壮絶の一期に尽きた。11.22横浜武道館、中嶋勝彦との死闘からまだ10日もたっていない中で、またしても大激闘だ。
プロレスリング・ノアの12.1後楽園ホール大会。メインイベントでは潮崎豪&谷口周平vs杉浦貴&鈴木秀樹のタッグマッチが行われた。潮崎と杉浦は12月6日の代々木第二体育館大会でGHCヘビー級王座をかけて対戦する。1月のベルト奪取以後、すべてのタイトルマッチでインパクトを残してきた王者・潮崎にとって、杉浦戦は2020年最大最後の関門だ。
11月27日、つくば大会での前哨戦は杉浦がフロントネックロックで潮崎に直接勝利。巻き返したい潮崎に対し、杉浦は鈴木とともに徹底した右腕攻めを敢行した。チョップ、ラリアットという2大武器を繰り出す右腕は潮崎の生命線。だからこそ対戦相手は誰もが狙ってくる。長い間、潮崎は右腕にテーピング施して試合に臨んでいる。
その右腕を“ビル・ロビンソン最後の愛弟子”鈴木とGHCヘビー・ジュニア全タイトルを獲得した唯一のレスラーである杉浦が集中攻撃。ダメージは想像を絶するものだったはずだ。
ただ、潮崎のタフさ、チャンピオンとしての意地も想像を超えていた。杉浦のエルボーに対抗してチョップを打ち込み、前回の対戦で敗れたフロントネックロックは強引に持ち上げてゴーフラッシャーで叩きつける。そしてリミットブレイク、ラリアットと得意技でたたみかけ、逆襲の3カウントを奪ってみせた。
今年、ノアは旗揚げ20周年。杉浦もデビュー20周年となる。タイトルマッチ本番に向け、潮崎は言った。
「杉浦貴! お前の20周年をすべて受け止めて、最後に立っているのは俺だ」
2009年、潮崎がGHCヘビー級初戴冠の時代にベルトを奪っていったのが杉浦だった。場所は日本武道館、日付は奇しくも12月6日。今回の代々木大会と同じだ。「運命を感じるよ」と潮崎。この杉浦戦を乗り越えた時に「I am NOAH」の決め台詞が本物になると感じているという。
あらゆる相手に攻め込まれ続けた右腕は、おそらく限界寸前。それでも、腕の状態を聞かれると潮崎はこう答えた。
「絶好調ですよ」
なぜならGHCヘビー級チャンピオンだからだ。
「どれだけ追い込まれても、最後に立っているのはチャンピオンの俺」
あくまで絶好調。あとは12月6日、最高の相手と最高の闘いをするだけだ。
文/橋本宗洋
写真/プロレスリング・ノア