決して、偶然などではなかった――。9月に行われた「Krush.117」において、終了間際、見事なバックブローで大逆転劇を演じて話題を呼んだ“残り1秒の男”が、再び劇的なシーンを演じてみせた。今度は、“残り2秒”でのバックブローKOだ。
11月27日に後楽園ホールで開催された「Krush.119」。第5代Krushフェザー級王座決定トーナメント準決勝で、森坂陸が試合終了間際のバックブローで岡嶋形徒から劇的なKO勝利を収めて見せた。前回の試合でも“残り1秒”でのバックブローで薄氷を踏む勝利を掴んだ男が、“残り2秒”で魅せたよもやKOでの再現劇に視聴者も興奮。「バックブローのプロや」「面白すぎる」「偶然じゃなかった!」「また出た!」などの声が相次ぎ、ネットは一時騒然となった。
派手なヘアスタイルと蝶のマスクで入場する奇抜さから「バタフライ」の異名を持つ森坂は、トーナメント1回戦で山浦力也との大接戦に苦しむも、試合時間残り1秒で放った起死回生のバックブローで判定勝ちを収め一躍話題の人に。対する岡嶋は「トーナメントでオレが一番強い」と話すなど強気な言葉を裏付けるようにKHAOSから5戦負けなしと爆進中。予定よりも早く巡ってきたタイトル奪取に鼻息も荒い。
序盤は森坂をパワーで押し切る場面が目立った岡嶋だが、徐々にトリッキーな森坂の動きに飲み込まれていく。特にひらひらと回転する変則的な動きは要警戒だ。
2ラウンド、森坂のトリッキーさが際立つ場面も。とくに急発進して顔面に一発当てた場面では、岡嶋がムキになり追走するシーンも。この様子に森坂は相手のイライラを察して不敵な笑みを浮かべる一幕も。
これが合図だったかのようにラウンド後半になると、森坂は不規則なステップからの前蹴りを皮切りに、ボディ、バックブローと次々とパンチを当てはじめる。岡嶋のパンチをかわすシーンも目立つようになり、試合の主導権は森坂だ。
最終3ラウンドになると、真っ向勝負でパワーに勝る岡嶋がやや有利の展開。しかし、岡嶋の打ち終わりを常に森坂がバックブローで狙っている。残り1分半、追う岡嶋をいなしながら機会を狙っていた森坂が、ついに右ミドルと見せかけてのバックブローを顔面に炸裂させ、最初のダウンを奪う。
これにはABEMAで解説を務めた石川直生も「山浦戦の再現ですね」と前回の試合を思い出した様子。さらに視聴者からも「必殺技きた」「見事!」の声が。
残り1分、両者の強い気持ちが錯綜する。バックブローが1発、2発、3発と回転しながら空を切る森坂に対し、岡嶋も呼応するように高速のバックブローを放つなど、コマのように両選手がクルクル回る様子は、珍しい攻防戦だ。
岡嶋も最後まで力強くパンチを振るいダウンを奪う姿勢を貫いていく。森坂のアゴに右を当てニアダウンに追い込むが、ここは流される。さらに追う岡嶋がコーナーで重い左を当て、右を叩き込んだ次の瞬間、振り返るような挙動から繰り出された森坂のバックブローが岡嶋の顔面を捉えた。
この一撃に思わずヒザをついてしまった岡嶋は非情にも2ダウンを宣告され、KO負けとなった。試合終了まであと2秒、3ラウンド2分58秒の出来事だった。
2戦連続となる森坂の終了間際のバックブロー劇場に視聴者も興奮。「楽しすぎる」「やりやがった」「バックブローのプロや」「ダンシングバタフライ」などと大盛り上がり。さらに前回の試合で偶然か否か意見が割れたバックブロー決着を受けてか「前回、偶然って言ってたやつはどんな気持ち?」などという、ファンの声も聞かれた。
この試合結果を受け岡嶋とジムの同門で先輩にあたるゲスト解説のK-1スーパーライト級王者の山崎秀晃は「形徒の良さが出てなかったかなと。森坂選手はテクニックもすごい、ひらひらと交わすイメージのなかにもパワーもフィジカルもしっかりして来たんだなと。パンチ力もありましたね」と勝者を称えた。
岡嶋との熱戦を制して決勝にコマを進めた森坂だったが、新美貴士に延長判定の末に惜敗。「めちゃくちゃ悔しいです、もうそれだけです。(新美選手の)圧力がスゴかった」などとコメント。新美を称えつつ、悔しさを滲ませた。