佐藤健、神木隆之介、吉沢亮ら、そうそうたる人気俳優を輩出してきた芸能事務所・アミューズに気になる存在がまた1人。若手俳優・兵頭功海(22)がアミューズ所属の若手俳優で構成される「チーム・ハンサム!」の新メンバーとして今年加入した。
昨年7月に公開された映画『五億円のじんせい』で俳優デビュー、その後「騎士竜戦隊リュウソウジャー」(テレビ朝日系)のカナロ/リュウソウゴールド役で注目を集め、現在は「片恋グルメ日記」(TOKYO MX)、「社内マリッジハニー」(MBS系)の2本のドラマに出演。今最も勢いのある若手俳優のひとりである兵頭の素顔とは。
野球から映画へ 芸能界入りを後押しした母親の一言
実は兵頭が学生時代に打ち込んでいたのは野球。高校3年まで熱中し、特待生として大学からも声がかかるほどの実力だったという。しかし、怪我をきっかけに不調が続き最後の大会には登板できず。そこで「このまま一生野球するのってどうなんだろう」と立ち止まり、燃え尽きてしまったそうだ。
そんな兵頭に野球に変わる“新しいもの“の道筋を示してくれたのは、母親がふいに言った一言だった。
「ある日お母さんに『あんたテレビ出れば?』と軽く言われたことを僕は本気で間に受けてしまったんです」
思い返してみれば、幼少期から友達のプロフィール帳や卒業アルバムに「テレビに出たい」と書いていた。当時は「プロ野球選手になりたい」という意味だったが、元々人前に出るのは得意なタイプ。友達と遊ぶとき、デートに行くとき、家族で夜を過ごすとき、兵頭のそばには映画があったことも芸能界を目指すきっかけになった。
「映画館に行くということが好きで、誰かとも行っていたし、1人でも行っていました。DVDを借りたり、自分の生活の中で映画というものがすごく身近なものだったんです。映画館は行く前と後で自分がすごく変わる気がして、そういうところが好きです。この映画を見てこのファッションが好きになったとか、この音楽が好きになったとか。大きなことでなくても、その2時間で凄く影響を与えてくれる。小さなことでいいんですけど、僕自身もそういう風に影響を与えられる人になりたいと思いました」
自分の中の映画への興味に気づいた兵頭は、“とりあえず”上京。あては何もなかったというが、人生経験という意味も含めて。「歩いてたらスカウトされるでしょ」という安易な東京のイメージもあったという。
しかし、それで本当にスカウトされるのがすごいところ。185cmのスラリとした長身にこのイケメンフェイス。街で目立たないはずがなく上京当日に声をかけられた。
「田舎者の発想からすると、東京出てきて歩くのは竹下通りとか渋谷じゃないですか(笑)。僕もその例を外れず、竹下通り歩いたら、5、6人かのスカウトマンに声かけてもらったんです。でも、あまりにも声をかけられるので、『なんでそんな知らない人に声かけられるの?』って東京という街が怖くなってしまって。簡単にどこに入るとか決めれないので、名刺を受け取っていったん家に帰って母親に相談しました」
予想外のスカウトラッシュに、兵頭は「誰でもスカウトされるんじゃないか?」と錯覚。そして、さらに欲が湧いた。プロフィールに書かれているような「〇〇オーディショングランプリ」という肩書きを持ってデビューしたいと考え、GYAOとアミューズが共同実施したオーディション『NEW CINEMA PROJECT』を受けたのだ。そしてここでも有言実行。出演者部門でグランプリを受賞し、映画『五億円のじんせい』に出演する権利を獲得。アミューズに所属し、夢だった映画への出演を決めた。
「あいつよりいい芝居をしてやろう」共演俳優たちと切磋琢磨
実際にデビューして気づいたのは、俳優という仕事の地道さ。
「芸能界ってものすごくキラキラしてるような感じがしていたんですけど、意外と地味。一つのシーンを撮るにも何回もお芝居をして、いろんな角度から撮影している。俳優さんはすごく準備をして望んでいるし。でも、そういう職人っぽいところにますます惹かれました。努力なしでは成功できない世界だと気づいて、すごく深い世界だと思いました」
『五億円のじんせい』撮影後に出演した、 ABEMA で放送された番組「恋愛ドラマな恋がしたい2」(以下、「ドラ恋」)で学んだことも多い。「ドラ恋」は若手俳優の男女がキスシーンありの恋愛ドラマの撮影をしながら本当の恋に落ちるかどうかを追った番組で、メンバーたちは男女でペアを組み、毎回ドラマ出演をかけてオーディションに参加。兵頭は第1話で主演を見事勝ち取りキスシーンを披露した。
ドラマ出演中の “芝居をしている姿”と、出演を目指し、恋に揺れ動く “素の姿”が映される「ドラ恋」。ここでの経験で兵頭は度胸がついたという。そして、自分の負けん気の強さにも気づいた。
「当時は全部主演をとりたかった。もちろん今もですけど。自分が落ちた作品を、目の前で他のメンバーがやっているのを見なきゃいけないという悔しさ。勉強として落ちた作品を見ようということはあっても、目の前で撮影している過程を丸一日見るというのは、他の現場では絶対にないですよね。すごくウズウズして、自分自身に苛立ちました。本当に悔しかった」
「ドラ恋」後に出演したテレビ朝日系の特撮ドラマ「騎士竜戦隊リュウソウジャー」でも、多くの同年代の俳優と共演。年齢だけでなくキャリアも近い一ノ瀬颯(23)や綱啓永(21)とは今も連絡を取り合う仲で、お互いの仕事ぶりを意識。
「今の活動を見てると、負けてらんないなっていい刺激になります。お互い探っているような感じも正直あるんです。『あいつよりいい芝居してやろう』というのがお互いあって高めあえる、いい関係です。リュウソウジャーは自分にとっても特別な作品なので、今後もこの関係は続いていくんじゃないかと思います」
「チーム・ハンサム!」としては12月に新アルバムの発売も決定し、歌唱やダンスにも挑戦。俳優以外の仕事にも挑戦することとなった。
「歌うこと自体はすごく好きだったんですけど、ダンスというものはなかなか触れることがなかったので、初めて本格的なダンス、しかもあんなにたくさんの曲で踊るというのは今でも不安です。僕はあそこまで踊れるようになるのか?と未知です(苦笑)」と、慣れないダンスに不安をのぞかせつつも、「お見せする機会があるならば、そのときまでには自分ができる最大限のパフォ―マンスをします」と意気込み。負けず嫌いで努力を厭わない兵頭。「チーム・ハンサム!」も有言実行で、見事なパフォーマンスを見せてくれるだろう。
(2020年12月1日、兵頭は武道館にて行われた『Act Against Anything VOL.1「THE VARIETY 27」』で「チーム・ハンサム!」デビューを果たした)
写真:You Ishii
テキスト:堤茜子