる方が増える可能性も出てくる。どのような条例を作れば保健所の負担を減らせるのか、医療崩壊を招かずに済むのか、というのは地域に応じて異なっていると思うが、私が聞いている限りにおいては、福岡県でも都民ファーストの会が作った条例案をご覧いただいた上でご議論いただいているというし、全国的な議論を呼び起こしていくという上でも重要だと思う。各会派さんに連日、説明をしているが、中には“論外だ”というご意見もあった。最終的には12月議会の委員会審議で最初の賛否が出る。私たちとしては、五分五分のご議論をいただいていると考えている」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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