「待機児童ゼロへ」。政府が推進する少子化対策の一つだが、今新たな動きが起こっている。
加藤官房長官は26日、「関係大臣の間で子ども子育て支援の充実とともに、世帯合算の導入や特例給付の見直しについて検討を行うこととされている」と述べた。検討されているのは児童手当の縮小について。所得制限を超える世帯に支給している子ども1人あたり月5000円の特例給付の廃止や、支給の基準を変更することで待機児童対策の財源をねん出しようというのだ。
これに対してインターネット上では「政府の少子化対策の本気度を疑う」「子育て支援の予算を子育て世代から取るんだ」「共働きしているのがバカらしくなる」「2人目を諦めざるを得ません」など、批判的な声があがっている。
少子化対策として児童手当の縮小は有効なのか。そして少子化対策、児童手当本来の在り方とは。自身のYouTubeチャンネルで「児童手当の特例給付の見直しに猛反対してきた。(給付見直しの)対象になるのが100万世帯。100万人以上の子どもたちに対してこの給付が打ち切られるということだ」と反論した自民党の山田太郎参議院議員とともに考える。
■政府の見直し案に山田議員「何の問題も解決しない」
政府の見直し案について山田議員は「元々、特例給付をスタートしたのは2010年から2012年にかけて。リーマンショックや東日本大震災があって、かつては所得制限があったが、たくさん子どもがいる中間層こそかなり苦しいと。所得制限をつけず、しかも一律5000円という割と低い金額であるが、政治の意思として少子化に歯止めをかけるのにたくさん子どもを持ってもらいたい。そのための応援でもあるというメッセージだ。それをこの少子化で、しかもコロナ禍でやめるというのは何を考えているのかと思う」と話す。
児童手当と待機児童の問題を天秤にかけることには、「何の問題も解決しない」とも指摘する。「1万2000人の子どもたちが待機児童の対象になっているが、一方で今回の特例給付の対象は100万世帯、子どもの数でいうと150万人。86万ショック(※2019年の出生数が86万人と初めて90万人を割り込んだ)といって、ものすごい勢いで子どもたちも減っていて、そこは何らかの形で緩和措置も含めて乗り越えていけばいいだろうという話だ。そもそも論からいうと、待機児童と少子化は全然違う話で、少子化の予算が待機児童にいって問題が解決するかというと、何も解決しない。これをはっきり進めるようであれば、自民党も政府も少子化問題には本気ではないということになってしまうと思う」。
そもそも、児童手当の見直しでどれだけの財源が確保できるのか。山田議員は「今回この特別給付金を切ると浮くと言われているのが1000億円弱。そもそも全体の児童手当に使っているのが2兆1000億円で、この5%(1000億円)を切るという話だ。ただ、すごく影響が大きい100万の世帯・150万人の子どもたちを敵に回してやるのか。そういう話だ」と説明した。
待機児童や少子化の問題を巡っては、「これ以上保育園を作る必要があるのか」「高齢者に対してお金をつけ過ぎなのではないか」という議論もあるという。特に後者について山田議員は、「お母さんや子どもたちなどにかけている家庭環境費用が、世界的に見ても日本は少ない。社会保障の付け替えではなく全体の中で考えた時に、高齢者に対してお金をつけ過ぎなのではないかという議論もある。例えば、フランスは少子化を解消したと言われるが、家庭環境費用で考えると(日本と)倍違う。そういう状況を見ると、子どもの部分を子どもで付け替えても何も解決しないと思う」との考えを示す。
さらに、山田議員は「モヤモヤしている話があると思う。なぜこの間、政府が(児童手当を)切ると言い出したのか。これはハッキリさせておいた方がいいと思う」と切り込んだ。「経済団体からの強い要望だ。子ども・子育て拠出金というのを企業が払っていて、給与の0.36%を全て事業者が負担している。トータルで6300億円払っているので経済団体が反対しているが、これがおかしい。世界の常識は、フランスでは(全国)家族手当金庫というが、こうした子育てに関するお金の6割を企業が持つ。そうやってたくさんの将来の労働力だったり、マーケットの消費者を自分たちで育てていこうという発想だ。(児童手当の見直しは)企業の要請が強いというのが背景にあり、成長政策からいうとメチャクチャなメッセージだ」。
■「1人産んだら1000万円支給」ひろゆき氏の提言に山田議員も賛同
子どもを産みたくなる社会とはどのようなものなのか。「1人産んだら1000万円支給」を提言する2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は「子どもを作らない理由に経済的な理由が多い。結婚が30代前半、ある程度余裕ができて子どもを作ろうとするのが30代後半近くなって、高齢出産になりがちで出産率も下がってしまうということがある。とりあえず5年間は働かなくても全然いけるというお金を配っておいて、『それなら子どもを産む方が得だよね』という方向にした方が出産率は上がると思う」との考えを示す。
出産を躊躇する考えについて、クリエーターの陳暁夏代氏は「所得の問題は大きいと思っている。稼げば稼ぐほど税金もかさんで、さらに子どもが生まれると出費もかさむという、人生に起こるバグのようになる。私も出産を控えていて色々調べたが、1000万円かかるとか、2000万円が生涯教育費用にかかるとかホームページにいろいろ書いてあって、それを見るだけでビビッてしまう。出産のその先にかかってくる費用も含めて、共働きじゃないとより良い教育を与えられないにも関わらず、こんなにもかかるんだというところが不安ではある」と述べた。
またお笑い芸人のヒロコヒーは、1000万円の支給でなくとも育児にかかる費用への支援があれば安心につながるとし、「1000万円じゃなくて、環境を整えてしまうという方法はある。育児環境の整備や家事負担の軽減というところを、国や自治体などに負担していただけるとなると、50万円でもいけるかもしれない。経済的な安心につながる」と述べた。
1000万円を支給する案について、山田議員も「びっくりする案ではない。私も委員会で1000万円出すべきだと言った」と賛同。「1000万円がなぜ安いかというと、1人の人が生涯に払う税金は7000万円ぐらいなので、1000万円くらい払ったって国は回収できる。ポンと出して市場を作っていった方がいいという話だ。もう一つ、晩婚化はすごく大きいと言われている。実をいうと、結婚した人の子どもの割合は変わっていなくて、晩婚化で全体として急激に子どもの数が減っているというところがある。僕らの頃は150万とか200万人くらい同級生(出生数)がいたが、本当にこの国から人がいなくなってしまう」と危機感を強めた。
(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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