11月27日に後楽園ホールで開催された「Krush.119」。加藤虎於奈と松岡力の対戦は、2ラウンド残り20秒、松岡が放った起死回生のヒザが、首相撲からの攻撃を禁止するK−1ルールに触れたため、加藤の反則勝ちという結末に。K-1スーパー・ライト級王者の山崎秀晃であっても「(判断が)難しい」とする流れの中でのアクシデント決着にファンの意見も「完全な反則」「試合の流れでの出来事」など真っ二つに割れ、議論を呼んだ。
本来であれば8月の第7代Krushウェルター級王座決定トーナメントの準決勝で行われるはずだった幻のカードだ。しかし加藤はケガで欠場、一方の松岡も新型コロナウイルス感染拡大防止のための待機期間を設ける規定に該当(本人または同居人が陽性や濃厚接触者などの疑いがある場合など)して欠場となり中止に。今回はともに万全の状態での復帰ということもあり、Krushウェルター級王者である山際和希への次期挑戦者を決める一戦としての意味合いも強い。
加藤は11カ月ぶり、松岡は1年3カ月ぶりのリング。1ラウンドは互いに蹴りで試合勘を探るような静かな幕開け。加藤の不規則な蹴りを紙一重でかわしてきた松岡が、終了間際に豪腕から右のハイを繰り出すなど、2ラウンド目に期待を抱かせる形で終える。
2ラウンド目は静かだった1ラウンドから一転、激しい攻防が展開される。開始10秒、松岡の2発の蹴りに素早く反応した加藤が左フック、右ストレートを立て続けに打ち込んでダウンを奪う。明らかにダメージのある松岡はなんとか打撃戦から逃れようとするが、さらに加藤が追い打ちの右、左フックと連打を畳みかけると、松岡はスタンディング・ダウンを宣告されてしまう。
このラウンド2つのダウンを奪われて絶体絶命の松岡。とどめを刺すべく大きなパンチを振るう加藤に対し、必死のクリンチで凌いでいた松岡だが、離れ際に放った右フックをヒットさせると、ここから逆襲に転じる。息を吹き替えした松岡が、小気味よく左右のコンビネーションからローを当てると、加藤はこれを嫌い強引に掴み合いから、バックハンドブローなどで自分のリズムを取り戻そうと必死だ。
松岡も負けてはいない。強い右、さらに連打を当てると加藤にとどめのヒザを一閃。たまらずに尻もちをつき、加藤が後ろにバタリと倒れると、まさかの逆転劇にABEMAの視聴者からは「まじか」「効いてる!」と驚きの声が。一方、松岡がヒザを繰り出す際、手が加藤の首にかかっていたように見えたこともあり、「掴んだ」「反則?」などという反応も。それもそのはず、K-1では首相撲からの攻撃は禁止されている。
会場はダウンに沸いたが、レフェリーによるカウントは中断。改めてスローでリプレイ映像が流れると松岡が右、左の連打で計4発のパンチを当て、加藤の肩口に手がかかった状態から顔面にヒザを叩き込んだシーンが映し出された。ヒザを貰った加藤が目を泳がせながら崩れ落ちるシーンは衝撃的だった。
このシーンに「完全に反則負けだ」「両手は反則」、「普通にダウンだろ」「片手じゃないか」などとファンの意見は割れたが、解説を務めた石川直生は「完全にロックじゃないけど、添えちゃってるとルール規定に触れちゃうのかな…どうしても流れですけどね」と意見を述べた。またK-1スーパー・ライト級王者の山崎秀晃も「(判断が)難しいですね…」と述べるなど、故意ではなく流れの中でのアクシデントではないかという認識も示された。
ドクターチェックの結果、試合続行は不可能と判断され加藤の反則勝ちという裁定になると、試合後にマイクを取った加藤は、痛みに時折り顔を歪めながら「パンチをもらったのかな? と思って、ヤバいと思ったんですけど、松岡選手強いんで、あのまま続けても倒されてるかもしれなくて、反則勝ちっていう結果になって本当に申し訳ないです」と複雑な心境を明かすと、時折涙ぐみながら、今年4月に闘病の末に亡くなった母、今まで支えてきてくれた父への感謝を述べ、山際に対して1月23日に行われる『Krush.121』でのタイトルマッチを呼び掛けた。これが実現すれば、翌24日には兄のレオナ・ペタスと武尊のK-1スーパー・フェザー級タイトルマッチも予定されており、2日続けて兄弟でタイトルマッチを闘うことになる。