ネタ選びの基準をオープンにし、問題解決まで見届ける報道を…大手メディアがテンプレ・横並びから脱するには?(2)
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 30日の『ABEMA Prime』では、16日の回に引き続き、「マスコミはなぜ“マスゴミ”と揶揄されるのか」をテーマに、扱われるネタが各社で“横並び”になってしまう現状などについて、番組プロデューサーも交えて自戒の念を込めた議論が交わされた。

・【映像】なぜマスゴミと呼ばれる?番組プロデューサーと議論

ネタ選びの基準をオープンにし、問題解決まで見届ける報道を…大手メディアがテンプレ・横並びから脱するには?(2)
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 MCのカンニング竹山からは「ネットを見ていて、“これってすげーニュースじゃない?”“こんなことがあるんだ”と思うことがあるが、それをテレビでは一切やらないので、どうしてだろうと思う。特に民放の場合、スポンサーの問題など“やれない事情”もあるとは思うが、やっぱり違和感を覚えてしまうし、どれを信じて、どれを見ればいいの?と思ってしまう」と疑問が呈された。

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 これに対し、ジャーナリストの堀潤氏は、NHKアナウンサー時代、担当者によって番組のラインナップが大きく変わっていたことに触れ、「オープン・ジャーナリズムというが、誰が作っているのか、あるいはニュース選択の基準など、“隠されている編集権”を公開してみてもいいと思う」と提案。また、自身が出演するTOKYO MXの『モーニングCROSS』」では、5年前からSNSや掲示板などの状況を解析して得られた、“放送局に都合の悪いデータ”も含む情報をネタ選び活用するようになった」と説明。

 その上で、「やはり速報を打つのは早いけど、それと同じくらいのスピードで忘れるというのが、マスコミに対する不信感につながっていると思う。みんな忘れた頃にもう一度現場に行き、関わっていくことが大事だと思う。それがエンゲージド・ジャーナリズムと言って、問題が解決するところまでコミットしてこそ、という取り組みだ。例えば困っている人を取材して終わりではなく、政治家たちを呼んで議論し、法改正まで見届けたり、人やモノが足りない現場であれば資金が集まって実行されるところまで見届けたり、というものだ」と指摘。

 さらに「僕は災害が発生すると、自分のLINEのIDを公開するようにしている。すると報道してほしい、物資が無くて困っている、といった連絡が来る。そういう時、ABEMA Primeのプロデューサーの郭さんは“うちでもカバーできることがあれば”と連絡をくれる。やはり制作サイドの中には、報じられていない何かを知りたい、伝えたい、という欲求がある。しかし現場の人たちとマスメディアの協業についてはまだまだ過渡期だ。だからインナーサークルで、“これニュースっすよね”とか言いながらやっている。そこは早く変えた方がいい」と訴えた。

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 TOKYO FMで『TOKYO SLOW NEWS』を担当、“スローニュース”という概念を実践している速水健朗氏は「オープンでデータに基づいたみたいなジャーナリズムもいいが、一方で情念を持って被害者を取材して、ようやく後から気付くこともある」と別の角度からコメント。「やはり日本は風化させることが得意だと思う。ここ10年くらいに起きた事件で風化しなかったものとして、リンゼイ・アン・ホーカーさんの事件とルーシー・ブラックマンさんの事件が挙げられるが、2つの事件の共通点は、両親が来日し、“なぜ日本のメディアは報道しないんだ。娘はこういう人間だったんだ”と強く訴えたことで、世間の風潮が変わったこと。特にルーシー・ブラックマンさんの事件については、リチャード・ロイド・パリーという英タイムズ紙の記者が、加害者が在日韓国人だったためにあまり報道されなかったと指摘している。社会の教訓にすべき事件を掘り起こしていくのがジャーナリストの重要な役割だが、それができていなかったという反省は自分にもある」と話した。

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 郭プロデューサーは「そうした努力が足りていなかったと思うし、逆に堀さんのような取り組みがテレビ局にバレてきていて、SNSで動画が上がると、その現場に群がり、結局そこだけが報じられてしまうという現象も起きていて、むしろネットに寄りすぎている部分もある。テレビがネットニュースになっていたのが、ネットニュースを見てテレビが作られるようになってきた結果、自分たちは何を伝えたいんだっけ、という観点がなくなっているとも思う」とコメント。

 また、「ABAME Primeの場合、5年後に見られてもいいというコンテンツもいっぱいあると思うし、YouTubeにアップしておけば、後で多くの人が見てくれる。数字を追おうとすると難しいが、やはり伝えるだけでなく、障害をクリアしたり、課題を解決したりするためにやっているつもり。その意味では議論のための議論になってもいけない。何らかの提言をするということも意識していきたい」とした。

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 これに平石直之アナウンサーは「私は自分たちで映像を撮ってこなければならない時代にキャリアをスタートしているが、防犯カメラやドライブレコーダーも含め、撮られたもの、撮った人を探しにいって、情報を上書きする仕事になりつつある。要するに、最大瞬間風速の数字だけを追わないという点からすると、後から見ても意味のある議論をすれば、生では見てもらえなかったとしても、そこに価値が出てくる可能性もある」と賛同。

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 議論を受け、映画監督・作家の森達也・明治大学特任教授は「もうニュースショーにはパネラーはいらない。スタッフがもっともっと出ていくべきだと思う。そして困っている人をどうすれば救えるか、というところまで考えることができたとすれば、それこそが伝えるだけの単なるメディアから、ジャーナリズムに移行したということだ」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

なぜマスゴミと呼ばれる?番組プロデューサーと議論
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